第二話―賢明の孝徳―
第二話です。
一話の最後の不穏な空気の後、前作(novel/series/14438269)の終了後の所にまで時間軸が進みます。
人は一年でも変わるときは変わる生き物である。
今回、タグに「頭オーロラ」と「頭お花畑」と「お花畑ヒロイン」と「縦ロール姉妹」で悩んで、「縦ロール姉妹」にしました(;^ω^)
縦ロール姉妹なら、作中にもでてましたので。
そして悪役令嬢を巡る、悪役令息&転生者(元転生ヒドイン)のコンビvs縦ロール姉vs縦ロール妹の図式に。
第二話―賢明の孝徳―
エトルリアとロクナレスの間に戦争が起こることはなかった。と言うのもロクナレス王国の
王族は欲に忠実である反面、それに対する労力と言うものが非常に欠如しており何かを得る
為にはそれ相応の対価が必要であることを全く理解していなかったのだ。この怠惰な性質を
利用して権力を貪っていたのがユースレスなのである。ユースレスはロクナレスの王族達を
上手く煽てることで互いに争わせ民の不満を煽り暴動を起こさせて王族と国民の間に亀裂を
生じさせると両者の間に立ち、王族には暴動を止めることを名目に兵権を手に入れ国民には
王族の暴政を止める為に共に立とうと決起を促すなど両者の対立を煽り双方から支援物資を
受け取ると私腹を肥やしていたのである。これによりロクナレス王国は一気に国力が低下し
戦争どころではなくなった。その上、飢饉に見舞われたので国民は近隣にある3つの国へと
逃げ出したのである。一つはロクナレスの北にあるゴドルフィン王国。二つはロクナレスの
東にあるエトルリア公国。三つはロクナレスの南にあるアルレイム王国であり、それぞれの
国の王はロクナレスから逃げてきた民を元の国へ帰すのではなく受け入れることを選んだ。
国の資本は国民の生活にあると言うのであれば間違いなくロクナレス王国は危急存亡の秋を
迎えたのである。このロクナレス王国の危機に対して手を差し伸べた人物がいた。その者の
名はマルグレーテ・エルフェゴート・アウシュトラス。隣国のエトルリア公国に住む見習い
錬金術師である。何故、マルグレーテがロクナレスに手を差し伸べたか?と言えば、それは
王族は王族、国民は国民だからである。ロクナレス王国の王族に問題があるとしても国民に
問題があるとは限らないからだ。この考えは的を得ておりロクナレス王国の国民が気にして
いた飢饉の問題を解決するのに作物の改善と物価高を解消したら国民の生活は安定した。
国民の生活が安定すると貴族の生活も自然と安定するもので貴族の生活が安定すると王族の
生活も安定した。ロクナレス王国が抱える問題を解決したマルグレーテはある日、隣国の王
リターから呼び出しの手紙を受けた。手紙の内容はとてもシンプルなものでマルグレーテが
ロクナレス王国に対して行った功績を称えると共に自分に仕えないか?との仕官の誘いでも
あった。勿論、マルグレーテはこの誘いを丁重にお断りした。先日、起きたデビュタントの
一件について彼はまだ根に持っていたし何より自分の愛する女性に対して歳さがもなく求婚
するなんて非常識にも程があると思っていたのだ。しかもエルフリートとユースレスの間に
二倍以上の歳の差があったと言うのに今度は妻もいて子供もいるような50歳過ぎの男性と
結婚しろと言うのは流石に無理がある過ぎると不満を抱いていたのである。マルグレーテは
この非常識で恥知らずの王に対して次のような内容を手紙にしたためて郵便箱へ投函した。
『謹啓、謹んで申し上げる。先日、陛下がしたためた恋文を拝見させていただきました。
何とも不適切な内容だった為、公女様自身には一切、見せることなく一瞬で大公殿下が
焼却処分したとの事です。私もそれに倣い陛下からいただいた手紙を焼却処分しようと
思います。このような不適切な手紙は二度と送ってこないよう、お願い申し上げます。』
返事の手紙を受け取った隣国の王リターは激怒したが実際にはマルグレーテの顔はおろか、
求婚した相手であるエルフリートの顔ですら知らないのである。それゆえ、リターは自分の
配下である宰相のユースレスを王の間まで呼び出すと、こんな質問を彼にしたのである。
「ユースレスよ、お前は隣国の公女を見たことがあるそうだな。して美貌は如何だった?
