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予知夢
「・・・すぐ夢が終わるね」
少女が少年に言う。少女の手は震えていた。それに気づいた少年は少女の手を強く握る。
ビルの屋上に少年と少女と二人で立ちつくしている。強い風が吹いて暗く冷たい地面に誘うように背中を押す。
少女の手が冷たく震えていると、少年は彼女の手を優しく握った。
怯える彼女に声をかける。
「怖いか?」
「少しだけ。でも、そばにいてくれるから平気」
弱々しく笑う彼女に、手を強く握る。
「俺も、***がいるから大丈夫だ。早くこんな悲しい夢から覚めよう」
「うん・・・。ねぇ」
「ん?」
「現実に戻っても、また逢おうね」
「あぁ、またどこかで会おう」
互いに見つめ合って笑い合い、現実に戻って会う約束を交わす。少年はまっすぐ前を向く。
山の谷間に沈む夕日が美しい。空は茜色から藍色の空に染まる。
もうすぐ日が沈む。
「帰ろう」
少女の言葉に、少年は頷き右足を一歩前出した。
足は、思っていたよりも軽かった。
もう戻れない、と理解した時には、視界が傾いていた。
屋上の縁が遠ざかっていく。
空に手を伸ばすこともできず、ただ重力に身を預けて、落ちていった。