9話「セルフ救出劇」
俺は2Pカラーカマキリの超・必殺技を食らって昇天したらしい。
こうして、俺の魔王伝説・序章は終わりを告げた。
何が起きたのか全くわかんねーが、目の前が真っ白になったら真っ暗になった。たぶんこれが死というもんなんだろうな。なんかあっけねーが、これが現実らしい。
あー、でも、これでやっと夢から覚めるんかなー。
思えばろくでもねー夢だった。
ゴキちゃんになって、キメラになって、カマキリの攻撃であっけなく死亡。せめてチート能力で無双させろよ。マウント取れたの穴に落ちたカエルだけじゃねーか。
ま、いっか。
グッバイ、俺の夢。
もう二度とこんな夢みせんな。
次はイケメン勇者になって美女とイチャイチャする夢を希望する。
……。
…………。
………………。
……おい、さっさと目覚めさせろや。いつまで真っ暗なままなんだよ。意味なくじらしてんじゃねーよ。
《……》
もしもーし、聞こえてますかー?
《規定の経験値に達しました》
は?
《レベル8から10に上がりました》
……。
《スキルポイントを10獲得しました。保有スキルポイントは200です》
……おい。
《規定のレベルに達しました。進化可能です》
《進化先:アベラギウム・ウルザス or プレ・デア》
なんでだよ。
死んでレベルアップしてんじゃねーよ。続きはあの世でプレイさせる気か? あぁ?
《……》
たっく、ホントにろくな事がねーな、この夢は。
ゴキちゃんだわ殺されるわ身動き取れねーわ身体痛ぇわ……ん?
ちょっと身体を動かしてみる。
カサカサ——。
地面には着いてないみたいだが足は動くし、カサカサ音も聞こえる。
まさか俺……生きてるのか?
目の前は真っ暗だし、足は宙を切ってるが、身体の感覚はそのままある気がする。
ふん!
だが動けない。まるでひっくり返った亀のように。
……まさか俺、ひっくり返ってる?
なんでこうなったかは謎だが、俺はひっくり返って身動きがとれなくなってると。
うーむ……ふん! ふん! ふんふん!!
やっぱり動けん。足が宙を切ってカサカサいうだけだ。まるで逆さまになったまま穴にスッポリ嵌まってるかの如く……って、おいコラ。
《……》
あり得ねーだろ。どんな確率だよ。いい加減にしろ。変なストーリー作ってんじゃねーよ。
《……》
どうやら俺はギャグ漫画の世界に迷い込んだらしい。
これ、俺が作った穴だろ。自分のゲロの匂いがするので間違いない。
自分で作った穴に逆さまに落ちるなんてボケかまされても受けねーよ。それにこれ、どうやったら抜け出せるんだよ。マジでふざけんな。
おい天の声、ヒントぐらい寄越せや。このままじゃひっくり返ったままミイラになるぞ。
《……》
くそ、相変わらず役に立たねー。
あーあ、どうすっかなー。
足は役に立たねーし、スッポリ嵌まりすぎてるせいで羽も動かねー。なんでこんなにジャストフィットしてんだよ、この穴。
……これ、詰んでね?
何度も殺されかけた末に自分の落とし穴でトドメ刺されるとは夢にも思わんかったな。
このまま干からびるぐらいならカマキリの必殺技でカッコ良く散りたかったわ。
助けを呼ぼうにもゴキタランチュラは人語話せねー。つーか、こんなとこに人がいるはずねー。そして唯一日本語がしゃべれる天の声は人でなしの薄情者。人のことを勝手に「†GAME OVER†」とかぬかしたろくでなしだ。たまにはレベルアップやスキル以外のこと喋れや。
《……》
くそ。せめてカマキリのような鎌や空中浮遊ができれば脱出できるかもしれんのに……って、スキルあるじゃん! なんで忘れてたんだよ俺!
この世界にはスキルという魔法のような力がある。鑑定はクソだったがあれも超常の力と言えば超常の力だ。だったらこの場を切り抜けられるスキルがあっても不思議じゃない!
おい天の声!
《……》
空中浮遊のスキル寄越せ! UFOのように浮けるやつだ!
《スキルポイントが足りません。スキル「浮遊」獲得に必要なスキルポイントは1000です》
ふざけんな。90%オフにして今すぐ寄越せ。ぼったくりすんな。
《スキルポイントが足りません。スキル「浮遊」——》
もういいわボケ。
じゃあ前足をカマキリのようにできるスキル寄越せ。長くて鎌になるやつ!
《スキルポイントが足りません。スキル「鎌足」獲得に必要なスキルポイントは800です》
俺の財布事情知ってんだろ。割引しろ!
《スキルポイントが足りません。スキル「鎌足」——》
繰り返さんでいいわボケが。お前はロボットか。
《……》
また黙りかよ。無理ならせめてなんか解決策よこせ。死んだら訴えるぞ。
《……》
なんか便利スキルねーかなー。
性能の割にお得なやつで、この状況から脱出できそうなやつ。
そういえば、俺のスキルポイントって今何ポイントよ?
《現在の保有スキルポイントは200です》
そういやさっきそんなこと言ってたな。死んだと思ってたからまともに聞いてなかったわ。
第一目標「射出」に必要なスキルポイント200、ついに溜まったのかー。こんな状況で溜まっても嬉しくねーけど。
他に脱出に使えそーなスキルは……何かあるか?
うーむむむむむむ…………あったぁぁぁあああーーー!!
俺って今「蜘蛛」じゃん!
蜘蛛といえば蜘蛛糸! お尻から出して壁にくっつけることができる糸! まさに今の俺に必要なスキル!
幸いにもお尻は天井を向いてるっぽいし、穴の外に糸を出せればそれを伝って脱出できる! これしかない!
おい天の声、蜘蛛糸のスキル寄越せ!
《スキル「蜘蛛糸」は獲得済みです。スキルポイント50を消費してレベルアップしますか?》
しねーよ!!
おっほ! まさかの獲得済み!!
強酸と黒光りに気を取られてて全く考えてなかったわ!
そうだよなー、蜘蛛型なのに蜘蛛糸出せないとかあり得ないもんなー。
シュル! ペタ——。
出せると分かったら普通に出せた。そしてうまく穴の外にくっついたっぽい。糸を足で引っ張り強度確認。問題なさそうなのでセルフ救助活動開始。
スルスルスル——カサカサカサ——。
おっしゃぁぁぁ!! 脱出成功ぉぉぉ!!
絶体絶命のピンチを切り抜け、俺は帰ってきた来たぞぉぉぉ!!
あー、外の空気が美味い。ダンジョンだけど第二の故郷って感じがするわー。それにしても……。
キョロキョロ——。
なんや、この破壊痕は?
2Pカラーカマキリがいたであろう場所から俺の逃走ルートに向かって一直線に地面が抉れとる。奥の方の壁とか全部貫通しとるし、なんちゅー威力だ。穴に落ちてなかったら細胞ごと消滅してたわ。
2Pカラーカマキリよ。次にドラゴンに喧嘩売るときは先制攻撃でこれをぶっ放すといいぞ。
キョロキョロ——。
2Pカラーカマキリは……いねーな。
あの必殺技は自分を砲弾にでもする技だったんか? だとしたらカマキリは壁の向こう、遙か先だな。ダンジョンをショートカットするのに便利そうだ。
さてと!
過ぎた恐怖はさっさと忘れて、いよいよ「射出」スキルゲット&お披露目といこうか!
これを覚えれば俺ツエー展開の幕開けだ!! ※カマキリとドラゴンは除く。