美人なら、儂の妾にしたい。不細工なら、お前にくれてやろう。如何だ?嬉しかろう。」
名案とばかりに言うリターにユースレスはこれだから愚王は……と嘲弄の笑みを浮かべた。
質問の答え方によっては自分の首が容易に飛ぶことを理解していたユースレスはどう返事を
すれば、この危機を回避できるか?よく解っていたので彼は王に、こう答えたのであった。
「百聞は一見に如かずと言います。私が公女様をお見掛けしたのは4月のことですから
今から約半年前のことです。来年には母国の王立学園に通うようになるでしょうから
娘である王女様達に頼んで社交界での様子を聞いた方が早いのではないでしょうか?」
「おお!それも、そうだな!!では娘達にそう言っておいてくれ。」
実際、他の人達が聞いたら王様の頭を疑うレベルだろうけれど、この場にいたのは王である
リターと宰相のユースレスの二人だけであった。しかもユースレスは人面獣心の配下であり
王であるリターのことを内心、愚王と嘲っているのだ。それ程、不誠実なユースレスが何故
王からの信頼を受けているのか?と言えば、それはリターの娘であるロクナレスの王女達に
関係があった。リターは自分の妻と娘であるセノエンスとシナッグンの三人に嫌われており
常日頃から距離を取られている。だが宰相であるユースレスを間に介せば会うだけではなく
一緒に食事をしたり会話をすることさえ可能となるのだ。その為、リターはユースレスが
どんな性格をしていようが、どんなことを行おうが大体のことは許してしまうのであった。
こうしてエルフリートの美貌に関する話は有耶無耶となりマルグレーテに対する士官の話も
なかったことになった。代わりに如何いう訳か?セノエンスとシナッグンの二人が隣国の
エトルリア公国にあるエクセッシブ王立魔法学園へ通うことになった。この事実に己の耳を
疑ったのは国王であるアウシュトラスの他、四人の大人達であった。特にエルフリートの
父親であるアスモデウスはセノエンスとシナッグンの二人を王宮で開かれた舞踏会で何度か
見掛けたことがあるので明らかに嫌そうな顔をした。それでもユースレスに対して忠告して
おいた甲斐もありリターが執拗にエルフリートに対して求婚し続けるよりはまだマシだろう
と言う理由でこの采配になったことを誰も知らなかった。幸い学園は中等部から大学部まで
ある分、問題はないがセノエンスとシナッグンの性格を考えると如何しても不安が拭えず、
アスモデウスは憂鬱な気分になった。と言うのもロクナレスの王族は誰も彼もが独創的な
性格をしており協調性に欠けているからだ。しかも自分に都合が悪いことはすぐに忘れるが
自分にとって都合が良いことは何時までも忘れず何度でも引っ張るなど性質が悪いのだ。
そう言った意味ではユースレスの方がまだマシではあるが悪人であることに変わりはない為
信用することは出来ないのである。また来年、娘のエルフリートが学園に入学するので、
セノエンスとシナッグンの二人に邪魔をされたくないのだ。親友のアスモデウスの様子を
見て心配になったバアルゼフォンは息子のマルグレーテに対してエルフリートを守るよう
言った。父親のバアルゼフォンからエルフリートを守るよう言われたマルグレーテは内心、
(恩を仇で返すのがロクナレスの王族の流儀なら私は私なりの流儀でやらせてもらおう。)
と一人、呟いた。来年、学園に入学するのは何もエルフリートやセノエンス、シナッグンの
3人だけではない。マルグレーテもまたエクセッシブ王立魔法学園へ通うのである。だから
こそ彼は愛する彼女を守る為ならばどんな汚い手を使おうとも必ず守ってみせると心に固く
誓った。次の日、マルグレーテは伯父であるベルフェゴールの家へ向かい何時ものように
発明品の実験を手伝っていた。伯父であるベルフェゴールは悪魔社会では発明王と名高き
男で雨雲発生器や近接力や遠達力などの物理法則を用いたエネルギーの操作が得意であり
数秘術を使った時間制御なども可能なのだ。そんな伯父の下で彼は錬金術の修行をしており
その一環として実験の手伝いをしているのである。マルグレーテは来年の4月、学園に入学
するまでの間、出来うる限り時間を費やして伯父の技術を少しでも得ようとしているのだ。
