12話「当たり進化」
……おはようございます。
どうやら俺は気を失っていたらしい。
痛みで気絶するなんて初めての経験だわ、ボケが。
これだけ苦しめておいて更にキモくなってたらマジで許さんからな。
どれどれー……。
身体を動かしてちょっと確認。
体感的には変わってない気がするが……マジで「プレ・デア」とかいう種族になったんか?
ん? おんやぁー?
よく見たら前足二本の先っぽが注射針の様になってる。
とりあえず適当な岩にブスっとな——。
ブス。
おお! 岩に簡単に刺さった!!
ジュウゥゥゥ……。
そして先っぽから強酸が出るおまけ付き!!
やっべ、これツエー。
これってつまり、刺さりさえすれば内部から溶かせるって事だろ?
どんなに頑丈な皮膚を持っていてもその下は意外と脆いもんだ。たぶんあのレッドドラゴンだって皮膚の下に直接強酸を注入されればタダでは済まないはず。まあ、その皮膚が硬すぎるのが問題なんだが。
よっしゃ! とりあえず生け贄モンスターを探すか!
カサカサカサカサ——。
おお! 足も速えー!!
これってカマキリ並の素早さじゃね!?
注射針と素早さ倍増が「プレ・デア」の恩恵だとしたらマジモンの当たり進化だわ! これでカマキリからも余裕で逃げられる——いや、勝てるじゃね?
2Pカラーカマキリは無理でも、ノーマルの方ならイケる気がする。あいつって鎌を地面にぶっ刺したら隙だらけだし。
やっべ。そう考えたらマジで俺ツエー。
さあ! プレ・デア様の第一生け贄はどこじゃー!!
ズシン——ズシン——。
あなた様は対象外です。どうぞ自由なドラゴンライフを満喫してください。
……ふぅ、忘れてた。
ここはレッドドラゴンが徘徊するような、危険度オーバーSランクのダンジョン。うっかり目の前に姿を現したら瞬殺される。
俺はゴキちゃんが源流の隠密モンスターであり、サイレントアサシン。陰に潜み、陰から襲う者。
卑怯上等、好むものなり優越娯楽。
強くなったとしても、化け物モンスターと正面からやり合うことはねー。
さて、ドラゴンもいなくなったことだし、生け贄探索再開だ!
カサカサカサカサ——。
この速さ、爽快だねー。100メートル走とか2秒ぐらいじゃねーの、これ?
いやー、これだけでも「プレ・デア」になった価値はあるわ。おまけに強酸の注射針付き。初めてまともな進化したんじゃねーのか、これ。なあ、天の声。
《……》
なんか言えや、褒めてやってんだぞ。
《……》
ほんっ————とぉーにつまらん奴だな、お前は。
《……》
何? お前は完全にシステム音声なわけ? 人のピンチで「†GAME OVER†」とか的外れな厨二発言したくせに。
《……》
システムアップデートとかして話せるようにならんもんかねー。
《……》
うーむ……お前って、スキルみたいにレベルアップとか出来ないの?
《スキルポイントが足りません。スキル「天の声Lv.2」に必要なスキルポイントは100万です》
絶対しねーわ。
なんだよ100万って。
そしてお前、スキルだったんか。てっきり神様的なもんだと思ってたわ。
ムカつく奴に100万ポイントなんか絶対使わんからな。お前は一生レベル1だ。
《……》
お、アホな天の声と話してたら第一生け贄発見!
2メートルはありそうな黒ゴリラだ。
「ウッホ、ウッホ」
なんだ、ウッホウッホって共通語なんか? ゴブキンと同じじゃねーか。
とりあえず——死ねぇー!
バックアタックからの先制攻撃!
背中に張り付き、前足をぶっ刺して強酸注入!
そして華麗に離脱!
空中で優雅な回転を決め、10点満点の着地をする。オーディエンスがいたら拍手喝采だろう。
「ギャ……ギャ……」
ドシーン!
強酸の煙と土煙を上げて倒れるゴリラ。胸にぽっかりと穴を開けて。
ジュウゥゥゥ……。
うっわー、グロ。
カエルやカマキリならまだ見られるが、ゴブキンやゴリラのような哺乳類は結構グロいな。俺にもまだ人としての感性が残ってんのかなー?
《経験値が規定に達しました。レベルが1から2に上がりました》
《スキルポイントを10獲得しました》
お、レベルアップきた。しかも1レベルでスキルポイント10もゲット。やっぱり基準がサッパリ分からん。どうなってんだ、これ?
《……》
まあ、お前に答えは求めてねーよ。レベル1のクソスキルだし。
さーて、それじゃゴリラ肉でも頂きましょうか。
さっきから妙に腹が減ってんだよなー。
カマキリ肉食ってからまともな食事してないし、そろそろご飯タイムなのかもしれん。
ジュウゥゥゥ……。
にしてもグロい。
カマキリ肉は蟹っぽくて我慢できたが、これは……ちょっとねーな。
せめて切り分けて火を通したい。おい、天の声。
《……》
カマキリの鎌スキルって何ポイントだった?
《スキル「鎌足」に必要なスキルポイントは800です》
で、今の俺は何ポイント持ってるわけ?
《現在の保有スキルポイントは510です》
ふう、全然足らんな。
じゃあ……火魔法は?
《スキル「火魔法」に必要なスキルポイントは100です》
お、100ポイントで魔法使えるの? マジで?
《スキルポイント100を使用して、スキル「火魔法」を獲得しますか?》
……ちょっと待て、考える。
《……》
よく考えるんだ、俺。
スキルポイント100だぞ? あのクソスキルの鑑定と同じポイントだぞ? 本当に役立つのか?
……地雷臭がプンプンする。
魔法なんて一度は使ってみたいファンタジーの代名詞だが、この世界がそんなに優しいはずがない。きっと100均ライター並の火力で、スキルアップにはインフレコストが掛かるに決まってる。
やっぱ100ポイントスキルはねーな。絶対にクソスキルだ。
他に肉が焼けそうなスキルは……なんかあるか?
現代人の俺には、ガスコンロか電子レンジぐらいしか思いつかねーぞ。あとはIH調理器とかか?
電子レンジってどんな仕組みだっけ? 水の分子を振動させるんだったか?
そんな高度文明的なスキル、あるわけねーよな——チラ。
《スキル「分子振動」に必要なスキルポイントは5000です》
あるんかい!!
《スキルポイントが足りません。スキル「分子——》
あー、分かった分かった、テンプレを繰り返さんでいい。
《……》
にしても、5000ポイントか。それはめっちゃ強そうだ。
やっぱ魔王になるにはそんな強スキルが山のように必要なんだろうな。
とりあえずゴリラ肉に火を通すことは諦めて、今回は生食といきますか。
そんじゃ、いただきます、と。
モグモグ……モグモグ……結構イケるな、生ゴリラ肉。
モグモグ……モグモグ……結構美味いぞ、生ゴリラ肉。
《経験値が規定に達しました。レベルが2から3に上がりました》
《スキルポイントを50獲得しました。保有スキルポイントは560です》
なんでだよ!




