取り巻き令嬢に名前があるなんて知りませんでしたわ
うっ……くっ……これから、忙しくなりそう……
「はっ!?」
飛び起きるなんて経験、初めてした……!
「お嬢様! 大丈夫ですか!?」
誰!?
あ、メイド……
「また、うなされて飛び起きて……」
「だ、大丈夫……」
無理に笑ったせい?
メイドは心配した顔のまま固まってる。
そんな見つめてきて、私、何かおかしい?
あ、"ですわ" つけないと。
「ですわ。大丈夫ですわ」
ホッとしてくれた。
なんとか、切り抜けたですわね。
メイドは何事もなかったように汗を拭いてくれたり、お熱測ってくれたり、
「お水ちょうだい?」
「かしこまりました」
お水飲ませてくれたり。
これが――公爵令嬢。
ローズレッド……
「あの、わた、くし」
「はい」
「風邪を引いたのは……どうして?」
確認しておこう。
ただの風邪かもしれないからね!
「学園で水魔法を浴びてしまったからです」
「水魔法って、ウォーターストリームっていうA級魔法?」
「はい。水柱に巻き込まれて、お風邪と軽い打ち身を負われて治療いたしました。もう、お熱のほうは下がっております」
「そう、よかった……」
いや、よくなーい!!
ガチでヤバいですわよ! 前世に戻りたい!!
「お嬢様!?」
思わず、頭を抱えてしまった――
「まだ、お頭が痛むのですか!?」
「お医者様を!」
「だ、大丈夫ですわよ!」
平常心、平常心。
「もう熱もさがったし。なんともないですわ……ただ、ちょっと、一人にして。くださる?」
「――かしこまりました」
メイドたちは心配そうに出ていった。
「ふぅ……はぁ」
落ち着こう。
落ち着いたら、状況を整理。
私は公爵令嬢ローズレッド。王立魔法学園に通っている。容姿端麗文武両道成績優秀。学園カースト貴族カースト共にトップの令嬢。王太子スカイハート殿下の婚約者になると噂されている。
うん、とりあえずここまで。
次は前世の私。
平凡な会社員。休日には小説や乙女ゲームを楽しむ普通の人。
乙女ゲーム「ホワイトローズ〜運命の薔薇の色〜」をクリアしたところだった――そこで急に意識が遠のいて――
ゲームの内容を確認しよう。
ゲームのヒロインは男爵令嬢ミルクーナ。
学園で婚約者探しを始めた王太子スカイハートと恋をして結ばれる。
二人の仲を裂こうとする悪役令嬢がローズレッド。
従えている、とりまき令嬢たちを駆使してミルクーナに嫌がらせの数々を行い、それでもめげないミルクーナに業を煮やして強硬手段にでる。
ミルクーナを学園の裏庭に呼び出すと、
『下級令嬢のあなたなんかに、殿下は渡しませんわ』
冷酷な敵意を込めて告げてから、水魔法で自分自身を攻撃してミルクーナにやられたとスカイハートに訴える。
ここでも、とりまき令嬢たちが裏庭の見張りをしていたので目撃者はゼロ。
スカイハートは水魔法で攻撃を受けたローズレッドが――裏庭の上空まで立ちのぼる水柱に巻き込まれている彼女だけが――見える位置に誘導されていて誰が攻撃したかまではわからなかった。
スカイハートはとりあえずローズレッドの訴えを聞き入れミルクーナを屋敷に戻して軟禁した。
ローズレッドは水魔法のせいで風邪を引いてダウン。
起きたとこ。
終わりの始まり……ってこれね。
完璧だった公爵令嬢の日々が遠のいていく――
感傷に浸ってる場合じゃない!
ミルクーナにやられた! って訴えを取り下げに行かなきゃ!
早くそうしないと!
