第11章 地震
晩餐会が終わり、議会の休暇期間も残り1日となったころ、俺たちは、イルネス王宮の迎賓館近くにあるホテルに泊まっていた。
迎賓館自体は、皇女だけが泊まることになっており、俺たちとキアたちは、近くのホテルに別々に泊まることになった。
「でもさ、この勲章って戻っても付けられるのかな」
「しらねーよ」
金内が部屋に入ってから外した勲章を見ながら俺に話をしたが、そんなことは知らない。
そもそも、勲章なんてもらえるような状況だったのかどうかすら分からないほどだ。
「…それで、私たち、いつ帰れるのかな…」
浅いため息をついて、金内は天井を見上げながら言った。
「…さあな。いずれは帰れるだろうさ。でも、それは今じゃないだけ」
同時に貰った勲章を入れるための専用のケースに、勲章を大切にしまいこんだ。
その時、トントンとドアをノックする人が来た。
「どうぞー」
俺はその人に言うと、ドアのノブが下に押し下げられて入ってきた。
「お忍びの訪問ですか」
金内が王女とおぶわれている皇女を見た瞬間にそういった。
「まあそんなところ。どうかしら、快適かしら」
「ええ、とても」
俺は王女に言葉を返す。
王女は部屋の隅にあるダブルベッドに皇女を座らせ、俺達に振り返った。
皇女はベッドに腰掛けると、足をプラプラと揺らしていた。
「それは良かったわ」
よく見ると、王女も皇女もかなりラフな格好で遊びに来ていた。
王女は下がジーンズで、上がTシャツとメッシュ生地の白色の上着を着ていた。
皇女はというと、ピンクの水玉という柄のワンピースを着ていた。
靴は二人ともおそろいのスニーカーで、靴下はそれぞれ白色だった。
「それで、議会って明日再開でしょ。後はどんなことするの?」
「溜まっている議事の進行、例えば、全体に関わる法律の策定といった感じね。ああ、適当に賛成しておけば、とりあえずなんとかなるわ。事務的なことは、下部委員会でしてるから」
王女が教えてくれた。
「でも、嫌だと思うことには、ちゃんと理由をつけてっていう条件だけども反対することができるわ。その理由についての審議には、1日ほどかかる時もあるけれどね」
「全部でどれくらいかかるの?」
続けていった王女に、金内はさらに聞いた。
「だいたい1週間ほどかしらね。会期は毎回変わるから、1日で全部終わるときもあれば、1ヶ月ほどかかる時もあるのよ。その間の費用や給料は、会期明けにまとめてそれぞれの銀行口座や住所に、どんな形であれ送付されることになるわ」
「へぇー」
王女の説明に金内と俺はおもわず言った。
「それって、全部覚えてるの?」
「当然でしょ、王女たるもの、質問には全て答えられるようにしておかないと」
そう言い終わった途端、銅鑼のようなサイレンが建物全体に響きだした。
「何事!?」
「地震よ、こっちに来て」
王女が言うと、ちょうどテーブルが置いてあったところのすぐ脇の地面を強く踏んだ。
すると、下へ進むための階段が出てきた。
「ここに入って、臨時避難所よ」
俺が皇女をだきかかえ、王女に言われたところを駆け足で降りていった。
カタカタと地震の揺れが到着する頃に、一番下にたどり着いた。
「ここでしゃがんで」
王女が俺達を守るように座った。
徐々に激しくなる揺れに、皇女がおびえて俺にヒシっとしがみついた。