(伯父さんが普段、話しているレイファルドと言う人物のように私にも才能があれば……)
レイファルドと言うのはマルグレーテと同じ見習い錬金術の青年でありアザゼルの息子で
ある。またアザゼルはベルフェゴールと同様、魔王の一人であり伯爵に等しい地位を持って
いるのだが、それをひけらかすことはない。その為、アザゼルの息子であるレイファルドも
また自身の才能をひけらかすような真似を好まず大人しくしている。実際、マルグレーテは
レイファルドと一度も顔を合わせたことがないものの、その評価は常々、耳に入れている為
才能の高さを認めているが同時にライバル視もしており、いずれ乗り越える心算である。
そんなマルグレーテであるが学園に入学するまでの間、実験が忙しくエルフリートと中々、
会う暇がなかった。約半年の間も会うことが出来なかった為、色々と不満が蓄積されたが
実際、エルフリート本人と顔を合わせたら、そんなことは如何でもよくなった。入学後、
学園内で些か挙動が不審な女性を見掛けたが、その女性は全く面識のない相手だった。
「マルグレーテ、今日から一緒のクラスね!一緒に頑張りましょう!!」
そう言ってエルフリートは満面の笑みを浮かべた。だが、マルグレーテが返事をしようと
した瞬間、茂みの向こうから一人の女性が飛び出した。その女性はエルフリートに対して
掴み掛かるような勢いで傍へ近づくと意味の解らない怒りをぶつけてきたのである。
「なんで、あんたが王子と一緒にいるのよ!!」
「王子って……まさか、マルグレーテ!?」
あろうことか、その女性はエルフリートが公女であることを知らず単なる悪役令嬢だと思い
込んでいるようだった。マルグレーテは内心、無知とは斯くも愚かなのかと思いつつ女性を
エルフリートから引き離そうとした。すると女性はより強硬的な態度を取りエルフリートに
対して意味の解らない理屈を盾に攻撃するようになった。正直な話、マルグレーテは王子様
ではなく伯爵令息でありエルフリートこそが王族に連なる血筋を持つ公爵令嬢なのである。
それゆえエルフリートは最初から、そのことを女性に対して伝えようとしているのだが当の
女性本人が受け入れようとしないのだった。あまりの頑迷さに怒ったマルグレーテは例の
女性の顔面に砂を吐いた。実はマルグレーテは例の女性の意味の解らない理屈を耳に入れる
度に言いようのない怒りと胸焼けを感じていたのだ。その為、マルグレーテは隙あらば例の
女性の顔面に砂を吐いてやろうと狙っていたのだ。だがマルグレーテの態度を快く思わない
エルフリートは何とかして例の女性の顔面に砂が直撃しないよう根気よく説得をしていたが
結局は避けることが出来なかった。以降、その女性はマルグレーテのことを砂吐き王子だと
思っていたが、後にエルフリートに対する誤解が解けると共にマルグレーテに対する評価が
伯爵令息兼砂吐き小僧へと改訂された。エルフリートは内心、マルグレーテに対する砂吐き
モンスターの評価を直すことが出来なかったことを残念に思っていたがマルグレーテは例の
女性ことポラリスに何と思われようが気にしてはいなかった。と言うのも彼はエルフリート
以外の女性に対して興味を持っていなかったのである。この事実に対して、ポラリスも含め
マルグレーテ以外の家族は皆、問題視していたが本人は、その危険性に気がつかなかった。
恋と言う字は変と言う字に似ているとの言葉を思い出したポラリスは以後、エルフリートの
為にもマルグレーテが暴走しないよう監視するようになった。ただポラリスとのいざこざの
間にセノエンスやシナッグンがエルフリートに絡んでくることは全くなかったのであった。
それからセノエンスとシナッグンの名が再びマルグレーテの耳に届いたのはポラリスとの
一件から一年経った後のことだった。切っ掛けは何時ものようにポラリスとエルフリートが
マルグレーテと共に学園の中庭の方で昼食を食べていたらポラリスが一言、こう呟いた。
「昔の私に似た人達がいた。」
「昔とは、どれくらい前のことだ?」
「うんーと、一年前くらいかな?」
「去年だから意外と近いわね。」
ポラリスは前世の記憶を持って生まれた為、たまにそう言うような言い回しになる。だが、
それゆえに異世界に対する知識や輪廻転生に関する事柄をよく理解していないと、ただ単に