先を越されてしまう――とりまき令嬢たちに――
私に従ってきたはずの……
とりまき令嬢たちは私を裏切り、せっかく思惑通りミルクーナを処罰しようと決めたスカイハートにローズレッドが仕組んだことだと話してしまう。
『ローズレッド様はミルクーナ様が殿下の婚約者になるのを諦めさせるために嫌がらせをしてきました』
『挙げ句、ミルクーナ様が水魔法で攻撃してきたように見せかけて無実の罪を着せたのです』
『私たちはその手伝いをしてきました』
『お許しください』
告白を聞いたスカイハートは私を呼び出し本当かどうか確認を取る。
もちろん私は、
『何のことですの?』
しらばっくれる。気高い態度のまま。
ふてぶてしいともいう。
『ローズレッド、とりまき令嬢たちが証言しているんだぞ!』
スカイハートは詰め寄るが、
『あの子たちはミルクーナにそう証言するように脅されたんですわ』
もっともらしい言い逃れをするが、
『違います。私たちはローズレッド様に従ってきました』
とりまき令嬢からあっさり否定されてしまうと、
『スカイハート殿下、この令嬢たちの言うことを信じてはいけませんわ』
とりまき令嬢たちを簡単に切り捨てる。
今まで従えてきた仲間? でしょうが。
本当に信じられない仲だったの? 悲しくなるわ……
とりまき令嬢たちにも印象悪いよね。
『ローズレッド様、もう、あなたの言うことは聞けません』
『ローズレッド様……』
『もう観念してくださいませ』
『罪を認めて償ってください』
案の定、とりまき令嬢たちのほうからも突き離されてしまう。
『フン、偉そうに私に命令しないでちょうだい』
プライドを刺激されたローズレッドは怒り、
『そんなに言うなら、あなたたち。証拠を見せていただける? 私がやったという証拠を。それを見たら、罪を認めますわ』
断罪フラグ発生。
とりまき令嬢とスカイハートは困り。
ミルクーナを呼んでみる。
すると、
『私はローズレッド様を攻撃していません』
ミルクーナは罪を否定してから、
『私はあのA級水魔法は習得していないので使えません』
衝撃の発言でローズレッドを窮地に追い詰める。
『なんですって!?』
『ローズレッド様が使った、ウォーターストリーム。私は習得していません』
ミルクーナは重ねて証言して、
『そんなはずありませんわ。私は確かに、あなたのことを調べた報告書を見て――』
報告書という証拠出現。
とりまき令嬢たちが調べたミルクーナが使える魔法名が書いてある。
スカイハートが確かめると。
『報告書には、ウォーターストリームという魔法名はないな……ん? ウォータースクリームという魔法名ならあるが、まさか……』
ローズレッドの顔色が焦りに変わる。
『まさか! 私が! 魔法名を間違えたというの!?』
『どうやら、そのようだな』
『そんな、そんな……』
『さぁ、証拠は見せた。罪を認めるんだ。ローズレッド』
『私が……私が……こんなミスで……嫌あぁぁーー!!』
ローズレッドはスカイハート殿下の婚約者ミルクーナを苦しめた罰として牢獄送りとなり――ミルクーナの嘆願で一生はまぬがれたが――その後は屋敷に戻され幽閉生活となる。その高飛車で危険な美しさが衰えるまで……
『嫁入り先が……なかなか見つからんな。まさか、我が家の娘があんなことをするとは……』
ローズレッドと、とりまき令嬢たちの屋敷からは嘆きの声が聞こえた……
バッド・エンド
嫌あぁぁぁ―――!!
とりあえず、叫んでおかないとね……
落ち着いたら、対処法を考えるの!
えっと、どうすれば……
とりまき令嬢!!
そうだ。
全ては、あの子たちの裏切りから始まる断罪劇。
とりまき令嬢たちをなんとかしないと。
私の悪事を告白しに行かないように止めないと。
あの子たちだって、私の悪事を手伝った罪で修道院送りになってしまう。そんなの嫌だよね?
それを先に話してしまえば……
そうしよう。それで、仲間に引き込もう。
元々、私が従えてきた令嬢たちだし……信頼関係は無かったとしても……上下関係はあるし。
私の言うことは聞いてしまうんじゃない?
もう罪の意識にかられていて、もう私の言うことを聞くのは無理かしら?
お聞きなさい! って強めに出ればまだ……
反感買うかしら?
お願い〜! って優しめに出たほうがいいかも。
うん、そうしよう。
今の私にはそっちの方が自然に出来そうだし。
決まった!
「あの、メイドさん〜? いらっしゃる〜?」
どう呼べはいいんだろ?
これまでのローズレッドとしての記憶ないの!?
――あるのはわかるのに、一時的に飛んでるわ。
完璧な日々が遠のいて行く〜ってなった時だ。
こんな時に……!
「お嬢様、お呼びになりましたか?」
あっ、メイドが来てくれた!
「え、ええ。呼びましたわ」
「どうなさいました?」
「えっと、とりまき――」
とりまき令嬢たちを呼びたいんだけど――
とりまき令嬢って言えばいいのかしら?
