第1話 静かな日常の中で
町の古びた本屋「星の書房」は、今日も静かにその扉を開いていた。日が傾き始めた夕方、佐藤花は学校帰りにふらりとその店に立ち寄った。
「いらっしゃい、花ちゃん。今日も寄ってくれてありがとうね。」本屋の店主である穂積さんが、優しい笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは、穂積さん。今日は新しい本を探しに来たんですけど、何かおすすめありますか?」
穂積さんは花の言葉に頷きながら、カウンターの奥にある本棚を指差した。「あの棚の右下に、新しく入った本があるんだ。ちょっと古めのものだけど、面白いかもしれないよ。」
「ありがとうございます。見てみますね。」
花は穂積さんにお礼を言って、店内を見渡しながら本棚へと向かった。木の床が軋む音が、店内の静寂を一層際立たせる。右下の棚には、確かに古びた本が並んでいた。
「どれにしようかな…」花はつぶやきながら、ひとつひとつ手に取ってみた。その中で、ひと際古びた表紙の本が目に留まった。表紙には星空が描かれており、タイトルは『星の導き』と書かれている。
「これ、面白そうかも。」花は本を手に取り、表紙をなぞるように触れた。
「その本、気に入ったかい?」穂積さんが花の様子を見て声をかけてきた。
「ええ、なんだか引かれるものがあります。この本、どういう内容なんでしょう?」
穂積さんは少し考え込んでから、「その本はね、古い伝説やおとぎ話が詰まっているんだ。特に星に関する物語が多くて、読むと星の力を感じられると言われているよ。」と答えた。
「星の力…ですか。なんだかロマンチックですね。」花は微笑みながら、本のページをめくってみた。古びた紙の香りが鼻をくすぐる。
「そうだね。星の伝説はこの町にもたくさん残っている。特に星祭りの夜には、流れ星が降るって言われているんだよ。」
「星祭りの夜…確か、来週ですね。私、今年も楽しみにしてるんです。」
「そうか、花ちゃんも楽しみにしているんだね。星祭りの夜には、きっと何か素敵なことが起こるかもしれないよ。」
穂積さんの言葉に、花は心が躍るのを感じた。「そうだといいな…この本、買います。」
「ありがとう。きっと楽しんで読んでくれると思うよ。」穂積さんは本を包みながら、「何かあったら、いつでも相談に来てね。」と優しく言った。
「はい、ありがとうございます。」花は笑顔で本を受け取り、店を出た。夕陽が町をオレンジ色に染めている。花は本を大切に抱えながら、家路を急いだ。
「おばあちゃん、ただいま。」玄関を開けて声をかけると、祖母の優しい声が返ってきた。
「おかえり、花。今日はいい本が見つかったかい?」
「はい、ちょっと古いけど、星に関する伝説が書かれた本を見つけました。読んでみるのが楽しみです。」
「それは良かったね。星の伝説は面白い話が多いからね。ゆっくり読んで楽しんでおいで。」
「ありがとう、おばあちゃん。早速、読んでみます。」花は自分の部屋に入り、ベッドに腰掛けて本を開いた。古い文字で書かれた物語が、次々と目に飛び込んでくる。
「星の力…本当にそんなものがあるのかな。」花は夢見心地でページをめくり続けた。
その夜、花は本に書かれた伝説に思いを馳せながら、眠りについた。彼女はまだ知らない。これから始まる、不思議な出来事の幕開けを。
はじめまして、九条です。
第1話如何だったでしょうか?
もしよろしければ、ご感想のほうを頂けるとモチベーションに繋がります!よろしくお願いします!