表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】私の幸せ  作者: P太郎
本編
27/59

結婚しよう

私は、アベルを一番異常者に書きたかったのに、ナチュラルにサイコ行動した別の男性のせいで霞み、異常性よりも変態性が目立ってしまった。

なぜ、こうなった。

私の顔に、何かが触れている。頬を撫でて、鼻の頭に触れ、右頬の傷を、何が。

何も見えないのは目を閉ざしているから。寝ていたと気付いた私は左目をゆっくり開いた。眩しい・・・煌々と照らす照明が、片目だけしか開かないから、一点に光が降り注いで、アベル。

小さなシャンデリアの光を遮るように、アベルが顔を見せた。優しい笑みを作って、私を、の、覗き込んで。


「い、いやっ」


「ああ、駄目だよ。目が覚めたばかりなんだ。急に動いたら危ない」


優しい声で言って、優しくはない強い力で私の両肩を掴んだ。動かないように固定した。

アベルが、私の前に。アベルに捕まって。

息が上がっていく。胸が、心臓の鼓動が分かるほど強く脈打ってる。痛い、苦しい、怖い。アベルが怖い。私を捕まえに来た。ベルアダムを制圧して、私を捕まえに。


「はぁっ、はっ・・・はぁ、い、いやぁ」


「コルネリア、落ち着いて。過呼吸になりかけている・・・大丈夫、大丈夫だから」


優しく言っているけれど、嘘。嘘に決まっている。この男は私を、私を・・・離れ、ないと。


「さっ、さわら、ないで!」


「君は気が動転しているんだ。そんな状態の君を放ってはおけない」


「はなして!」


「駄目だよ、離したら君は逃げる」


にこやかに取り繕っていた顔は一瞬で表情を無くした。仄暗い海の底のような瞳で、アベルは私を覗き込んでいる。私を捕まえている。


「は、はぁ・・・ぁっ、はぁっ」


何とか、何とか離れなければ。この男は危険だ。私を殴る、ことはない。それは理解した。今は理解できている。でも、それよりも人前で、ご、強姦を示唆した男だ。離れないと、どんな目に遭わされるか。どうにかしないと。

ひたすら見つめてくる視線から逃げるように頭を回した。見えたのは古いデザインのローテーブル。その向こうにある濃灰色の布のソファ。私が寝ているものの手触りから、同じソファだと分かった。

ここは執務室だ。先程まで私がいたところ。諜報員達からの報告がなかったことに不安を覚えて、人を求めて退出した場所。そこに戻されている。執務机の前にあるソファに寢かされていると分かる。

寝かしたのは、アベルだろう。私は武力行使を受けた混乱と彼への恐怖で気絶をした。その前に見えたのはアベルの顔だから、アベルが私を回収して、執務室に戻した。


「・・・・」


置かれている状況に息を呑む。大変よろしくない。私はアベルの拘束を受けている。

れ、冷静に、冷静にならなければ。下手な行動をすれば、この男は牙を剥くはずだ。


「んっ」


感触に驚いて声を上げてしまう。ひたすら見つめてくるアベルが、私の首筋を指でなぞった。


「む、無断で触れるのをやめなさい、アベル・フィガロ公爵令息。私は触れていいと許可をした覚えはない」


「はぁ、君の肌はなんて滑らで綺麗なんだ。触れていて気持ちがいい。触り心地の良い肌をこんな薄着で隠しているだけなんて、俺を煽っているとしか思えない」


「触るなと言っています!」


鎖骨の下までなぞった手の指を勢いに任せて払った。彼の筋肉で厚い胸を両手で押し、離そうと力を加える。


「はな、れて!!」


「ははっ!か弱い力だ。そんなほっそりした腕で俺をどかせるとでも?ああ、顔を真っ赤にして・・・必死な顔も可愛いよ」


力一杯押しても微動だにしない。吐息混じりの不快な声で囁くアベルは、更に距離を詰めて私の腕を畳むように胸で潰し、私の顔に、顔の傷に唇を付けた。

唇を食むように動かして、僅かに吸い付く。


「止めて!!」


感触に肌が粟立った。吸い付かれた傷からゾクゾクと全身に走っていく。

それが気持ち悪くて大声を上げたけれど、アベルは笑っている。楽しそうに喉を鳴らして笑っていた。


「君の肌は甘いな」


「そんなわけがないっ!いいから、離れなさい!!」


覆い被されたことで上半身は全く動かない。膝でアベルの腰を何度も叩く。離れるように、離してもらうために叩き続ける。


「・・・俺は然程も痛くはないが、コルネリアの柔い体にはきつくないか?膝を痛めるよ」


「貴方が、離れるのなら!止める!」


言いながらも膝で叩く。手加減なんてしないから、打撃は私の膝に響いて痛みを感じ始める。


「君に怪我を負わせたいわけじゃない・・・分かった。離れよう」


腕ごと潰していた逞しい胸が離れていく。圧迫は私の肺も押していたから、解放されたことで酸素を取り込もうと大きく吸い込む。


「やぁ、ん」


身を離したアベルは、手で私の膝に触れて撫でた。内側から太ももにゆっくり撫で下ろす。スカートの上からだけれど、薄いから感触を強く感じて、情けない変な声を上げてしまった。