頭がおかしい人みたいな扱いを受けることも多い為、最近のポラリスは周囲をよく確認して
から話を始めるようになった。またエルフリートのように気長な人達にとって一年は短い為
つい昨日のように話されることが多いがエルフリートとポラリスの関係は去年の4月から
始まった分、短いのもまた事実ではあるが実際、ポラリスが言いたいこととは全く別もので
あった。つまりポラリスはエルフリートとマルグレーテに対して一年前までの自分と同じ
世界の中心が自分自身であることを信じて疑わないような人達に会ったことを伝えたかった
のである。それが解ったマルグレーテは内心、ポラリスがセノエンスとシナッグンの二人に
会ったのか?或いは遠巻きで、その姿を見たことがあるのか?と思った。マルグレーテは
ポラリスから何時、二人にあったのか?或いは見掛けたのか?問いただそうとしたが……
「あら?そこにいるのは白猫ちゃんと小娘じゃないの。」
当の本人であるセノエンスとシナッグンの二人の姿が見えマルグレーテは眩暈を覚えた。
「出た!縦ロール姉妹!!」
「聞こえてますわよ!そこの小娘!!」
「彼女は小娘ではありません!ポラリスと言うちゃんとした名前があります!!」
セノエンスはこれ見よがしにポラリスのことを平民の娘として見下そうとしたがポラリスは
先にセノエンスとシナッグンの二人を定番すぎるお嬢様ヘア或いは王女様ヘアと言った風に
揶揄した。出鼻を挫かれたセノエンスは悔しさを滲ませ忌々しそうに怒った。自分が下に
見ている相手に小馬鹿にしたような言い方をされて頭にきたのだ。隣にいるシナッグンは
どさくさに紛れて自分の事まで揶揄されていることに気づかず他人事のように見ていた。
「知らないわよ!そんなこと!!大体、平民の娘と一緒にいるなんて王族の品が下がり
ますわ!そんなことも解りませんの?これだから白猫ちゃんは頭が悪いんですわ!!」
「悪かったわね?男爵令嬢で!!貴女にとって平民の娘なんでしょうけれど、これでも
私はエトルリア公国の貴族なのよ!だから自分の住んでいる国の公女を馬鹿にされて
大人しくしている程ひ弱な女じゃないの!!馬鹿に馬鹿と言われることが一番、腹が
立つのよ!!貴女みたいな顔だけ綺麗な王族なんて、未来永劫ごめんこうむるわ!!」
エルフリートがポラリスに対するセノエンスの態度を窘めるとセノエンスは逆上して暴言を
吐いた。売り言葉に買い言葉と言った感じでポラリスはセノエンスを相手に啖呵を切り返す
と対するセノエンスは自分より下だと思っていた相手に虚仮にされて頭に血がのぼった。
「キィー!!ムカつきますわ!何なんですの?この娘!!私を誰だと思っているの!?」
「お馬鹿王国のお馬鹿王族にしてお馬鹿な王女様。」
「……ぷっ!お姉様って、お馬鹿さんだったんですの?」
「お黙り!シナッグン!!馬鹿と言った方が馬鹿なのよ!!」
「な、何ですって!?お姉様!!私が馬鹿なら、お姉様は大馬鹿者よ!!」
甲高い声を上げて怒り狂うセノエンスに対してポラリスは更に煽るような言葉を掛けた。
するとシナッグンが笑い出しセノエンスを小馬鹿にしたような口振りで挑発するものだから
セノエンスがシナッグンをこき下ろした。対するシナッグンもまたセノエンスをこき下ろす
もんだから段々と姉妹喧嘩へと様相が変わってきたのである。しかも最初にセノエンスを
煽った筈のポラリスは高みの見物を決め込んで消耗を抑える戦術へと既に切り替えていた。
(あれだけ啖呵を切っておきながら変わり身、早いな。)
目まぐるしく変わっていく状況に、ついていけない様子のエルフリートとは反対に冷静に
状況を分析するマルグレーテがいた。マルグレーテは最初、ポラリスとセノエンスは共に
自己中心的性格と同族嫌悪の類かと思っていたが如何やら違うらしい。ポラリスは一年間
エルフリートと行動を共にした結果、動物好きの恋愛脳を持つ、そこそこな性格になった
と言うのが今のマルグレーテの見解である。この日を境にポラリスとマルグレーテの二人は
セノエンスとシナッグンの二人とエルフリートを巡る戦いに身を投じることとなった。
俺 た ち の 戦 い は こ れ か ら だ !
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