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振り返ればカピバラがいる

作者: ぜき呑
掲載日:2026/06/06

「蕎麦うちたいなぁ」 武藤雪香 心の声である。


 そう、わたしは伝説の蕎麦職人スキルを持ったOLである。嘘です。

 子どものときから蕎麦が好きで好きで好きで、いつかは蕎麦屋さんになるのが夢というのを卒業文集に書いたなぁ…… 現実は厳しいけど。


 と、言うことでわたしは中堅リフォーム会社の経理事務員です。仕事はきっちりやるけど楽しい訳でもやりがいがある訳でもないかな。まあ、会社勤めでやりたいことやっている人も少ないだろうけど。


「あんたの彼氏、取引先の女とできていたらしいじゃん」


 いきなり同僚が楽しそうに聞いてくる。人の不幸話は楽しいもんね。当事者はすごく面倒なんだけど。


 そう、わたしは同じ会社の男性と結婚前提で付き合っていた。正式なものではないけれど、婚約っぽい形式で、それぞれの両親にも挨拶に行ったりして来年には結婚する話になっていたわ。相手のご両親は温和でやさしい雰囲気なので安心していたのだけど。


「先週、ふられたのよ。何か新しく好きな女性ができたとかなんとか」


 同僚はさも楽しそうに『それって真実の愛とかってやつ!』と他のみんなを交えて爆笑している。


「逆に結婚前で良かったのよ。あんな浮気性じゃやっていけないし」


 実はわたしからするとたいしたダメージは無かったりする。なんとなく嫌いじゃないから付き合っていただけで、燃える恋心とかはもちろん無い。

 つうか、そもそも恋愛感情ってものがあんまり無い。当然、結婚願望もほぼないのだ。

 ただ、三十歳を目の前にして親も遠まわしに色々言ってくるので付き合っていただけ。

 恋をしていないと生きて行けないという人の気持ちは分からない。


「今みたいに直接聞いてくれれば普通に話すんだけど、変な気を使われて逆に困るのよね」


 実際に上司や他の男性社員はこの話に触れないように気を使っているご様子。

 ちなみにわたしと付き合っていた男はさすがに気まずいのか、とっとと同業他社に転職した。

 仕事はそこそこ出来る人だったけどずいぶん早い判断だなとは思う。結構前から計画していたのかもしれない。


 しかし、これからも気を使われながら仕事するのも嫌だなぁ……。わたしも辞め時なのかな。転職って誰に相談するんだろうって自分のことになるとなるほど切実なのね。


▽▽▽


 わたしは実家暮らしである。その日、帰宅する兄嫁が来ていた。

 兄嫁の実家は小さいお蕎麦屋さんで、わたしとはとても仲良しである。何度もそのお蕎麦屋さんに連れて行ってもらったし、なんなら一人でも行って色々教えてもらっていた。


「雪香ちゃんおかえりなさい。遅かったのね」


 いつものほんわりお姉さんらしく優しい口調である。


「ちょっといつものサークルに寄ってきたからね」


 まだ行っているのかと呆れ顔の母親とクスクス笑う兄嫁である。


 そう、わたしは昔からの趣味がふたつある。

 ひとつは『蕎麦打ち』で、中学生の時からお小遣いで少しずつ蕎麦打ちの道具を買い集めて家で練習をしていた。実に胸躍る時間なのだ。まあ、躍るほどの胸は無いんだけど。


 そして、もうひとつの趣味が『カピバラサークル』である。これはカピバラ好きの集まりで老若男女バラバラの構成で十名くらいのメンバーがいる。わたしは高校生の時から参加しているわ。

