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2 スキル“司書の索引”を発動したら

書棚の間に倒れている老人は、すでに冷たくなっていた…


首筋に当てた僕の指先には、まったく脈が触れない…


「その方が、当図書館の館長○○様でございます。正確には元館長というべきでございますが」


「な、なんで…この人は…ここで亡くなっているの?」


僕は、当然の疑問を「索引」にぶつけた。


図書館は、人が亡くなる場所ではない。少なくとも僕が働いていた図書館ではそうだ。


しかし、「索引」はその質問を完全に無視した。


「少々まずいかもしれません」


「索引」がそう言ったのとほとんど同時に、図書館の入口のほうから、ガヤガヤと人の話し声が聞こえてきた。その声は、明らかにこちらに近づいてくる。


「誰かが当図書館に入館しました。この状況を目撃されると、不要な疑いを持たれてしまう可能性があります」


「…え!? う、疑い…?」


僕は、あわてて館長の首筋から指をはなした。


なんだか急に、館長(の遺体)が、うらめしげに僕を見ているような気がしてきたが…。


「そ、それって、まさか……僕が館長を…殺した…的な?」


「そうですね」


「いや…そうですねって…」


「このままでは、そういう誤解を招きかねない、ということです」


「に、逃げよう!」


「もう無理です。間に合いません」


「じゃ、じゃあ、隠れる?」


「それも選択肢としてアリですが、もっとよい手段があります。スキル“司書の索引”を、もう一度発動してください」


「わ、わかった!」


僕は、なぜか気をつけの姿勢になり、囁いた。


「スキル“司書の索引”を発動する!」


その一言で、再び棚という棚の魔法書の背表紙が一斉に光り出した。


本当にこれで大丈夫なのだろうか?


むしろ、めちゃくちゃ目立ってる気がするが…


「大丈夫です。この光は、あなた様にしか見えていません」


「え…そうなんだ…」


「では、“忘却術”の魔法書を検索してください」


「検索? どうやって?」


「検索術の魔法書がどこにあるか考えるだけでOKです」


「わかった…やってみる…」


僕は目を閉じて、頭の中で呪文のように唱えてみた。


「忘却術の魔法書はどこにある?書棚の場所を知りたい!」


目を開けると、10メートルほど離れた場所にある本棚が盛大に輝いていた。


あそこにある…ということだよね?


僕は足音を忍ばせて、その本棚に向かう。


「書見台も忘れずに持って行ってください!」


「書見台? あの…館長のそばに倒れてたやつ?」


「そうです!」


急いで木製の書見台を拾う。意外と軽くて、片手で持てた。携帯型の書見台なのかもしれない。


輝いている書棚に近づくにつれ、たくさんの書物の背表紙が次々と、まるで踊るように光り、僕に進むべき方向を教えてくれた。


その光の美しさに見惚れた僕は、思わず手近にある書棚から、一冊の分厚い本を抜き出した。

するとページの端から柔らかい銀色の光が舞い上がり、空気中で星屑のようにきらめいた。


文字は金色に光り、魔法陣(?)が浮かび上がってページの上でゆっくりと回転する。その光に手を触れた瞬間、じんわりと温かい魔力が指先に伝わり、体全体に力が巡る感覚があった。本の背には「L」の記号と、数字の1が光っている。


僕は思わず呟いていた。


「これは…もしかして本を抜き出すだけで魔法が発動する?」


「そうではありません。スキル“司書の索引”を使用して、図書館に収蔵された魔法書に込められた魔力を発動させるには、その書見台が必要です」


「え、そうなの…」


だから「索引」はこの書見台を持たせたのか…


そのとき、入口のほうの話し声が、再び聞こえてきた。背の高い本棚に阻まれて姿は見えないが、どうもさっきより、こちらに近づいているような気がする。


「さあ、早く目的の本を探して、その書見台にセットしてください」


「わ、わかった!」


急いで、目的の本棚を探す。


光が指し示す方角に少し歩くと、ひときわ明るい輝きを放つ書棚に、その“本”は無造作に挿されていた。


背表紙のタイトルは読めないが、分類記号は「D-C-4」という文字が光っている。


その本を、僕は持ってきた書見台にセットする。

その瞬間に本のタイトルの文字が淡く光り始めた。


光はゆっくりと文字から宙に浮き上がり、魔法陣が表紙の上でくるくると回転する。


ーー忘却術


なぜか、僕にもタイトルの文字が読めるようになった。不思議な感覚だ。


と思うと、本がいきなりパラパラとめくれだし、あるページでピタリと止まった。


今度はそのページの文字が一斉に光り、本の周囲にも小さな光の粒子が舞い上がる。粒子は空中で小さな渦を描いた。


渦はやがて魔法陣を形づくり、白い光を放った。


その光を見た瞬間、なぜか僕は、自分が“忘却術”を完璧に使用できると確信していた。


書見台に置いた魔法書“忘却術”のすべてが、一瞬で頭にインストールされたようだ。


ちょうどそのとき、背後から声をかけられた。


「そこで何をやっているのですか?」


振り返ると、少し怒った表情で、若い女性が立っていた。


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