「とりまき?」
あ、やっぱり、違うみたい……
「ほら……いつも、私と一緒にいる令嬢たち」
あぁって感じで、わかってくれたみたい。
「ヴァイオレット様、ルーナ様、ブルーベル様、オリーブ様ですね」
「はい?」
はい? って感じで、メイドも首かしげてしまった。
まずい……名前……
「あ、頭がまだハッキリしなくて〜! 忘れちゃったみたいですわ! みんなの名前! おほほ」
笑って誤魔化せるか!?
「まだ、お休みになったほうが!」
誤魔化せたみたい、凄く慌てだした。
「大丈夫。それより、みんなの名前何だったかしら? もう一度、言ってくださる?」
「はい。ヴァイオレット様、ルーナ様、ブルーベル様、オリーブ様です」
四人。ギリギリ覚えられそうですわ。
「ヴァイオレット、ルーナ、ブルーベル、オリーブね」
「はい」
「ありがとう」
メイドがビックリした。
お礼言ったから?
言われ慣れてないのね……これからは、お礼をきちんと言える令嬢になりますわよ……
それより、名前。
ヴァイオレット、ルーナ、ブルーベル、オリーブ。
覚えやすい……かな?
なんか聞いたことあるのばっかりだし。
凄く拘った名前じゃなくてよかった。
「お嬢様」
「え、何?」
考え込んでしまってた。
「今の四名様から、お加減はいかがでしょうか? と私のほうに伝達魔法でメッセージが届いております」
「伝達魔法?」
「お嬢様のほうにも届けてあるそうです。お持ちいたしましょうか?」
「お願い……?」
――勉強机から本を持ってきてくれた。
いかにも魔法書って感じの赤い革表紙の厚い本。
「持てますか?」
膝に乗せてくれたのを、両手で持つ。
「まだ、魔力を出せませんか?」
魔力……
出せるかな。
とりあえず、本持った手に力入れてみるか。
ぐっ――! と、青い光が出てきた――!
本が勝手に開いて、ページから出る青い光が浮かび上がって文字に変わっていく――読める。なになに?
ローズレッド様
お加減はいかがでしょうか?
お見舞い申し上げます〜!
ヴァイオレット
ヴァイオレットからの、お見舞いね……
ページが勝手にめくれた。
ローズレッド様
お加減はいかがでしょうか〜?
心配しております〜どうか、早く良くなりますように
ルーナ
ルーナから……ページがまた。
ローズレッド様
お風邪は大丈夫でしょうか〜?
お見舞い申し上げます〜!
ブルーベル
ブルーベルからも、またページが。
ローズレッド様
お加減はいかがでしょうか〜?
ご回復を心からお祈りいたしております!
オリーブ
みんな……
本が閉じられた。
「みんな、ありがとう」
良い子たちだ……
従えてるとか裏切るとか……てっきり冷めきった大人の関係なのかと思っていたら。
みんな、心配してくれているし。
それになんか "お見舞い申し上げます〜" なんて、ゆるふわ〜な感じのメッセージくれてるし。
優しめの良い子たちなのでは!?
「返信しなきゃね……」
えっと、どうやって?
「お、お願いできるかしら? まだ、魔法力がちょっと」
「かしこまりました」
メイドがするのを見ていよう。
「私の伝達魔法で、ご返信いたします」
ポケットから小さい本出した。
スマホみたいなもんかな?
私の本と同じように光りだして、開いた。
「ヴァイオレット様」
文字が浮かんでいく。
ちょっと覗いてよく見ると "伝達" "受取" とか文字が端のほうにある。あ、伝達を指でポチッとした。
「ローズレッド様より、ご伝言です――どのようなメッセージを送りますか?」
「あっ、そうですわね……お見舞いのメッセージありがとう。もう回復したから大丈夫ですわ……それから……大事な話がありから、すぐに会いに来てほしい」
言っちゃった。
「かしこまりました」
メイドは気にする風もなく、そのまま伝えてる……
このメイドも良い人そうだけど……メイドは私のしたこと知ってるの? 家族は?