 そこで実際に見学に行ったり、動画を視たり、カピバラに関して熱いトークをするのである。

「実はカピバラって泳ぐのが得意なのよ」「肉球がハート型なの知っている?」「カピバラを食用にしている国の物は買わない」とかね。


 人間には興味はないけどカピバラは大好きです。


「そう言えば義姉さんはどうしたの? 何かあった?」


 同じ都内に住んではいるが結構時間がかかるところに住んでいる兄夫婦は余り実家には来ない。


「実はねぇ、雪香ちゃん。私の実家なんだけど、蕎麦屋をやめるみたいなのよ」


 わたしの師匠がお蕎麦屋さんをやめるってどういうこと? まだ、そんな年じゃないでしょ。病気? 事故? 何があったのかしら。


「父が病気とかじゃないの。父の田舎が長野県なんだけど、父の実家に住んでいた親戚が他界してしまったので家に戻れないかと話があったみたいなの」


 そう言えば師匠もいずれは長野の家に帰って蕎麦畑の仕事したいとか言っていたなぁ。

 東京は便利だけど、自分ら夫婦には向いてないとか。


「それでね、雪香ちゃん。あなたもよくお店に行っていたし、父も気にしていて、良かったら道具とかあげるからお店においでと伝えてくれって言われてね」


 電話でも良かったんだけど、ちゃんと直接言ったほうがいいと思ってとのこと。

 律儀な人だ。兄はいい人と出会ったわ。わたしと違ってな。

 だけど、わたしは別のことを思いついていた。


「義姉さん! わたしにお店継がせてくれるよう言ってくれないかな? もちろんわたしも直接お願いに行くし!」


 これは運命! 転職や! エージェントに相談している場合ではない。


「いつお店閉めるの? 正式に弟子入りして色々教えて欲しい。 あっ、家賃とかももちろん払うよ。本気だよ。会社も辞めるし」


 ちょっと落ち着いてと母と兄嫁になだめられながらも、これが落ち着けるだろうか、いや、無理。


「雪香ちゃん、ちょっと待って。あなたが行く前に父に聞いてみるから。弟子入りと蕎麦屋を引き継ぐってことね。だからまだ会社は辞めないでね、一旦、座ってね」


 いつの間にか立ち上がっていたらしい。

 母からは一応、父さんにも言っておくわと頭を抱えながら言われる。血圧が上がらなきゃいいけどなどとつぶやきながら。


 兄嫁を見送った後で、母の作った夕飯を食べる。そして自室に帰ってスマホを見る。

 カピバラサークルからグループ連絡がある。


―― カピバラ飼いませんか?


 なんですとぉ! また立ち上がってしまった。

 確かに個人でカピバラは買えるし、飼える。ただし、結構なお値段がするし、水場が無いとかわいそうなので好きな人ほど気軽に手は出さない。


 ふと、お蕎麦屋さんを思い出す。あのお店にはホントに小さい庭があって昔はここが池だったとか言っていた。今は土を入れて花壇にしてたけど。ミニトマト作っておいて花壇と言い張るおかみさんが好きだったわ。蕎麦に使うもん作ればいいのに。


 横に井戸があってそれも囲いがしてあったな。ポンプが壊れているし、直しても使い道ないしと言っていた。飲めるかどうか調べてもいないけど水はあるらしい。

 ふふ、そんな修理業者は取引先であるさ、上司に頼んでみよう、格安で出来るな。


 わたしは洋服やらアクセサリーやら化粧品に興味は無い。映画も見ない。映画を視るならカピバラの動画を視ていたい。エステも行かない。そんな時間があれば蕎麦を打ちたい。

 そんなんだから浮気されるんじゃんとか言われてもそれがわたしだもの。


 だから預金はまあまあある。別に元婚約者にたかっていた訳ではない。いつも割り勘だった。わたしがそうして欲しいと言ってたからね。高い店は行かなかった、ご飯は庶民飯が一番いいわ、洒落た店なんて似合う人が行けばいい。まあ、洒落たお店は浮気相手と行ってたんだろうさ、変に詳しかったりしたし。


「忙しくなるわね。蕎麦屋にカピバラ様。段取りを考えなきゃ」


 色々あってまず兄嫁から連絡あり。師匠は大笑いの後にまかせるから店は好きにしていいと了解してくれたらしい。その上、家賃も格安で、長野から蕎麦粉も相場より安い価格で送ってくれるとか。なんてありがたいのかしら。

