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異世界戦国の生きる道  作者: もすけ
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タイムスリップ?

何時間程気を失っていただろう。僕は強い全身の痛みで意識を取り戻した。

戻った意識を繋ぎ合わせ、状況を整理した。


利道

(そうか・・・僕は窓から落ちたんだ)


妖精などという不確かな幻想に夢中になり、馬鹿なことをしたと自分が情けなくなった。そんな僕を上から覗き込む幾つかの人影があった。


村の子供達

「すごい音したけど・・・大丈夫?」


観たことがない子供達の姿。小学生くらいだろうか。なんともいえないみずぼらしい恰好をしている。この子達の話をきくと、どうやら僕は木から落ちたらしい。

身体を起こして辺りを見渡すと、草木で溢れ、まるで森のような景色が広がっていた。自分が暮らしていた施設は全く見当たらない。


近くに川が流れている。流水の音を聞くと、無性に喉の渇きを覚えた。僕はこれも夢の延長なのかと、全身の確かな痛みを感じながら川に近付いた。

水がすごく美味しい。それに綺麗だ。水をこんなにも美味しいと思ったのは人生で初めてであった。そんな川が僕を映し出した。


利道

(あの頃の・・・僕の姿?)


僕は驚いて声も出なかった。状況の把握ができない。

僕はほっぺたをつねる。いつまでも覚めない夢。だんだん不安に襲われた。思考が止まる。そんな僕の心境を現すかのように陽が沈み始めた。

村の子供達に引っ張られるような形で僕は歩いた。歩くこと数分が経ち、村に辿り着いた。


村の入り口では大人達が心配そうな表情を浮かべて立ち並んでいる。

大人達は帰ってきた僕達を大声で叱った。僕の周りの子供達は皆泣いていた。

僕はその光景を他人事のようにみていた。


そんな大人達の群れから間を抜けて出てくる夫婦がいた。

その夫婦は僕の前で立ち止まると、僕を強く抱き締めてきた。

どこか懐かしい感じが心地良くて、なぜか涙が溢れた。

それからは皆が各々の家へと戻っていった。


どうやら今この村の付近では、相次ぐ村人の失踪が起きているらしい。

何者かの手によって惨殺された死体も相当数に上るようだ。

大人達が強く子供達を叱ったのはこのためだった。

村中を探しても見つからない子供達。村の外にいる可能性を考慮し、捜索隊を組み村の入口に集結していた。暗闇の捜索は大人達とはいえ危険が伴う。そんな中で子供達が帰ってきたため事なきを得たのだった。


家に入った僕を待っていたのは温かい料理だった。これもどこか懐かしい味。

その夜はその夫婦と一緒の寝床についた。僕は目を閉じながら意識がある所から今まで得た情報を繋ぎ合わせ、自分の中で整理した。そして1つの答えが出た。それは、『ここが現代ではない』ということ。

その答えが出てから少しずつ不安が増えた。けれどこの夫婦の側にいると、僕はどこか安心感に包まれた気分で眠ることができた。


翌朝、僕は家の中に差し込む陽の光で目が覚めた。僕が目を覚ました頃には2人は出掛ける準備を済ませていた。どこへ行くのか尋ねてみる。すると、近くの田んぼへ農作業に行くとのことだ。そしてこの農作業こそ2人の仕事らしい。


まだ朝早いため、寝ていても良いと言われた。しかし、何かしないと気が紛れない状況でもあったし、何より農作業という非日常なモノに好奇心が沸いていた。僕は2人を手伝うことにした。実際にやってみると、かなりしんどい。機械もない、道具もほとんど使っていない。人力だけで行う農業の大変さを痛感した。



それから数日が経った。僕は今の暮らしに慣れてきていた。農作業にも少しずつ。

村の人々が皆温かく、人と関わることが苦手な僕の心の扉を少しずつ開いてくれている気がした。

世間体や体裁などは無縁といってよいほど、皆が心で接してくれていることが伝わるのだ。

もうここがどこなのか、いつの時代なのか少しどうでもよくなっていた。

それ程僕にとっては心地よい世界だった。


そんな時、村の外れで4人の遺体が発見されたのだ。

どの遺体も損傷が激しく、惨殺された様子が想像できる程であった。

村人達の胸中に戦慄が走っていた。

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