「皆様に、お伝えいたしました」
「あ、ありがとう」
聞いてみるか。
「ねぇ、あなたは私がどうして風邪を引いたか、原因知ってる?」
「え、それは、学園で水魔法を浴びてしまったと聞いております。原因は調査中だと」
「調査中?」
「はい。スカイハート殿下が、お嬢様が寝込んでいらっしゃる間にですが、お見舞いにお越しくださった際にそうおっしゃられていました」
「スカイハート殿下が……この家の人、お父様たちも、そう聞いてるの?」
「はい。殿下にお任せするとおっしゃられていました」
「そう……」
家族も原因を知らない。
お家を巻き込む騒動にはまだなってないか。
このまま、私一人でなんとかしたい。
予定通り、とりまき令嬢たちを味方につけて……
「お嬢様、皆様から返信が来ました」
「そう」
丁度よかった。
「なんて?」
「皆様、すぐに、いらっしゃるそうです」
「そう、わかった」
来るか……
「このまま、お部屋にお迎えいたしますか? お着替えいたしますか?」
「そうね、着替えようかしら」
「かしこまりました。お風呂は念の為、控えておかれますか?」
「そうね、体拭く程度にしておきましょう」
「かしこまりました」
あ、寝間着でベッドにいたほうが――
病人らしくて、同情を引けたかな?
まぁ、いいか。仕方ない、着替えよう。
「お着替えをお持ちいたします。どのドレスになさいますか?」
「えっ、えっと、赤いの?」
ローズレッドだから、あるよね?
「どの赤いドレスになさいますか?」
あ、沢山あるんだ!?
「どれでもいいですわ」
「かしこまりました」
行きかけたメイドがテーブルの前で立ち止まった?
「こちらの薔薇が、殿下がお見舞いの際にくださったものです」
「そうなの――」
赤い薔薇が花瓶にいっぱい……
「綺麗ね、お礼を伝えなきゃ」
「また、お越しくださるそうです」
「そう、わかりましたわ」
メイドは出ていった。
一人になったうちに、また状況を整理しないと。
まずは、あの薔薇をくれた殿下……
あんな赤い薔薇を、お見舞いにくれるなんて。
少しは私に気持ちがあるのかしら?
私の訴えを聞いてミルクーナを処罰しようとするし。
それなら、このまま悪事を隠して被害者ヅラしていたほうが良いよね。いやいや、そんなの、良くないとはわかってるけど――
ウォーターストリームを自分に食らわせてまで――水柱に巻き込まれて上空にいく私をミルクーナはどんな気持ちで見てたんだろ? えぇ~!? って感じだよね。私なら笑いますわ――そうまでして殿下の婚約者になりたかった気持ちがね、ありますわ。まだ。
でも……上手くいかなかったら……
そうだ、隣国行こう!
悪役令嬢と隣国はもはやセットだからね。あるでしょ、隣国。そこで、一人でやり直そう。
魔法もあるし、手に職をつけて。
お客様の中に隣国の王子とかいて結ばれたりとかあるんじゃない?
それに期待しよう。あるある、きっとある。
そうとなれば、準備しておかなきゃ。
まずは、隣国に行って暮らすための資金ね。公爵家だから私のための結婚資金とか用意してくれてるでしょ、それを持っていこう。
あ、それから、私は、とりまき令嬢たちも連れて行かなきゃいけないかも……みんな食べさせていく気持ちで行こ。
味方になってくれたらね。
味方に、する前に、するために。
名前、覚えないと。
とりまき令嬢たちに名前があるなんて――
知りませんでしたわ。
ゲームの説明にも "とりまき令嬢たち" って、まとめて紹介されてたし。ゲーム内でも誰も名前呼んでなかったし。あ、でも、とりまき令嬢たちが私の指示を受ける画面と私の悪事を証言する画面では一人一人に名前があったような。
全然気にして見てなかった!!
今さら、画面思い出そうとしても遅いですわね。
聞いた名前を覚えなきゃ!
「えっと、ヴァイオレット、ルーナ、ブルーベリ、じゃなかった、ブルーベル」
ヤバいですわ、間違えた。
これ、とりまき令嬢たちの前でやらかしたら……
「名前も覚えてくれてないの? こんな人、放っといて行こ行こ〜」
って、見捨てられるかも!
待って! 違うの!
絶対、間違いは許されない!!
「えっと、ヴァイオレット、ルーナ、ブルーベル、オリーブ。ね、間違いない!」
それにしても、顔と名前を一致させなきゃ。
間違えたらヤバいですわよ。
写真ないかしら?
あ、勉強机に写真立てがある!
五人写ってる! やった!
真ん中は間違いなく、私ね。
両隣に二人つづ並んでるのが、とりまき令嬢たち――
みんな、制服着て、学園の門の前で。
こんなの飾ってるなんてやっぱり絆みたいなものがあるんじゃない? 裏切られた時、心の中で泣いてたんじゃない?
きっと、そうだ。信じよう!
それにしても、誰が誰?
落ち着くのよ、落ち着いて思い出すの!
