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戦乙女と魔剣士  作者: ストレルカ
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回想:タルタという男

その男は即座に『巨壁』と呼ばれる地から『這い出てきた』様な壁で村や騎士団などの人々を守って見せた。これは所謂魔法と呼ばれる奇跡に近い事象を起こす力である。

この『魔法』を使うことが出来るのはアースドルド公国の中で『改造』された一部の人間だけである。それを知ることのない村人や騎士達は突如現れた奇跡の壁とそれを創り出した男をただ呆然と見ることしか出来ない。

「あーあー……。こりゃ大分飲み込まれちまってるなぁ……」

男はジルを見て溜息をつく。

そしてジルの方に手を向け、集中した表情を向ける。

「『縛術・精』」

レティシアは『それ』がはっきり見えた。

先程の奇跡を起こした時にもそれは見えた。

絵本の中でしか見たことのなかった、所謂『魔方陣』という代物が男の手から展開されるが見えたのだ。

「ちょっ、とこれは厳しいな……。そこのお嬢さん、その剣借りるぜ」

片手をジルにかざしながらレティシアの持つ剣を男は指している。

「う、うん。分かった!」

レティシアは直感的にジルを助けるには考え、その剣を渡す。

「『レーヴァテインよ。その陽光で暗き者共の心を祓い給え!!』」

器用にレーヴァテインを鞘から抜き放ちジルに向かい一振りする。

不自然な態勢ながらもキレのある太刀筋でジルに向かい男は斬撃を放つ。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

まだ不完全なのかはたまたジルの抵抗か。

その斬撃を『剣の魔物』が避けることはなかった。

しかしその身体が真っ二つになることはない。

「この!!!縛られろ!!!!!!」

男が必死に魔方陣に力を込めていくのがわかる。

同時に、限界が近いことも。

レティシアはなぜかその全てが手に取るように分かっている。

この後どう動けばいいのかも。

「私も……、ジルを……!!」

救いたい!!

そう思った時には力は既に放たれていた。

放たれた力は限界を向かえつつあった男の魔方陣へと吸い込まれていく。

「……!!そうか、お嬢さんが火焔の……!!」

そこまでは聞こえた。聞こえたのだが。

「あ……」

次の瞬間、レティシアの意識は力尽きたかのように落ちていった。




次にレティシアが目を覚ました時、『剣の魔物』はジルへと戻っていた。

それを心底喜んだと同時に、悲しいことが聞こえた。

『あの少年は置いていくべきだ』

『あの化物は何をしでかすかわからない』

『あいつは人間じゃない。一緒に連れて行くことは出来ない』

『いっそここで殺してしまおう』

全てが不快だった。

ジルを帝都へと連れて行こうという意見を出した人間は一人としていなかった。

ジルは起きない。

いや、目を覚ましている。

目は開いている。

それでも身体が動かない。

声が出せない。

レティシアはそのまま大人達により連れて行かれてしまう。

ジルのいる方とは逆方向、帝都へと。

その力は国が欲している力だと。

「レティシアよ。先程の我らを助けてくださった男、タルタが言っておったぞ」

村長がレティシアに向かい言う。

「ジルの記憶は、アースドルド公国によってこの村は壊滅させられ、魔剣を使ったジルが奪還するも忌み嫌われた魔剣を持ったジルはここにおいていかれたことになるそうだ。現在本人の目は開いているが、彼には他の光景が見えている。とのことだ」

「そ、っか……。じゃあ村の人達のあの声も聞こえなかったんだね」

レティシアは少しそれを聞いて安心した。

なんにせよいつかこの出来事は話すことになるだろうが、それまでは夢でもいいだろうと。

「ごめんね、ジル……。必ず貴方を守れるようになってまた戻ってくるから。それまではどこでもいい、生きていて」

帝都行きの馬車に乗り、道中レティシアはジルのことを常に考え、そして帝都でもジルのために鍛錬を積み、そうして、ついにジルの居場所を突き止めたのである。





「ここまでが、多分ジルの知らない出来事かな」

「あとはまあその夢とやらを見た挙句、シュラに拾われ今に至る、と」

聞いた話を頭の中でまとめ、ジルは溜息をつく。

まさか一度はエペタムに支配されているとは思わなかった。

いや、支配されたとしてもまさか村人、レティシアまでもを殺そうとしていたなどとは毛頭も思っていなかった。少々ショックである。

「まあ、今は大丈夫みたいだしよかった」

「今じゃこの剣には助けられっぱなしさ……」

エペタムのおかげで最初はその伝説を知る人間全員に嫌われ迫害された。

良い思い出を探すほうが難しいが、ジルにとっては『修羅場』を共に切り抜けてきた相棒である。

「結局ジルの方が強くなっちゃってたから、ちょっとショックだけどね……」

「ははは、レティシアは俺が守ってやるさ」

あの日見ていたものが夢であったとしても、彼は誓った。

『もしもう一度チャンスがあるというならレティシアは必ず自らの手で命を賭してでも守りきると』

そのチャンスが巡ってきたのだ。逃さないわけがない。

『復讐』と『守るべき者』

戦いは明日もまた繰り広げられることになる。

作戦名:グランホルン砦攻略戦

先に知らされているジルは確信している。ここが最初の正念場だと。

もう、大分経ってしまいましたね。キャラクターがぶれっぶれですよ、というか前の話とつながってるか不安になるレベルです。なんか変なところあったらごめんなさい。ついに次回からは本格的な戦争に発展していく話になります。頑張って更新頻度も上げたいと思っているので、生暖かい視線と応援の程をよろしくおねがいします。

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