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君が幸せならそれでいい、なんて

作者: しろい

ずっと、そう思ってた。


「君が幸せなら、それでいいよ」


そう言って、微笑んで。

君が笑ってくれるなら、僕はそれで満足だった。

君が幸せでいてくれるならどれだけでも尽くそう、それでいいって、そう思ってた。


でも、最近の君は――なんだか冷たくなった。

理由はわからない。

LINEの返事も短くなったし、僕から誘わないと会うことも減った。


「最近さ、なんか…ちょっとよそよそしくない?」

気づかないふりは、もうできなかった。


「別に。気のせいじゃない?」

君はスマホから目を離さず、そう返してきた。


その瞬間、心の奥が少しひび割れた。


「ねえ、俺といて、楽しい?」


「楽しい時もあるよ。…まあ、疲れてるだけ」


“楽しい時もある”――

その言い方に、今の自分が君にとって“癒し”でも“特別”でもないことが透けて見えた。


「……ねえ、俺が君の彼氏であることで、君は幸せ?」


「……それ、どういう意味?」


「君が幸せになれるなら、俺はそれでいいと思ってた。でも…俺は君を幸せにできてるかな?」


「は?」

君が初めて俺の顔をしっかりと見た。


「君にとって、もう俺は君を幸せにできる存在じゃなくなってるんじゃないかって…

俺はただ君を縛っているだけなんじゃないかって…

そう思うんだよ」


「そんなこと、言ってないでしょ?」


「言ってなくても、態度で分かるよ」


君は口を開きかけたけど、何も言えなかった。


「……別れようか」


自分の口からその言葉が出るのを、どこか他人事のように感じていた。

でも、言ってしまった後の静けさが、あまりに真実だった。


「……え?」


「君が幸せならそれでいいよ。

けど俺じゃ、君を幸せにできない。

それが今、はっきりわかった。

君はきっと、俺以外の誰かと一緒のほうが、もっと笑えるんだと思う」


「ちょっと待ってよ、急に…」


「急じゃないよ。俺は、ずっと気づかないふりをしてただけ」


君は何か言おうとしたけど、また言葉に詰まった。

その沈黙が、答えだった。


「ありがとう。君が笑っていられるように、ずっと祈ってるよ」


最後まで優しくあろうとした。

でも心の中では、きっと泣き叫んでいた。


“君の幸せが一番”なんて、

本当は、

一番一緒に笑いたかったのは――俺だったんだ。


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