「お嬢様、タオルとドレスをお持ちいたしました」
メイドたちが来てしまった。
とりあえず、写真立て持っていこ。
そうだ、聞いてみよう。
「この写真なんだけど、これが私で、これが」
右端から、
「ヴァイオレット様ですね」
「これが」
「ルーナ様です」
「これが」
「ブルーベル様です」
「じゃあ、これがオリーブね。はいはい、ありがと!」
凄く心配そうな顔された。
「お嬢様、お加減は本当に大丈夫でごさいますか? お熱でうなされてからというもの、ご自分が誰か、ここは公爵家か、どうして風邪を引いたかなど確認ばかりなさっていますが」
「大丈夫ですわ! ちょっとまだ頭がぼーっとしていただけで、最終確認ですわ!」
「そうですか」
納得してくれた
それじゃあ……
最終確認――着替えているうちにしよう。
まずは、とりまき令嬢、じゃなくて、ヴァイオレット、ルーナ、ブルーベル、オリーブを部屋に迎えたら愛想よく笑顔で――
「あ、みんなが座る椅子を用意しておいて」
「かしこまりました」
みんなが椅子に座ったら。
落ち着いて、これから起こることを話すの。
修道院の件をなるべく衝撃的にしたいけど……あ、私が牢獄送りになることも。かわいそう〜と思ってほしいな……当然ですわねって思われるかしら?
仕方ない。どっちにしても、インパクトはあるから先に言おう。修道院送りの前振りってやつね。
それと私が、なぜそれを知ってるか突っ込まれるかもしれないから、えっと、正直に話すべきか――あ、夢で見たって言おう。信じなさい! ってここはゴリ押ししようかな。
とにかく信じさせて後は、みんなが悪事の告白をしに行かない選択をしてくれたらいいんだけど。
それで、水魔法を浴びたのは何かの事故だったんです〜みたいに有耶無耶にできたらいいんだけど。
もし、
「ローズレッド様も悪事を告白しに行って、綺麗になりましょう」
みたいな説得してきたらどうしよう?
あり得る。
とりまき令嬢たちは自分たちから悪事を告白しに行く良い子たちだもんね。その時は大人しく従おう。
悪役令嬢から卒業して綺麗になりたいし。
ミルクーナ、ミルクーナ様にも謝りたいし。
それで、殿下にも全部話して……
断罪されそうになったら隣国に逃亡だ。
よし、着替えも終わった。
後は、みんなが来るのを待つだけ……
写真の中のみんな笑顔。また、こんな風になれるといいな……
ヴァイオレット、ルーナ、ブルーベル、オリーブ。
もう、間違えないと思うけど。
まだ、ちょっと、実際見たら焦るかも。
凡ミスで断罪行きになってるし私、自信ない。
どうしよ。
そうだ――!
名前がわからないなら、呼ばなければいいじゃない
今みたいに、みんな〜って。
ローズレッドらしく、あなたたちって。
まとめて呼べばいいじゃない!
気持ち的には一人一人呼びたいけどね……それに、呼ばなきゃいけない瞬間もあるでしょうし。
どうすれば――
「お嬢様、皆様の馬車が到着いたしました」
もう来た――!?
メイドが窓を見てる。
窓から見えそう?
あ、降りてきた――!
私の勝ちですわ――!!
「ねぇ、あの紫色のドレスが?」
「ヴァイオレット様です」
やっぱり!
ヴァイオレットって、スミレのことよね。スミレ色、紫色――
「黄色のドレスが?」
「ルーナ様です」
ルーナって、ルナ、月よね。
月の黄色か。なんか、ロマンチックね。
「青いドレスが?」
「ブルーベル様です」
まんまね。助かった。
「緑のドレスが?」
「オリーブ様です」
オリーブオイルの容器も緑色だしね、納得。
「皆様のドレスの色、お嬢様が決められたのですよ」
「そうなの、いえ、そうでしたわね」
私、グッジョブですわ。
紫のドレス――ヴァイオレット
黄色のドレス――ルーナ
青いドレス――ブルーベル
緑のドレス――オリーブ
これは間違えない。
ローズレッドの私が赤いドレスの時点で気づくべきでしたわね……それにしても。
安心感が胸に広がっていく。
きっと、全て上手くいく――そんな確信も。
私たちは、ハッピーエンドになりますわ!!
最後まで読んでくださりありがとうございました!
続きが気になる方は上のシリーズから「とりまき令嬢たちの困惑と幸せ」へどうぞ!
もう読んでくださっている読者さま、ありがとうございます!