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【完結】私の幸せ  作者: P太郎
本編
29/59

籠の鳥

前回に引き続き、強姦の描写があります。R‐15程度内に表現は留めているつもりですが、ご注意いただければ幸いです。

暗い室内。見上げてぼんやりと映るのは、ベッドの天蓋とアベルの顔。うっとりした顔で私を見ている彼は、体を揺すって、獣みたいに荒く息を吐いている。気持ちいいのだろうなんて、どこか他人事のように思っていた。

すっかり慣らされたから、深く交わっている私も気持ちいい。でも、いくら甘い声を漏らしても、快感に身を震わせても、冷静に考えている自分もいて、私の心と体は分離してしまったかのよう。


「あぁっ・・・」


刺激に、強い快感が全身に走って一瞬意識が白んだ。体も強張っていたみたいだけれど、ゆっくり弛緩していく。

気持ち良かった。でも、本当にそれだけで心は伴わっていない。なぜ、私が恐ろしいアベルにこの身を委ねなければならないのか。なぜ、このような男の子供を孕まないといけないのか。そのようにしか思えない。

アベルも快感を得たようで、動きは止まり、僅かに震えて・・・ ああ、今回で子供ができてしまうかもしれない。


力を失ったアベルが私に身を寄せる。素肌の胸が合わさる抱擁を受けて、彼は息を整えながら私の髪を撫でた。指を絡めて梳かすように、愛情を示すかのような優しい手付き。そのうちキスをされる・・・ほら、目蓋に、頬に。そして顔にある傷にアベルはキスをする。

この愛撫を嫌がって振り払ったことがある。そのときに受けたのは、暴行とも言える恐ろしい罰だった。

だから、私は大人しく受け入れて、気を良くした彼の唇を出迎える。唇が食まれたから「開け」という命令だろう。素直に従ってうっすらと開けば、無遠慮に舌が入ってきた。口の中を舐め回されて気持ち悪い。

でも、嫌がれば罰を受けるから、大人しくしないと・・・本当は嫌なのに。


「コルネリア」


満足したらしいアベルが唇を放す。最後に私の唇を舐めてきたけれど、顔を背けることに留めた。それ以上の拒絶を見せれば、この男は荒れる。どうして、私がここまで耐えないといけないのだろう。


「愛してるよ」


頬をキスされる。視線を向ければ、彼の目はまだ熱を帯びていた。また求められると体が強張ったけれど、アベルは微笑みを浮かべる。

事後で色気を放つ美男子の微笑みなんて、本来ならば心が蕩けてしまうだろう。でも、私は彼の支配を受けている。日々行動は制限され、アベルの欲によっては夜遅くまで犯されるときもある。自由なんてない。まるで性奴隷のようで、それなのに愛しているように振る舞うなんて。


「・・・貴方の身勝手な愛なんて、いらないわ」


結局、拒絶してしまう。私はアベルを愛していないのに、愛を向けられても困るから。


「・・・」


抱擁は解かれて、私を見下ろす瞳は漆黒。ベッドサイドのランプすら灯っていない暗闇の中だから当然だけれど、彼の心を表すかのような色に見えた。


「あ、ぅっ!」


アベルが動き出す。動くことで私を嬲る。

怒らせた。でも、私だって怒っている。彼の愛に苦しんでいる。もう愛してほしいなど願っていないのに。


「君には、俺しかいないんだ。俺だけが、君を愛してる。いつになったら分かるんだ?君を愛しているのは俺だけだって、ああ、そうだ!分からせてやる!君は俺だけのものと分からせてやる!!」


