流れ星よ降っておくれ
夜空がぽろぽろ落ちてきそうなほど綺麗な空だけど、一度だって落ちてきたことはない。
流れ星よ降ってくれと願っているが、星座が変わるくらい時間は進んでいく。
「もう帰って寝ないと……」
今日も見れなかった。もしかしたらここでは流れ星が見られないのかもしれない。
一つ大きく息を吐き、うつむいた。湖面にはキラキラと星がこぼれていた。水面の星はいつでも手元にあるのに、空の星はいつまでもお高くとまっている。
「って、うわ!」
ぼーっとしていたせいか、足を滑らせて湖に落ちてしまった。その時、一瞬だけ世界が瞬いて見えた。夜空に浮かぶ不動の星が、流れて見えた。眺め始めて初めてのことだった。
「冷たっ、寒い寒い!」
急いで岸に上がる。一瞬叶った気がしたが、寒すぎてそんなこと考えられない。早く帰ろう、温かい石油ストーブが待ち遠しい。
暗い夜道で急いだせいか、地面につまずいてしまった。体が一気に落ちた。
「うわっ!またやった!」
最悪だ、また転んだ。水には落ちていないが、もう今日はだめかもしれない。
溜息とともに目を開けた。
あれ、もう自分は動いていないのに、星が動いている。
空にある全ての星が、弓で飛ばされた矢のように、一斉に流れてゆく。それは、一つ一つがキラキラと光り、水に落ちた体を突き抜けていくようだった。
息を呑んだ。ようやく見ることができた流れ星に魅せられて、今までの苦労が吹き飛んでいった。
やがて、流れ星は降り止んだ。この光景を忘れることはないだろうと、自信をもって言える。
さて、家に帰ろう。満足感に浸りながら、寒さを忘れてゆっくり歩き出した。
……ん?何か忘れているような?
「あ、願い事言うの忘れてた!うわーっ、信じられない。次は絶対に、言ってやる!」
さっきまでの静けさはどこに行ったのやら。どたどたと走って家に帰る。頭の上の星たちはキラキラと相変わらず輝いている。
それは、また会えることを楽しみにしてくれているようにも、もしかすると、あわてんぼうをクスクス笑っているようにも見えるのだった。




