とくいなこと
「ほんとごめん。」
ガチャ。
やってしまった。反省だ。俺はどこまでも、自分勝手で自分本位だった。扱い方が良ければ、奴隷を持ってもいいと思った。
やらせようとしてることなんて、他の奴隷と変わりないのに。
この部分をうまく、自分で誤魔化した。自分は高潔だと信じたかった。
他の人のことを思っている風で、結局は自分のことしか考えてない。彼女なんかできないわけだ。
震えるミュラを見て久しぶりに自分の本性を突きつけられて、向き合うことになった。醜い。
今日は眠れそうにないな。
朝日が昇る頃まで、俺は反省していた。大半は、どうしようもない自分への不快感と共にぼーっとしてただけなんだけど。
うん、こんな悩み方は俺らしくないな。俺の本性は今に始まったわけではないし、自分に正直じゃないよりは自分に正直な方が人生楽しいよきっと。
そもそもミュラは奴隷で、俺に買われなければ、他の奴の奴隷になってたわけで、俺が目指すべきは、そいつのとこより楽しく幸せな場所ではないんですかね?
その上で、俺がやってもらいたいことをやってもらう。
ミュラにとってはプラスな部分は小さいかもしれないけど、プラスな部分があるってことは、win-winな関係って言えなくもないよね?
楽しく幸せな場所か。俺に残された方法なんて一つしかないな。俺はそれだけで、勝ち上がってきたんだ。
「人を楽しませるのは、得意なんだ。」
いつも通りでいいってことだな。
でも、ミュラには引け目を感じるな。うーん、でかい恩でも送りつけて、無理やり描き消そ。ふっふ。自分を誤魔化すのも得意なんでな。
おお!綺麗な朝日だ!俺の開き直りの鮮やかさをよく表しているな!
ガチャ
「おはようございます。ご主人様。昨日は、その...すみません。飲み物、暖かくて美味しかったです。目クマが...大丈夫ですか?」
「おはよう、ミュラ。いやこっちこそごめん。美味しかったのはよかった。少し眠れなかっただけだよ。」
(昨日悩んでいるように見えたのはそれほどまでだったんだ。今は目にクマがあるけど表情は晴れやかではあるから、もう大丈夫なのかもしれない。)
「それでなんだけどさ、昨日の件、俺がミュラのお願いを一つなんでも叶えてあげるからさ、チャラにしないか?」
(え?私が勝手に水を被っただけなのに、なんでそうなるんだろう?この人はどこかおかしい。でもここでお願いをするつもりでいる私もどこかおかしいのだろう。でもこれはまたとないチャンスだ。断られるかもしれない。でもこのチャンスを見逃す度胸は私にはない。)
「白金貨10枚ほどする奴隷の子を買っていただきたいんです。」
ものすごく真面目な顔でミュラは言う。
「ミュラ、白金貨10枚ってこの屋敷の10倍以上だよ?ずいぶん大きなお願いだね?」
ミュラ面白すぎやしないか?いやなんでそうなるんだよ。この子どこかおかしいよ。でもこのお願いを聞くつもりでいる俺も、きっとどこかおかしいんだろうな。
「実は水を被ってまで、夜伽をしようと思ったのも、その子のためなんです。ご主人様に気に入られて、このお願いを聞いてもらうために。私の体は好きに使ってもらって構いません。どうかこのお願いを聞いていただけませんか?」
「へえ〜。俺が徹夜で反省する羽目になったのは、その子のせいか、ちょっと恨み言を聞いてもらわなきゃな。」
「そ、それは...。よろしいのですか?」
「よろしいってなにが?恨み言を聞いてもらうには白金貨10枚いるんだろ?用意するさ。俺は執念深いし。」
「ありがとうございます!なんてお礼を言ったらいいのか。」
「朝ご飯作ってくれない?」
「はい!」
ミュラの嬉しそうな顔をまじまじ見る。惹き込まれてしまいそうだ。
今になって気づいたんだけど、俺の渡したパジャマ、猫耳フードがついてるあったかいやつだったんだな。ミュラ、フード被ってるし。これに気づかないって、どんだけなんだよ。徹夜怖。
そんなのどうでもいい!
か、可愛いすぎる。あかん、これはあかん。気づいたら意識せざるを得ない。写真撮りたい。
「あの〜ご主人様。この服可愛いんですが、これ少し恥ずかしいです。」
顔を赤くなって、声が窄んでしき、もじもじしだすミュラ。もう、可愛いすぎる。ちょっと意地悪したくなるな。
「別に、フード被れなんて言ってないよ?」
バサッミュラがフードを取る。
「ご主人様のバカ」
恥ずかしすぎたんだな。走って行ってしまった。悪いな嗜虐心たっぷりで。
椅子とテーブルを出して、少し待とうか。