第32章 居残り
その週の土曜日。
心配だからという俺を置いて、金内は小母さんと一緒に旅立って行った。
残された俺は、皇女と王女を連れて、家にいた。
「……大丈夫だろうか」
俺がつぶやいていた声を、王女が聞いていた。
「大丈夫でしょ」
軽く答えている王女は、俺の部屋の片隅に積み上げてあった漫画雑誌を、ベッドに寝そべりながら読んでいる。
「大丈夫かな」
「大丈夫」
今度のつぶやきは、皇女が答えた。
その二人の話だけで、俺はなぜかホッとできる。
それは、二人の気持ちが、すでに確信しているからだろう。
金内は、大丈夫だと。
電話がかかってきたのは、それからしばらくしてからだった。
「金内か!」
電話番号を確認して、金内からだと分かると、すぐに出る。
「先輩?」
「金内か、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。問題無し」
とはいっても、電話代がかさむから、あまり長い間は話していられない。
「詳しくは、先輩の家に行ってから話すね」
後ろで、小母さんの声と、誰か知らない人の声が聞こえてくる。
「分かった。王女と皇女もいるから」
「あ、行かないと。じゃあね」
金内が電話を切り、そして、ツーツーという音だけが、俺の耳に残った。