「・・・」


アベルは息を漏らすと、私を凝視する。海の底のような暗い瞳で私を見つめ続けて、体の線をなぞるように視線を動かした。

気持ち悪い。男性に見せるべきではないナイトドレス姿だから、不安で、彼が襲ってくるのではないかと思ってしまう。


「あ、貴方に聞きたいことがあります・・・話を、しましょう?私と対話をしてください」


「ああ、どこも柔らかそうだ・・・全部舐めしゃぶりたい」


ぼそぼそと呟いているけれど、小声だから聞こえなかった。読唇術も使えない私だから、アベルの囁きがどのようなものか分からない。

ソファから上体を上げて座り直す。私の目の前にいるアベルは全く動かずに、ずっと見下ろしている。

長身で体格の良い男から覗き込まれるのは、純粋に怖い。胸が締め付けられる感覚を与えられる。もし手を伸ばして私を抱き締めてきたら、先程のように身動ぎすらできなくなる。


「もう少し離れてください」


「・・・話ならこのままできるだろう?」


不安で胸に手を当てれば、アベルは舌で自分の唇を舐めた。これ以上、興奮させないようにしなければ。とにかく落ち着かせよう。


「貴方のような逞しい方に見下されると、こ、怖いのです。まともに話すことができなくなる。ですから、もう少し離れてください」


「・・・」


アベルは一歩下がって、行儀悪くもローテーブルに腰を下ろした。開いた足の上に腕を乗せて、ギラギラした目で私を見つめる。すぐに動ける体勢だ。少しでも刺激をすれば、私に飛びかかるだろう。

息を吐いた。ゆっくりと、早くなっている鼓動を落ち着かせるために。酸素を吸い込んで、また吐き出す。


「ベルアダムを制圧された理由はなんでしょう?私の治めるベルアダムは、王家から武力行使を受ける謂れなどないはずです。何故攻め入ったのか教えてください」


「・・・君が」


アベルは私を指で差すと、ゆっくり下げる。指で私の体をなぞるように。

怖気が走ったけれど、耐えた。顔には出さずに彼を見据える。


「反逆を示したからだ。国王陛下は君に反逆罪の疑いがあるからと、ベルアダムを制圧することにした。俺は陛下からベルアダム制圧戦の指揮官を任命されている。君を捕縛し、取り調べをする役目を賜ったんだ」


痛い。胸が、心臓が痛い。握り潰されそうな感覚を与えられる。

これはあり得ないことへの驚愕か、それとも異常に対する恐怖か・・・後者だろう。王家は、国王は、私をアベルに渡すために酷い冤罪を作り出した。私はずっと国に仕えているのに、反逆心などなくベルアダムのために奉仕していたのに。

これは私に対する裏切りだ。誠心誠意、シルヴァン王国に仕え、民のためだと職務を全うしていたのに。


「私は反逆など起こしておりません。このシルヴァン王国に仕えています。国に対する奉仕が巡り巡ってベルアダムを守ることに」


「王命である俺との結婚を拒否しただろう?立派な反逆行為だ」


「・・・は」


言葉は続けられなかった。確かに、確かにその通りだけれど、そんなことで反逆罪を受けるなんて、ベルアダムに侵攻するなんて、過剰な対応ではないのか。


「お、王命とはいえ、私には拒否する権利があるはずです。婚姻はべ、ベルアダム、の今後を左右する事柄。侯爵である私の意思すら蔑ろにするなど、王家の、リカルド国王陛下の采配には不安を抱かざるを得ません」


「反逆罪に加えて不敬罪か」


「っ・・・」


喉が引き攣った。

正論だ。アベルの言うことは間違いではない。王命に背き、国王陛下の陰口を言うなど、間違いなく罪だ。

でも、罪ではあるけれど、私は嫌だ。従えば、アベルと結婚をすることになる。傷付けられた恐怖は根強く、拒否反応が凄まじい。だから、アベルだけは嫌。アベルとは一緒にいることはできない。アベルは。


「ひっ!?」


いつの間にかアベルは距離を詰めていた。私の座るソファの背もたれに両手をかけて、私の体を囲う。覆い被さるように身を寄せて、顔を近付けていた。暗い瞳が私を見て、形の良い口が吊り上がっている。不気味な笑みを向けられていた。


「だが、今は審査の段階なんだ。君を捕縛するためにベルアダムを制圧したけど、犯罪者なのか見極めるのはこれから・・・コルネリア、俺を受け入れてくれたら罪に問われないんだ。俺は君を愛しているから罪人などにしたくはない。だから、王命に従って結婚しよう」


受け入れる、なんて。

無理、無理だ。こ、こんな、側にいるだけで息苦しく感じる男なんて無理だ。アベルは嫌。怖い。今だって無理強いだ。私を苦しめて、怖がらせて。嫌、絶対に嫌だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