うわ言のように言いながら私を責め立てる。

開放されるのはいつになるだろう。そんなことだけを考えて、湧き上がってくる快感に飲まれていった・・・───。






───・・・体が重い。

意識が覚醒してすぐに感じた。目を開けば、レースのカーテン越しに光が注いでいる。時間は・・・朝は過ぎているはず。起きなければ。

仰向けだった体をうつ伏せにして、ゆっくり起こそうとしても、力が入らずにベッドに落ちてしまう。股関節も軋むように痛いし、起き上がるなんてできない。

裸でシーツの上をもんどり打つ・・・どうしても起き上がれない。


「なんて、鬼畜な・・・」


忌々しく呟いても、私の苦しみの原因は寝室にいなかった。寝ていたと分かる窪みに手を乗せる。温もりは残っていない。アベルが去ってから時間は経っている。

私は裸のまま放置されていたけれど、体の汚れは拭き取られていたし、しっかりと厚手のブランケットをかけられていた。もんどり打っていた間に体から滑り落ちたけれど。

寝そべったまま鏡台を見れば、体は酷い有り様。肌に浮かぶ赤い跡は無数で、発疹のように全身に浮かんでいる。


「・・・執拗」


唇すら重いから単語の恨み言しか出ない。私は再び体を仰向けにすると、飾り彫りされた天蓋を眺めて目を閉じた。


アベルによるベルアダム制圧は、婿入りに際しての兵力配置とされた。フィガロ公爵家の次男への餞別として、王家が揃えた中隊。彼らは今後、ベルアダム侯爵領の武力として駐在することになる。王家の血を引く公爵家の子息と、その妻となる前侯爵を守るために。

夜間の奇襲であったから、領民達は目覚めたら兵士が増えていたという認識だったそうだ。特に反抗はなく、婿入りと知れば、最悪なことに素直に受け入れられた。私がやっと夫を迎えたと喜んだ人も少なくはない。

ベルアダムに元々いた守備兵や諜報員達も、反抗した者は拘束はされたけれど、新たな領主となったアベルが部隊編成と命じれば、応じずにはいられなかった。そのまま王家が用意した軍に吸収され、これからは肩を並べてベルアダムを守っていくそうだ。

アベルが私の夫になったから、皆は受け入れるしかなかった。私は庭園に作られた森の中で強姦された。純潔は散らされ、彼の精を受けたから、彼自身を受け入れなければならない。

婚姻届も、アベルが私の手を掴んで、抵抗虚しく強引に書かせられた。すぐさまリカルド国王陛下へと届けられ、僅か一日ほどで許可を得てしまった。名実ともに夫婦にされた。

私の爵位も譲渡されてアベルがベルアダム侯爵となっている。私は王命の通り侯爵夫人となった。

もう私には抵抗はできない。アベルが私を支配したから。


屋敷の使用人達も、執事のモリスンは隠居させられてしまったけれど、ほとんどが残されてアベルに従うことになった。フィガロ公爵が息子の為と、新たに手配した使用人達も迎えたことで、屋敷内の人員はかなり増えただろう。

私に仕える侍女も増えた。私に対してにこやかに対応して、私が逃げないように元々務めていた侍女達ごと監視している。


婚約破棄の際に支払った慰謝料は、フィガロ家から結婚祝いだと言われて倍額で返された。

私とアベルは、魔女の奸計で引き裂かれた恋人だと風潮されている。フィガロ家は婚約破棄の事実すら揉み消し、私達が隠れるようお互いを想い続けたという美談すら作り出した。

変わらず婚約状態だったという嘘で上塗りされ、私達は邪悪な魔女の死により念願叶って婚姻を結べたのだと、そういう稚拙な恋物語が作られてしまった。


私は怒っていいはずだ。王家とフィガロ家に虛偽だと抗議をして、アベルと増えた人員をベルアダムから追い出してもいいはずだ。

でも、それはできない。純粋に力のない私では、アベルを押し返せないから。夫という地位を得た男に好き放題されて、そのうち子供もできるだろう。


アベルは毎晩、何度も、私の体を求める。早く孕ませたいのだろう。子供ができれば、私は完全に逃げないと思っている。子供が楔になるはずだと。

領主として領民に向けた挙式は、子供が生まれてからと言われた。今の状態で挙式をすれば、私が様々な手管を使い、なりふり構わず逃げると思っているのだろう。


でも、私は最初から逃げられない。ベルアダムを捨てられないから、既に逃げ道なんて失っている。

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