 一年以内に店を止めるから早めに弟子入りに来いとのこと、今日にでも行きたいわ。秘伝の出汁とかも全部教えてやると活きこんでいるみたい。嬉し過ぎるわ。


 次にカピバラサークルに連絡する。飼いたい旨を伝えるとお値段の説明や環境やらをかなり細かく聞かれたわ。そうじゃなければいけないと思う。カピバラ様のことだものね。

 そこで、小さいけれど池を設置します。ご飯は干し草の他に長野から新鮮野菜を準備します。というプレゼンをしつつ、サークル代表に説明したわ。この代表って昔からお爺さんだけど今は何歳なのかしら?     

 百歳とか超えてないわよね。


 よく分からないけれど事情があって引き取るカピバラなので、お値段は相場よりかなり抑えられるけど、優しい人じゃないとダメみたい。大丈夫よ、わたしはカピバラ様には尽くすタイプだからね。んで、今すぐではなく半年から一年くらい先みたいなので丁度いいわ。お店の改装もあるしね。


 最後に両親への説得があったわ。婚約破棄で自棄になっていると思っているみたい。

 ただ、両親もわたしが昔からお蕎麦屋さんやりたいのは知っているし、カピバラに異常に食いついてるのも知っている。

 それでも心配なんだろう。そんな気持ちも分かるけど。


「結婚はしないつもりなのかな?」 父は言う。

「カピバラ様と結婚します。今、お見合いする準備をしています」


「いや、そうじゃなくてね。人間相手の話をしているんだよ」 父は呆れた顔で言う。

「多様性の時代になにを言っていますか!」


「多様性にも程があるわぁ!」 父はついに大声で叫ぶ。


「いや、サステナリビティです!」

「それ関係ないわよねぇ」 母が言う。


「併せて SDGSです」

「どんどん離れて行ってるな」 父は言う。


「インボイスです」

「「全く関係ないわぁ!」」 両親の叫び。なかなか見られない光景。


 色々あったが両親との話し合いも済み、会社も円満退社となった。

 蕎麦修行しつつお店の改装を考える。ひとりでやるんだからテーブル席いらないな。牛丼屋さんみたいなカウンターにしよう。中古で安く売ってないかな? 元上司に聞いてみよう。すごく心配してくれていたのよね。ありがたい。


 金融公庫にもお金を借りる相談いかなきゃ。事業計画書は同僚にチェックしてもらったから平気かな。あとは助成金とか調べるか。やること多いな。でもそれがいい。じっとしているより色々とやっているほうが好きだしね。


『楽は嫌だよ苦労がしたい。苦労のしがいがあるように』


 昔、父の本棚から借りた本の一節を思い出す。確か高杉晋作に関係する本だったな。内容は覚えてないけど、この一節だけ覚えているわ。今のわたしは苦労のしがいがあるように頑張るだけだね。


 ご近所に挨拶する。隣のお豆腐屋さんとはとても仲良くなった。何かあったらすぐ行くからいつでも言ってこいと旦那さんと息子さんに言われたわ。頼もしい。


 そんなこんなで、あっと言う間にお蕎麦屋さんご夫婦が長野に行く日となった。

 泣きそうだった。つうか泣いた。死ぬ訳じゃないんだからとか笑われたけど。


 店の改装も終わり、小さい池の準備もできた。良いタイミングでカピバラサークルから連絡あり、いつでも連れて行けるとのこと。いよいよ大事な旦那様が婿入りに来るわね。


 メニューは多いと無理なので、初めは三つだけにしようと思う。

 全部五百円にしよう。大丈夫、試算上だけど儲けは出る見込みである。蕎麦も野菜も安い値段で送ってもらえるからね。


 ・大きいがんもどき蕎麦

 ・半熟卵と白髪ネギ蕎麦

 ・たっぷりなめこと大根おろし蕎麦


 これで行こう。一番人気は何かな? がんもどき蕎麦かな。天ぷらはやらない。手が回らないもの。

 いずれ考えるわ。


 カピバラ旦那様も無事到着した。指輪の交換はしなかったけど、リンゴの交換をして無事に婿入りが完了。現在は小さい池とお店の土間部分を行ったり来たりしていてご機嫌そう。ひと安心ね。


 ではオープンと行きますか! 『カピバラ庵』開店よ!


