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第9章 移動

第4ドックは、休息室から歩いて10分ぐらいかかった。

相変わらず金内は怒っていて、俺が話しかけても一切答えようとしなかった。

「王女殿下、皇女殿下、議員閣下」

船の扉の所で、2人の歩哨が敬礼して出迎えた。

「御苦労である」

王女と皇女はすぐに2人に答礼をした。

俺たちは、一瞬判断に迷って、しようとしたときにはすでに船の中に入っていた。

「すでに説明をしているように、二人の精神が交換状態にある。速やかに対処願いたい」

「了解いたしました。準備は完了しております。いつでも装置を作動することは可能です。どうか、こちらへ」

歩哨の一人が俺たちを船の中へ案内する。

もう一人は、船の外で見張りを続けていた。


俺たちが歩いていくと、すれ違う人全員が、額に手をつけ敬礼をした。

一つの部屋の前で立ち止まると、こちらに振り返り教えてくれた。

「こちらです。どうぞお入りください」

かかとを90度に合わせて、こちらに敬礼をした。

「大義である」

さすがは王女といった感じで、気品あふれる風格を漂わせて部屋へ入った。


部屋の中は、ヘッドセットが2組、ブラックボックスのような機械につながっていた。

「王女殿下、先に来て下さることが分かっておりましたら、よりよい歓待ができましたのに」

「気にするでない。急に起こったことについて、何も言うつもりはない。それで…」

「ええ、精神交換した方がいらっしゃるというお話を伺いまして、あわてて準備をしておりました。どうか、こちらへ…」

俺と金内を前に歩かせて、機械の前まで連れてきた。

「こちらの議員閣下方ですか」

「そうだ。よろしく頼む」

「わかりました。では、このヘッドセットをかぶってください。そして、そちらにあります椅子にお座りください」

俺たちは、機械を挟んで左右に座った。

「動かないでください」

かぶると同時に、そう言われた。

「目をつむってください、あなた方は、これからあなた方の主観時間で一瞬の間、意識が飛ぶことになります。よろしいですか」

「はい、よろしくお願いします」

俺が言うと、白衣の人はうなづいて、機械についている赤色のスイッチを押した。

一瞬で目の前が暗くなる。

だが、同時に明るくもなった。

「ん…」

目をあけると、さっきと視界の向きが違っていた。

「動けますか?」

ヘッドセットをはずしてもらいながら、俺は立ち上がってみた。

すこしふらついているが、すぐに治りそうだ。

「大丈夫ですね」

「それはとても良かったです。では、皆様、そろそろ船も出発いたしますので…」

ここまで案内してくれた人とは違う服の人が、俺たちを待っていた。

「船長代理のカワール・ガナッシュです。よろしくお願いします」

「こちらこそ、お世話になります」

俺は、彼に一礼した。

「それでは、客室へご案内いたします。王女殿下は、艦橋へいらっしゃってください」

「規則だからな」

「どういうこと?」

金内が、王女に聞いた。

「上級権者がいる場合は、船長といえども、その指示を仰ぎ、命令に背いてはいけないということになっている。今の場合なら、私がこの船の中で最上級権者となるため、私が艦橋に行かなければ、船は動かすことしかできないのだ」

「私は?」

皇女が王女に聞く。

「イルネス王室および、イルネス国籍を有するものという意味合いですので、皇女殿下は、イルネス国軍を指揮する立場ではないのです」

「仕方がないわね」

「では、王女殿下は直接艦橋へ。皇女殿下、議員各位におかれましては、当方で部屋をご用意させていだたきました。こちらへ来てください」

カワーナが俺たちを、複雑な構造の船の中を案内してくれた。


「こちらで、お待ち下さい。すぐに出発いたします。キアの方々は、こちらへいらして下さい」

カワーナは、俺たちを部屋の中に入れてから、一礼をして退出し、キア一族の3人を別室へ案内した。

部屋の中は、質素ながらも生活する分には全く支障がない部屋になっていた。

「ここから、イルネス王室の星までどれくらいかかるんだろうね」

すぐにダブルベットを確保した金内が、俺に聞く。

「4時間っていうところね。寝ている暇もあまりないわよ」

皇女が、俺たちの質問に答えた。

「4時間っていうことは…どれぐらい離れてるんだ?」

「300万AU[天文単位]ぐらいかしら、これは軍艦だから、動きがゆっくりなのよ。通常の旅客船だったら、2時間かからずに到達する距離ね」

「速いねー。さすがに、私たちのところとは違う」

金内が、皇女の話を聞いているのかいないのかわからないが、布団にもぐりだした。

「寝るのか」

「うん、4時間ぐらいだったら、十分に休憩は出来るから」

それから、おやすみ~と俺に手を振ってすぐに寝息を立て出した。

「まあ、こんなやつなんで」

俺は苦笑いをしながら皇女たちを見たが、彼女たちはなぜか微笑んでいるだけだった。


船内放送がかかって、船が出発することが分かった。

だが、そのあとは、振動が来ない。

「もう動き始めてるよ」

皇女が、食料棚にあった紅茶のティーパックを、煮たせたお湯に投入している。

淡い香りが、ほとんど対角線上の端にいる俺のところまで来た。

「これは、アッサムね。いい香りだわ」

皇女が、香りだけで品種を言い当てた。

「アッサムって、地球の品種ですよね。知ってるんですか?」

「ええ、宇宙中のお茶の品種は覚えてるわよ」

「だから、地球の物も分かるんですね」

俺は、そんなかんじで皇女と談笑していた。


4時間ほど経つと、ごくわずかに足元が振動した。

「到着したようね」

皇女が読んでいた本をしおりを挟み閉じ、立ち上がった。

俺は、横で寝ていた金内を起こし、皇女に続いて立ち上がった。

それと同時に、部屋の扉が開き、通路には敬礼している船長代理のカワールが待っている。

「お待たせいたしました。本船は無事に第797号恒星系第4惑星へ到着いたしました。これより、晩餐会を予定しております。ご出席のほど、よろしくお願いいたします」

「本国は?」

皇女が俺のカバンに本を入れてくる。

「非公式訪問という形で、了解をとっております」

「じゃあいいわ」

皇女がカワールと言葉を交わすと、俺たちと一緒に、船外へ出た。

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