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ショートショート6月〜5回目

作者: たかさば
掲載日:2024/06/22

…近所にある小さな小学校には、正門横のあたりに、一本の桜の木が植えられている。


春先になると薄桃色の花が咲き、通りかかる人々を和ませている。

タイミングが合えば、入学式の時に咲き誇り、彩を添えている。


桜の木は、ネットフェンスのすぐ近くで生えている。


おそらく…、植えた場所が、悪かったのだ。

幹の一部が、ひし形金網から飛び出している。


切った枝の先のひとつが金網の枠の中に伸びて、成長したらしい。

不格好に枝の先が膨らんで、はみ出した部分が…おかしな形になっている。


「なんかネズミがいるみたい!!」


時折、子供たちのはしゃぐ声が聞こえた。


遠目で見れば、木の幹には…見えない。

近くで見ても、ネズミのように見えた。


……木のでっぱりは、どんどん大きくなっていく。


ひし形金網の一つの枠からはみ出して、周りの枠まで巻き込みはじめた。

これはいわゆる…物質を巻き込んで成長してしまったということなのか。


「ねえねえ、なんか猫に見えない?」


時折、子供たちの声が聞こえた。


大きくなったでっぱりは、遠目に見ると木の幹には見えない。

近くで見れば、猫のような形をした木ではあった。


……木のでっぱりは、どんどん大きくなっていく。


ひし形金網を取り込んで、一体化している。

もう…フェンスと木を切り離すことは難しそうだ。


「すごい、じゃれてる大型犬みたいだ」


時折、大人たちの驚く声が聞こえた。


大きくなったでっぱりは、遠目で見ると木の塊には見えない。

近くで見れば、ごつごつとした木の表面だとわかるのだが。


……木のでっぱりは、どんどん大きくなっていく。


すっかりフェンスを飲みこんで、まるで最初からそういう造形物であったかのように佇んでいる。

もはや…芸術作品と言ってもいい風貌だ。


「ゴリラが、いる…」


たまに、老人のささやく声が聞こえた。


大きくなったでっぱりは、遠目で見ても異様だ。

近くで見ても、やっぱり異様だ。


……木のでっぱりは、どんどん大きくなっていく。


すっかりフェンスが朽ちてしまったというのに、凛々しく己の姿を誇っている。

どこにも…木と鉄の融合を確認できる部分は見当たらない。


「まるで恐竜だな……」


思わず、呟いてしまった。


大きくなったでっぱりは、遠目で見ても目立つ存在だ。

近くで見ると、神々しさすら感じる。


木の生命力というのは…素晴らしいな。


体内に異物を取り込んでもなお、己の成長を止めないとは。

ここまで、大きく成長することができるとは。


きっと、これから先も……どんどん、大きくなっていくのだろう。


本当に……恐れいる。

正直なところ、木の生態を…なめていた。


……どこまで大きくなるのか、気になるところではあるが。


人のいない星には、少々…飽きてしまったのでね。


「大きく、なれよ」


私は、ものを言わぬ大木を、荒れ地に残したまま。


宇宙へと、旅だったのだった。

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