 初日はご近所の皆さんがたくさん来てくれたわ。特に目の前の老人ホームの方々が喜んでくれた。ホームのご飯もおいしいけど、蕎麦ってあんまり出ないとか。


 カピバラ様を眺めながら蕎麦を食べるという、この世でもっとも幸せな蕎麦の食べ方を皆さんに広く知って頂きたい。

 するとすぐにSNSで拡散されたみたい。急にお客様が増えたわね。お昼時は行列になってしまってご近所に申し訳ない。


 見かねた老人ホームの皆さんが手伝いに来てくれることになった。

 最低賃金しか払えないけどって言ったんだけど、ニコニコとOKもらった。ありがた過ぎるわ。週数回、三時間くらいづつ交代で来てくれる。それでも良いお小遣いだそうで、洗い物や仕込みを手伝ってくれている。

 バイト代で、うなぎ食べるとか、孫におもちゃを買うとか、なかにはアイドルグループのライブに行くとか人それぞれね。誘われたけど、わたしはアイドルとか全然知らないからなあ。


 人生の大先輩たちが来てくれたので、追加メニューで『おから稲荷寿司』を百円で出してみた。さすが上手に作るわ。わたしじゃこんなにおいしくおからを調理できないな。

 お蕎麦だけだと足りないって人が頼むだろうと思っていたけど、結構、女性からよく注文が入る。なるほど、食物繊維ね。気持ち分かるわ、翌朝たくさん出るもんね。


 となりのお豆腐屋さんにも感謝しなきゃ。がんもどきと油揚げは毎日注文しているけど、おからは捨て値で売ってくれている。助けられてばっかりで申し訳ない。


 テレビにも紹介されたせいか、以前勤めていた会社の方も頻繁に来てくれるようになった。およびじゃない奴も来たけどね。浮気男である。


「ずいぶん繁盛しているみたいだな?」


 もう店の営業時間は終わっているのに何しに来たんだ、コイツは。


「なあ、金貸してくれよ。儲かってんだろ」


 馬鹿でありクズであるという二刀流である。


「一杯五百円の蕎麦でどれだけ儲かると思ってるの? 借金返済まで順調に行ってもあと八年かかる計算なんだけど」


「うちの親から婚約解消の金もらってんだろ、この金はどうした?」


「もらっていないわ。あの親御さんたちが悪い訳じゃないからね」


 無駄足だった。使えない女だとかブツブツ言っているけど早く出て行って欲しい。

 そこに隣のお豆腐屋さんのご主人と息子さんが来てくれた。包丁持って。


「雪ちゃん、何かあったか? 大きい声がしたんで来てみたが」


 大きい声は出してないでしょ。だけど、下町のネットワークはすごい。見慣れない男が営業時間外に店に入ったとお豆腐屋さんに言ってくれた人がいたみたい。

 でも、包丁持って来るのはマズい気がする。お巡りさんいたら捕まっちゃうよ。


 浮気男はあわてて無言で店を出て行ったわ。二度と来ないで欲しい。


「旦那さん助かりました。カピバラに何かあったらどうしようかと思って」


 まずは自分の心配しろと怒られたけれど、カピバラ優先なのはわたしにとって当然である。


 しばらくして、元の会社で仲良しだった同僚が営業時間終わりくらいに来店した。

 お蕎麦を食べたあとお客さんは同僚ひとりだけになり、ニヤニヤしながら聞いてきた。


「その後の浮気男について聞きたいでしょ?」


 全く興味が無いと答える。先日来て借金の話にきたのでご近所さんに追い払ってもらったと説明すると、同僚は大笑いした。そのネタは会社で広めるってさ。好きにせい。


「あいつはアンタの件で親からも絶縁されてたらしいわよ。しかも浮気相手と結婚したけどすぐ離婚したらしいわ。また浮気だってさ、病気なのかしら。うけるわぁ」


