表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イーグル・アイ  作者: 香田 拓人
2/13

元締め

  俺は、朝11頃目覚めた。

 仕事を終え、帰宅したのは3時を過ぎていただろう。

ベットを抜け出し、寝室のカーテンを開けた。陽の光がまぶしい。リビングを通って、玄関のドアに差し込まれて居る朝刊を取り、リビングのテーブルの上にに無造作に放り投げた。


 俺の住処は、2LDKの何の変哲も無い二階建てのアパートで、1階と二階に4戸ずつ有り、俺の部屋は正面に向かって、2階右端だ。


 冷蔵庫から、アイスコーヒーのボトルを取り出し、ボトルに直接口を付け、流し込んだ。ソファーに座り、朝刊を手に取り、ページを捲ると数時間前の「狙撃」の事件が報じられている。

 紙面には「龍頭幹部、射殺される」の文字が躍っていて、警察では対立する組織の犯行と見て捜査をしているらしい。しかし対立する組織をいくら調べても、めぼしい証拠など上がるはずは無かった。組織のどこをどう手繰っても、俺の線に繋がる事は無い。


 何ヶ月か前に、全国に中華料理のチェーン店を持つ会社社長が射殺される事件が有ったが、未だに犯人を特定する有力な手掛を当局は掴めていない。

 

 きっとそれも俺の様な「プロ」の仕事に違いない、事件は永久に解決される事は無いだろう。もしかしたら仕事をした人間は外国人かも知れず、既に出国している可能性も考えられた。


  俺は朝食とも、昼食ともつかない食事作りに取り掛かった。特に定職を持たないので食事の時間は不規則だ。冷蔵庫を開け、鶏卵とベーコンを取り出してフライパンに火にかけた。その他はトーストと、カップに熱湯と粒状のコーンスープを淹れただけの、簡単な食事だ。若い頃は朝から旺盛な食欲を感じたものだが、36歳となった今の朝食は簡素なものだ。


  早々に平らげると、約束の時間に間に合わせる為に準備を始めた。黒のコットンパンツに、グレーのフリースジャケット、デイパックを肩にかけ、アパートを出た。周囲の住宅地を10分程歩くと、地下鉄の駅に通じる通りに出る。さらに5分程歩くと目的の駅に着いた。駅の周辺にはスーパーや、小さな商店が、駅を囲むように立ち並んでる。

 

 俺は、乗車した駅から「5つ目」の駅で地下鉄を降りた。「N市」の中心に近い駅だ。

駅裏の立ち並ぶビルの一つに入ると、エレベーターで3階に上がった。

「須田貿易商」の看板を掲げる店のドアを開けると、奥のデスクで新聞を読んで居た、店主の須田が、顔を向けた、頭に白いものが目立つ初老の男だ。

 店内には、西洋アンティークの磁器や、中国の物と思われる青磁がショーケースの中に陳列されている。

 店主は、顎で奥の部屋に行くように促した。

 奥の部屋には、テーブルを挟んで、応接セットが置かれていて差し向かいに、2人は座った。

 須田から、無造作に差し出された紙袋を受け取り、その札束の感触を確かめた。


「相変わらづ見事なものだな、おまえには、安心して仕事を任せられるよ」


  須田は表向きは「貿易商」の看板を掲げているが、殺人を請け負う「元締め」で一体、俺の様な男を何人抱えているのか、知れたものでは無い。

 須田は、依頼主から「仕事」を請け負い、雇っている男達に仕事を回す。男達に依頼主の事は告げられず、また興味も持たれ無かった。

 

「また頼むよ」


須田が暗い目で俺を、見据えた。


「女と子供以外なら」


 俺は、冷たく答えた。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