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第2章 銀河中央会議

議事が行われる会場は、待合室から数分歩いたところに正門があった。

ただ、俺たちはその絢爛豪華な正門からは入らずに、ロボットが誘導した1階上がったところにあるやっとすれ違えるほど狭い門を開けた。

「広っ」

金内は、全体を見たとたんに、一言つぶやいた。

3分の2周ほどしている円柱の中に、所狭しとボックス席が詰め込まれている。

3分の1ぐらいは直線になっており、雛段がもうけられていた。

「あそこに、各大臣など、政府の高官たちがずらっと並ぶんだ」

王女が説明したところには、2列になったパイプいすのようなものが置かれていた。

下の正門からは、まっすぐに赤じゅうたんが雛段へと向かって敷かれていて、一般人は立ち入れないように柵までしていた。

「そこまでする必要があるのかな……」

俺がぼやいていると、王女が俺にいってくる。

「43人」

「え?」

「この500年間で手段を問わず殺された現職の銀河中央政府総理大臣の人数。さまざまな特権がある一方で、内政のすべての責任もかぶることになる。もちろん、テロリストたちも総理大臣を狙うということよ」

何か聞こえたような気もしたが、気のせいだとして片付けた。

それは、もっと増えるような気がするという音のような気がしていたからだ。

「それで、一つ聞きたいんだけど…」

「どうしたの」

金内が王女が座る、玉座のような感じのイスのすぐ横に座る。

一般人である俺らが座るのはパイプいすと思いきや、なんと、王女と同じ椅子だった。

「私たちって、なんで普通に話せるの?言葉が違うはずでしょ」

王女が一瞬驚いたような顔をしてから、あきれ顔で話しだす。

「ここに来るまでの間に聞いていなかったのか。ここに連れてこられた時点で、頭の中に特殊なインプラントが埋め込まれる。相手との言語はそのインプラントを通して母国語として理解することができるんだ」

溜息を時折交ぜながら、王女は金内に言った。

自分の頭を撫でくりしながら、金内が王女に聞いてみる。

「じゃあ、私の頭の中にも……」

「当然、あるわよ。もちろん、私の頭の中にもね」

額のあたりを指さしながら、王女が俺にも向かって言った。

「別に、俺はどうとも思ってないさ」

「そう?」

「そうさ」

そっけなく言ったが、心の中では頭の中を勝手にいじくられたという気持ちによる怒りが、ずっと胸の中を取り巻いていた。

「そうそう、俺も聞いておきたいんだが」

「なに」

王女が完全に腰を落ち着かせたのを見てから、俺も椅子に座る。

「王位継承権って第何位なんだ。それに、この議会って何人ぐらい集まってくるんだよ」

続々とそれぞれのブース1つにつき、2〜3人が集まっていた。

「私の王位継承権は、第2位になるわ。長女ではあるけど、2つ上に兄がいるからね。長子優先の原則っていうのがあって、それに従えば私は2位になるの。ただ、兄に何かあれば、私が1位ね」

王女はそこまで淀みなく話したが、それから数秒間、議場の騒がしさすら聞こえないような静寂があった。

「議員だけでも、1千人はいるわね。一つの惑星につき大体1〜2人になるから、約500の惑星が加盟していることになるね」

「いわゆる知的生命体といわれる種族がいるのを確認されている惑星って、500じゃ済まないだろ」

「任意加盟だからね。確認されてるだけでいいんだったら、4000近くあったはずよ」

確かに、そんなことを言っていたような気もするが、気にしないことにした。


「静粛にお願いします」

ざわざわしている空気を一瞬で引き締めた。

法服のような黒い服を着ている人が、ひな壇の上にいた。

彼は、白髪交じりの頭をしていながら、老人というような感じではなく、むしろ漲るエネルギーを感じるほどだ。

「ただいまより第1820回、宇宙中央会議全体会合を開会します。開会に先立ちまして、宇宙全体評議会会長より、御言葉を頂戴したいと思います」

若者が、演台へと登り紙でできたものを懐から取り出し、広げて読みだした。

その間、全員が立ち上がり拝聴していた。


日本の国会の時、天皇陛下がお言葉を述べられるのと同じような内容をおっしゃられると、即座に黒スーツの人たちに囲まれて退席した。

同時に着席し、さらに閣僚たちと思われる人たちが議場内へ入ってきた。

「首相以下、閣僚の入場です」

まとめて紹介されるのが普通のようで、何事もないようにふるまっていた。

それぞれの席に座ると、司会進行役が続ける。

「今回の議長は、前回選出されたわたくしが執り行わせて頂きます」

一礼して、続ける。

「それでは、議事へ入ります」


静かに宣言してから、数時間。

起立、投票ボタン押し、着席、拍手など繰り返していた。

「では、最後の議事へ入ります。次期会期における議長を選出したいと思います。先に、立候補を募りたいと思います。次期議長へ立候補なされる方は、ボタンを押してください」

何人かが押した音が聞こえてくる。

数秒の間で締め切られると、即座に議長が宣言する。

「立候補なされた方は、案内に従って降りてきてください」

数分の間をさらに開けて、ひな壇左側のすそから、立候補した人たちが現れてきた。

何かを伝えてから、さらに今の議長が続ける。

「立候補者が複数になったため、投票を行います。お手元にあります画面に表示されている略歴等を参考にし、投票に臨んでください。投票は5分後より開始します」

いつの間に出てきたのか、手のひらサイズの画面が肘掛の部分にあった。

今回立候補した3人の素性などが、表示されていた。

「どこぞの国の大使に、農民に、漁師か」

「3人ともばらばらの国出身なんだね。でも、なんで議長になんか立候補するのかなぁ」

俺が画面のタッチパネルを触っている、横の横から声が聞こえてきた。

「議長職になると、加盟国すべてに対する外交特権が生じるの。加盟国ならどこでもいけるわ」

王女が教えてくれた。

そうはいっても、あまり実感がわかないのも、事実だ。


5分が経ったとき、今の議長が再び話し出した。

「投票を開始します。画面に提示されているボタンを押して投票を行ってください。1度押すと訂正は効きませんので、その点をご了解ください」

殆ど同時ともいえるタイミングで、ピッという電子音が聞こえてくる。

「投票を締め切らせて頂きます」

10秒ほどすると、さっさと投票を締め切った。

「これで、投票できなかったらどうなるんだ」

「無効票扱いになって処理されるだけよ」

王女が教えてくれる。

「投票結果をお伝えします。ワクニヒ・スセタ大使が当選しました。これより1年間、議長として行動していただきます」

それだけ言うと、どこからか軍服を着た人がやってきて小さな紙を渡した。

その紙きれを見たとたんに、元議長と新議長の二人は顔がこわばった。

「本日の議題は以上ですべて終わりました。なお、お帰りは翌日以降を予定しています。来られる際にご案内した待合室で、しばらくの間ご休息をお取り下さい」

そう言われると、後ろの扉が開かれて、同じようなロボットが出てきた。

「ゴ案内サセテ頂キマス」

片言日本語で、俺たちを待合室へ再び連れて行った。

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