 当事者は全然笑えないけどね。


「それからね。同業他社に転職してうちの取引先を何件か持っていったらしいの。それに怒った部長が営業部全員にその会社の取引先を狙い撃ちするよう指示してさ」


 何十件も自社に切替えさせたらしい。浮気男は責任をとる形でまた退職とのこと。

 社内ではおもしろおかしく浮気男の噂を集めているのだとか。暇なのか、営業部!


「しかも知ってる? それで今度はラーメン屋さん始めたのよ。ハムスターを見ながらラーメンを食べるんだって。店の名前は『ハムラ―』だってさ。アンタ見て真似したんだろうけどひどすぎる」


 うん。絶対うまく行かないと思う。ハムスター好きな人は飼っているだろうし。そもそも素人が勢いで作るラーメンなんて金払って食べないし。


「速攻で潰れたってさ。なんか恐い人に連れていかれたみたいよ」


 まともな金融機関じゃないところから借金したんだろうな。闇バイトのニュースとかでそのうち見ることになりそう。生きていればだけど。

 楽しそうに話終わった同僚がまたネタ持って来るねと言いながら帰っていった。いらんわ。


 長野の師匠からは蕎麦と野沢菜と大根を葉っぱ付きで送ってもらっている。葉っぱはおからに混ぜるからね。それから規格外のリンゴも送ってくれる。リンゴはカピバラ旦那様の大好物です。ありがたい。


 人生の大先輩たちからも、実家でこんな野菜を作ってるけどいる? 安くさせるわよとか言ってくれる。ありがたいが地元の商店街でも買い物をしておきたい。なんだかんだ言っても頼りになるのは近くの皆さんだし、こういう持ちつ持たれつの関係は大事よね。


 お店は今のところ順調すぎるくらいである。カピバラ旦那様はお触り厳禁にした。写真撮影はいいわよ。フラッシュはダメだけどね。

 エサも販売しようかしら。太ったら困るからやめるか。

 近所の子どもたちもたまに来る。小学生以下は蕎麦を食べなくてもいいですよ。カピバラ旦那様とたわむれてください。


 最近はテイクアウトで『おやき』も販売開始した。中身は野沢菜とおからと切干大根である。これまた結構な人気ですぐ売り切れる。

 おやきは人生の大先輩たちが作ってくれている。わたしも教えてもらっているが、まだまだ皆さんのようにはできない。もっと頑張ろう。


『楽は嫌だよ苦労がしたい。苦労のしがいがあるように』


 よく思い出す言葉。大変だけどものすごく充実した毎日を送れているわ。

 あの時、あの浮気男と結婚しなくて本当に良かった。していたら地獄だったわね。


 最近はお豆腐屋さんの息子さんがしょっちゅう来店する。がんもどき蕎麦は食べない。そうよね、家に帰ればたくさんあるもんね。

 聞けばわたしと同い年らしい。女性と話すのが苦手で誰ともお付き合いしたことも無いらしい。わたしは別にいいと思うけど、本人は気にしているみたい。

 カピバラ旦那様の二番目でいいので付き合って欲しいとか言われたけど、とりあえずお話の練習からしましょうねと言ってある。優しいし、頼りがいはあるし、女性に慣れればモテそうなんだけどね。


 だってわたしは今とっても幸せだから他のことは考えられないわ。


 夢だったお蕎麦屋さんをやっている。


 お客様もたくさん来てくれておいしいと言ってくれている。


 ご近所さんとも仲良くしてもらっている。


 一緒に働いてくれる人生の大先輩たちにもお世話になっている。


 そして、『振り返ればカピバラがいる』


 完


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