第22章 金内の母親
1時間ほどすると、窓に降りていたブラインドもあげられた。
すぐに、機内放送がかかる。
「本機は、まもなく日本皇国領内、神戸宇宙港へ着陸します。現地の住民は宇宙からの物体に慣れていないため、滑空着陸となります。衝撃に備えてください。なお、リクライニングは戻し、シートベルトを着用してください」
久しぶりに、俺たちは地元へ帰ってきた。
その気持ちだけで、胸がいっぱいだ。
着陸する時は、飛行機とまったく同じように着陸したようだ。
窓から外を見ると、滑走路がすでに目の前にあった。
「神戸宇宙港です。なお、本機は第3拡張地域へ着陸しており、プライベートジェットのため、独自の格納庫へ停機します。そのため、三宮まではバスをチャーターしておりますので、そちらへお乗り換えください」
「俺らはどうする」
体を押し付ける重力もなくなって、勝手にシートベルトを外そうとする金内を止めながら、俺は金内に聞いてみた。
「お母さんへ会いに行く。王女も皇女も来てくれるよね」
俺は二人の方を見たが、皇女はまだ眠っていた。
王女だけは、金内にうなづいて見せていた。
皇女を起こし、俺が背負いながら、バスには乗らずにポートライナーを使ってJR線から家へと戻る。
その最中で、金内がどこかへ電話をするために、俺らから1分ほど遠くの公衆電話を使っていた。
「俺の母さんも心配してるだろうな…」
「1週間以上行方不明になってたわけですからね。心配してても仕方ないですよ」
金内と一緒に電車に乗り込みながら、俺は今のところ空いている電車内で、4人がけの椅子ですぐ横に皇女を座らせ、すぐ目の前に金内が、金内の横に王女が座っていた。
「それでさ」
俺は、金内に聞いた。
「何を聞くつもりなんだ。お前の小母さんと出会ってみて」
「…わからない。でも、多分自然に言葉は出てくると思う。私の思いのままに」
そうかと、俺は言おうとしたが、結局、何も言えなかった。
それから、誰一人として声を出さず、たまに皇女がビクッとしているのを見て、俺の膝に乗せてやるぐらいで、目的地へと着いた。
大阪につくと、金内が中央口へと降りる。
俺たちは金内を追いかけた。
中央口の改札を抜けると、そこには、金内の両親と、俺の両親が待っていた。
「ああよかった。心配したわよ」
ホッとした表情で、母さんが俺を抱きしめてくる。
小学生とかだといいと思うけど、俺ぐらいの年齢だと、ただただ恥かしいだけだ。
父さんも横で怒っているような、安心しているような顔だ。
俺は両親といろいろ話しているうちに、金内もなにか話したらしい。
何を話しているのかはよく聞こえなかった。
それから、俺は両親に王女と皇女について説明をした。
宇宙会議とか何とかについてはすべて伏せて、王女たちについては外国の友人ということにした。
知り合う場所は、あちこちにある。
そのあたりは省略することにして、適当にぼやかせた。
両親にそのことを言ってから、次は金内の話を聞いていた。
「…それで、お母さん。きいた話なんだけど……」
「それをここで聞くのはまずいでしょうね」
小母さんは、笑顔でそういった。
俺たちは、それから一旦家に帰ることにした。
金内には、翌日聞く事にしたが、王女は心配だからということで、金内の家に泊ることになった。
皇女は俺に背負われていたから、そのまま家へと入った。