表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/35

第5章 いよいよ

30分がまるまる過ぎたころ、カチャリと鍵が開く音が聞こえた。

「王女殿下はこちらですか」

入ってきたのは俺とよく似た人だった。

「お前はだれだ」

「技術部で主任技術士をしているアクトと申します。今は外に誰もいません。出るなら今です」

鍵を投げて渡してくる。

「アクトか、いったいなぜこのようなことをするんだ。彼らにばれたら間違いなく殺されるだろう」

彼らとは、もちろん宇宙革命軍のことである。

「彼らは大丈夫です。今は眠らせているので。催眠ガスをまくのは大変でしたが、終わってしまえばこちらのものです」

「なるほどな、眠らせたということか」

ジハールがアクトを上から下までじろじろと見回すと、満足そうに鼻を鳴らして一歩下がった。

「周りの人たちの協力も必要です。どこにいるかわかりませんか」

「探そうと思っていたところなんです。この建物自体の構造は分かっているので、閉じ込められそうな場所はおのずとわかります。しかし、情報が少なすぎて、絞りこめたといっても数万室程度ですが」

「この建物全体で十数万部屋があることを考えると、十分絞りこめた方ですよ。とにかく、ここから速く移動しましょう。私は鍵を持ってるので、ほかの部屋を順次見回っていきます。あなた方はどうされますか」

アクトは王女からいろいろな話を聞きながら、どこにいそうか目測をつけているようだった。

「大会議場1階の演題で私たちは全員集合する予定にしています。アクトさんも、皆さんを大会議室へ集めてください。そこで今後の対策を練りましょう」

「分かりました」

王女からそう言われると、最敬礼をしてからアクトは開けっぱなしのドアから外へ出ようとした。

だが、途中で俺達の方へ向き直り、銀色に光る何かを2つ投げ渡した。

「この建物全部に共通する"マザーキー"です。それがあれば、どんな扉でもドアでもすぐに開けることができます」

「感謝する」

「いえいえ、こちらにできるのはそれぐらいなので、では御達者で」

そういうと、すぐに部屋から飛び出し、走る音だけを残して姿を消した。

「我々も急ごう。薬の効力が消えるのは約30分らしい」

ジハールが全員に伝える。

「では先ほど分けたチームで行こう。私とジハールは右から、君たちは左から進んでくれ。くれぐれも死ぬなよ」

「了解しました、王女」

様とつけようとするのを、ぐっとこらえる。

何故かわからないが、敬称をつけるのをはばかれるような雰囲気だった。

王女と金内がハイタッチを交わしてから廊下へ出て行き、左右に分かれて歩きだした。


俺たちの班は、順次下へ向かいながら、ほとんど最短コースで議場へ向かうという方針を取っていたから、さっさと進んでいた。

通っている間に目についた扉は片っ端から開けて行き、議員がいれば救出し、誰もいなければ無視をした。


道を半ばまで来た時、目の前から銀河革命軍と書かれた服を着た人たちがこちらに向かっているのと鉢合わせした。

「貴様らっ!」

相手が銃を構えるよりも早く、金内の眼が妖しく光る。

刹那、俺が知覚するよりも速く動いた。

腰から折りたたみナイフを取り出し、相手の首筋へ的確にさすっていく。

うっすらと赤く滲んだと思うと、噴水のように血が噴き出してくる。

すでにその時点で残り1人にまで迫っていた。

少し離れたところから見ている俺達からすれば、スローモーションを見ているようだった。

次々と首の頸動脈を切られていくその姿は、言語に表されないものがあった。


ドサッと血だまりに沈みゆく6人の兵士を見下ろして、金内は吐き捨てた。

「またしなきゃならなかった……」

悔しがるような顔つきを一瞬だけ見せたが、すぐにいつも通りの金内になった。

「先に進みましょ。今は早く王女たちと合流しないと」

「ああ、分かった」

金内の妙技に放心状態になっていた俺たちだったが、その言葉で我に返り、あわてて血まみれの死体をまたぎ、金内の後ろをついて走り出した。


1階下のところに会議室の入口があるというところで、部屋の扉を開けたら中に誰かが縮こまっていた。

だが、部屋の中は薄暗く、顔や体はあまりはっきりとわからなかった。

「誰?」

俺たちと同じかもう少し幼いような声が聞こえてくる。

「日本から来た者だ」

「10大帝国の?」

「そうだよ」

俺たちの声を聞いた時に、安心したような声を出した。

それと同時に、俺たちのところへ歩いてきた。

「あなたは?」

「ウルダン帝国第1皇女、サクルージョよ」

「俺たちは、右から順に日本族の金内愛美、天栄英資。キア族のフィール・キアとカール・キアだ」

そういうと、フィールが俺に耳打ちしてきた。

「相手は皇女殿下だぞ、そんな口調で許されるのか?」

「うふふ」

俺が見るとサルクージョは笑っていた。

「別にかまわないわよ。でも、本当なら不敬罪でそのまま極刑よ」

「だとさ。とりあえず、連れて行こう」

「どこに?」

「イルネス王女と合流することになっている議会1階の演台部分だよ」

俺が彼女を背負い、荷物を金内とフィールに任せて、急いで議事堂の中に入った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