恋する乙女は最強なのかもしれない③
「よし、お前ら自由に座れ~。」片道およそ二時間。往復で考えると四時間という一日の六分の一を二人で過ごさなくてはならない。バスってなんで二人席がスタンダードなんだよ。どっかの海外サッカーチームみたいに三列一席のタイプのバスがスタンダードになってくれと切に願う今日この頃である。今日はクリーンシップである。「陸人どこに座ろっか?」「俺らは、誰も座っていないみたいだし一番後ろの五人席でいいんじゃないかな?」「うん、そだね!」内田と村上がそんな会話をしながらバスに乗り込んでいった。村上、誰も座っていないんじゃなくて、誰も座れなかったんだ。バスの一番後ろだなんて王様席みたいなもんだしな。後ろから大型トラックとかに突っ込まれたら間違いなく一番後ろが一番生存率が低いから俺は座ってもいいよと言われても俺は座らないけど。「じゃあ、俺陸人の隣座っちゃおっかな~」「蓮君!え、えーと、私もちょうどそこに座ろうと思ってたんだけどな~、、」おお、思いのほか内田頑張ってるな。その頑張り、ぜひ報われてほしい。「あ、ほんとに!そんなに端の席座りたかったんだ!ごめんごめん」そういうと太田は村上と逆の端の席に移動し、左から内田、上田、太田、村上の順で座席についていた。そんなに頑張りが裏目に出ることがありますかね。もう見てらんない!と思っていたが、俺の座る席は余った一番前になったらしく一番後ろは本当に見てられなくなってしまった。えーと、俺の席の隣は、、誰もいない、と。あー、これで気兼ねなく読書できる。よっかったよかった。なんで一人で強がっているのかしら俺は。読書を始めるかと思い、カバンを開けると同時に「隣、空いてるかな、、?」と声をかけられた。「あ、空いてますけど」「よかった。」そういうと彼女はカバンを足元に置き座席についた。「えっと、三ツ島君だよね?」「そうですけど、」「いきなり隣に来ちゃってごめんね。でも、空いててよかったよ~。空いてなかったら硬い補助席になってたよ~。」なんだこのゆるふわのかわいい感じの人は。どっかの誰かさんとは大違いだ。あと、この子の名前わからん。どうしよう。「あ、私の名前は澪です。苗字は下田ね~。」「下田さんね。帰りとか友達の隣行くとかなら全然気遣わないで行ってくれて良いから。」「私、友達違うクラスにいて、どのみち座る人いなかったから、帰りもよろしくするかも、、です。」危ない危ない。危うくかわいいが口から出てしまうところでした。そんなこんなをしているとバスが動き出した。「三ツ島君はさ、自由時間何するか決めた?」「いや、俺は特に何も。」「そうなのか。私たちと一緒に色々周る?」「いや、大丈夫だ。その友達も知らん男来たら迷惑だろ。」「まーちゃんはそんなことないと思うけどな~」「本当に気遣わないでくれ。」「そっか~。さみしかったら言うんだぞ~!」なんだこいつ。中学生の頃だったら絶対勘違いして好きになって、当たって砕けてた。砕けちゃったよ。心を落ち着かせるために読書でもするか。俺はカバンの中から本を取り出し読書を始めた。それを見て話しかけづらくなったのか、下田もイヤホンをして動画を見始めた。
「もうそろそろ着くから降りる準備しとけ~。午前中は好きなやつと組んでいいから遊園地周辺のごみ拾い、清掃をしてもらうからな~。」下田はイヤホンをして動画を見ていたため状況が分からなかったのかあたりをきょろきょろと見回していた。「もうそろそろ着くから準備しとけだと。あとは午前中は好きなやつと組んで清掃してくれだと。」「了解しました!三ツ島君ありがとね!」そういうとバスは停車し、下田は一番にバスから降りた。さあ。一人で今日一日何しよう。
ふー。一人で黙々と清掃していたおかげで気づいたら昼休憩になっていた。ちらっと午前中見た限りだと、内田は村上と二人きりに慣れている様子はなかった。ささ、一人で落ち着けそうな場所を確保しなくては。こんな時、長年ぼっちをやっていると瞬時に人気がいない場所を見つけることができるようになる。俺は、遊園地の入り口付近にあるベンチに腰掛けた。誰も好き好んで清掃していたところから距離のある入り口付近に何て来ないだろう。コンビニで買ったパンを食べながらぼーっとしていると「あなた。ここでも一人なのね。」と聞きなれた声が聞こえてきた。「なんだ。お前か。こんなとこで何してんだ。」「あなたが一人でこっちに歩いている姿が見えたから、逃げ出したのかと思って様子を見に来たのよ。」「逃げ出すって。逃げられるならぜひとも逃げたいが、バスで二時間は逃げ出せない距離だ。」「それで、内田さんの様子は?」「あー、バスでも隣座ろうとしてたり、午前中も二人きりになろうと頑張ってはいたけど、二人きりにはなれてなかったな。」「四人組なら他の二人が気を利かせて二人きりになれそうだけど。」「確かにな。」天美の言うとおりだ。内田がもし友達に頼んでいるとしたら二人きりになれそうなものだが。「あれ、三ツ島君だ~!」「下田か。」「なんだ一人じゃなかったんだ!」下田は天美を見ると軽く挨拶をした。「三ツ島君と同じ部活の天美桃音です。よろしく」「三ツ島君と同じクラスでバスも隣座った下田澪です~。よろしくです!」「下田は一人なのか?」「まーちゃんもいるよ~!」そういうと後ろから小走りで近づいてくる生徒が見えた。あれは、、。天美と思わず顔を見合わせてしまった。図書館で村上と話していた女の子だった。




