第12章 未来
揺れが収まるころ、皇女がゆっくりと俺から離れた。
「収まったようね」
王女が言うと、ほとんど同時に扉が開かれて、誰かが入ってきた。
「女王陛下、やはりここにいらしたのですね。どうか、来ていただけないでしょうか」
陸軍の正装をして、その人は俺達に言った。
「女王…?」
王女はその人に聞き返す。
「申し訳ありません、事情は追々話させて頂きます故、何卒……」
「分かった、とにかく案内してくれ。貴殿の名は?」
「申し遅れました。イルネス王国王立陸軍元帥のサワルト・アルテイルです。陛下とは、年少の頃よりのお付き合いを……」
「そうか、お前か。気付かなかったぞ」
王女は、この人を知っているようだった。
金内が王女にこっそりと聴く。
「ねえ、知り合い?」
「ああ、私が正式に王位継承権を得るまで仲良くさせてもらっていた家のご子息だが…」
「後でお話します。とにかく、こちらへ来て下さい」
サワルトが案内し、俺達は全員自身の隠れ家から出た。
外はかなり騒がしく、軍人が走り回っていた。
俺達はそんな騒がしさの中を、廊下をひた歩いていた。
「実は、先程激しい地震がありまして、王宮が大破してしまったのです。女王陛下は、常々、地震が起きたらこの部屋の隠れ家をあけよと仰せになられておりましたので、開けたという次第です」
「では、"本当の"女王はどうしたのか」
王女が聞いた。
「あなたと入れ替わるように行方不明に。おそらくは、過去へ向かったのではないかと」
「過去だと…いま何年だ」
「銀河平均年で860年です」
確か、俺達がいた時代が800年と教えられた。
だから、俺達はおよそ60年間、未来へ来たということになる。
「…なるほどな60年も経てば、小さな子供も大きくなるだろうな」
「そして、あなたが女王の地位についたのです。詳しい説明は省きますが」
「それで、大地震が来て、こっちに移ってきたって言うことね」
「ええ、そういう事です」
その時、全館放送が流れた。
「宇宙革命軍です!宇宙革命軍が攻めて来ました!」
「ついにか」
サワルトがポツリと言った。
それから、王女に向き直り、敬々しく片膝をついて言った。
「女王陛下、どうかご指示を」
王女は、微塵の躊躇もなく言った。
「近衛師団を率いて、私自身が敵を制圧する。付いてきてくれるか」
「もちろんです」
王女はそれから俺達を向いて聞いた。
「君たちは?」
「行きます、女王と供に」
俺は金内と皇女を一瞬見ていった。
ふたりとも、ヤル気にあふれた目をしていた。