昼休み、天才がバカになる時間
俺「なあ」
昼休み、教室の隅。
パンをくわえたまま、俺は言った。
俺「消しゴムってさ……食えると思う?」
タ「は?」
向かいに座る健人が、ものすごく嫌そうな顔をした。
俺「いや、だってさ。パンに似てるくね?」
健「似てねえよ」
俺「白いし」
健「それだけだろ」
その横で、裕太が静かに口を開いた。
裕「……いける」
俺「いけるの!?」
健「いや待てお前が乗るな!」
裕太は真顔で自分の消しゴムを見つめている。
裕「原材料は……ゴムか」
俺「そりゃそうだろ」
裕「つまり、弾力がある」
俺「食感の話すんな」
健「新食感」
俺「キャッチコピーみたいに言うな」
そのとき、綾が後ろから割り込んできた。
綾「何の話?」
裕「消しゴム食えるかどうか」
綾「バカじゃないの?」
俺「だよな!!」
俺は安心した。やっとまともな人間が来た。
しかし綾は続けた。
綾「食えるわけないじゃん。チョークの方がまだいける」
俺「お前もダメだった」
議論はなぜか白熱していった。
裕「いやチョークは粉っぽいだろ」
綾「消しゴムは噛み切れないじゃん」
健「じゃあ水に溶かせば?」
俺「溶けねえよ」
綾「ミキサーにかけたら?」
俺「何を作ろうとしてるんだよ!!」
そして、ついに裕太が立ち上がった。
裕「……やるしかない」
俺「やるな!!」
教室がざわつく。なぜかクラスメイトも集まり始めた。
「何やってんの?」
「実験らしい」
「マジで食うの?」
「やめとけって!」
担任が来たら終わるぞこの空気。しかし裕太は止まらない。
ゆっくりと、消しゴムを口に――
俺「待てえええええ!!」
俺は全力で止めた。
俺「正気に戻れ!!」
裕「離せ……これは人類の可能性だ」
俺「しょーもない可能性すぎるわ!!」
結局、その騒ぎで先生が来た。
先「お前ら何してる」
シーン、と静まり返る教室。
全員が顔を見合わせる。
そしてなぜか、俺が前に出た。
俺「……消しゴムの食用化について、議論を」
先「廊下に立っとけ」
俺「なんで俺だけ!?」
廊下に立ちながら、俺は思った。
なんでこんなバカなこと、全力でやってんだろう。
でも、教室の中から笑い声が聞こえてきて――
まあ、いいかって思った。
数分後。
ガラッ、とドアが開く。
健人が顔を出した。
健「おい」
俺「なんだよ」
健「新しい議題なんだけどさ」
俺「まだやるの!?」
健裕「「ノートって食えそうじゃね?」」
俺「もうやめてくれ!!」
_________完。




