第25章 部屋の中
「どうしたんだ」
「先輩…」
部屋に入ると、金内は泣いていた。
「どうしたんだ」
俺は部屋に入り、金内を見ながら、後ろ手にしてドアをゆっくりと閉める。
「私が、人じゃないと聞いても、先輩は、優しくしてくれた。それが嬉しくて……」
「言ってるだろ。俺は金内が好きになったんだから、それがどんな金内だって受け入れてやるって」
「言いましたけど…」
「だろ、俺は嘘付いたことあるか?」
「…いっぱい?」
「ないだろ」
俺は金内が座っている椅子の前にあるベッドへ腰かける。
冷たいベッドだ。
「別にさ、金内はそのままでいいんだよ」
うつむいている金内に、俺は言葉をかける。
「俺はそんな金内に恋したんだから」
立ちあがって、金内を椅子ごと抱きしめる。
何も言わずに、金内は静かに俺の腕の中で泣き続けていた。
「…大丈夫、もう大丈夫ですから」
「そっか」
それを聞いて、やっと放す。
金内が自身で顔を拭って、俺に元気な、いつもの顔を向けた。
「ええ、大丈夫です。私は、もう迷いません」
「それでこそ、いつもの金内だよ」
やっといつも通りになって、俺は安心した。
「それで、王女はどこ行ったんだい」
「庭で、草木に水やり中。初めてだから、楽しそうにしてますよ」
ほらと言われて、窓から外を見ると、緑色のホースを持ちながら、楽しげに水をまいている王女の姿が見えた。
「…確かに楽しそうだ」
俺はそう言った。