恋する乙女は最強なのかもしれない①
「はぁーー。」あの後職員室から家に帰り現在まで一体いくつため息をついたことだろう。せっかくの一日の最大の楽しみである湯船につかっている現在もなんだかリラックスができない。そろそろ上がるかと思っていたところで、妹が声をかけてきた。「お兄ちゃん、お風呂まだ上がらないのー?」妹は13歳の中学一年生だ。俺とは違い人付き合いが上手い。「そろそろ上がるぞー。」返事をして着替え、リビングに戻ると妹がじろじろと顔を見てきた。「えっと、どうした?」「お兄ちゃんの疲れてそうな顔初めて見たかも。学校でなんかあった?」「まあ、なんかあったっちゃなんかあったな。大したことはない。」「なーんだ。友達でもできたかと思ったのに~。高校生活で一人でも友達ができるといいね!」「できるといいな。」「まずはクラスメイトでも、誰でも話せるといいね!」「さすがに部活二人しかいないから、それはクリアしたな。よくわからん女子だが。」「え、、」妹が持っていたバスタオルとパジャマを落とした。「お兄ちゃんが部活に入部して、しかもそれが女の子と二人、、?」妹は落としたものを拾わず、仏壇の前に行き手を合わせ始めた。「お母さん。お兄ちゃんの悲願がついに達成されました。お母さんもこれで安心してゆっくり休めるね。」悲願って。そんな大げさな。「お母さんへの報告は俺からちゃんとしとくから、友里はさっさとお風呂に入ってきちゃいな。」はーいと返事をすると落としたものを拾って友里はお風呂へと向かっていった。「母さん。友里から先に聞いたと思うけど、なんかよくわからないことに巻き込まれて、よくわからない女子と二人で部活をすることになりました。とりあえず、喧嘩せずに頑張りたいと思います。また、何かあったら報告します。」母さんが死んでから俺は何かあると母さんにこうして報告をしている。母さんへ報告を済ませると、俺は部屋に戻った。なんだか、めんどくさいことに巻き込まれたが、これ以上めんどくさいことにならないように学校生活を送ろう。そう固く決意をして俺は眠りについたのだった。
今日は部活初日である。まあ、部活初日と言っても活動内容は委員会とほぼ同じため、そこまで新鮮味はないが、女子と二人きりの教室に向かうというだけでそこそこ緊張する。今日も昼休みはここで過ごしたが、なんだが昼休みに感じていた心地良い雰囲気は無くなったように感じる。そんなことを思いながらカウンター内にある椅子に腰を掛けていると、図書館の扉が開いた。「あら、早いのね。こんにちわ。」天美が軽く挨拶をしながら図書カウンター内の椅子に腰を掛けた。「うっす。」「それで、この部の名前なのだけれど、」天美がそういうと、カバンから紙を取り出した。「ボランティア部、、?この名前だと、活動内容が図書委員の仕事だけじゃないように感じるんだが?」「そうね。活動内容は実際に図書委員の仕事だけではないわ。篠崎先生の方から、これを機会にボランティア活動でもしたらどうかと。」「絶対図書委員の仕事をするだけの活動内容だと、部として認められなかったんだろ。」「そうね。あとは部費がボランティア活動をした方が多くもらえるとの話だったわ。」こいつ、そんなに欲しい本がいっぱいあるのかよ。「必要書類などは篠崎先生が提出しておいてくれたみたいだから、今日からボランティア部としての活動開始ね。」なんだか、俺は一度も何かを承諾した覚えはないんだが、いろいろと勝手に決まっている感じがする。なんて理不尽なんだろう。今日から開始するボランティア部としての活動を想像してはめんどくさいことに巻き込まれてしまったと考えていると、図書館の扉が開いた。「えっと。三ツ島君いる?」何やら聞いたことのある声だと思ったら、村上の側近の真弓さんである。「はい。ここにいますよ。どした?」「あんた、最近陸人となんかあった?」そう俺に聞くと、教室で向けてきた鋭い視線をまた浴びせてきた。そんな熱い視線を送られると、困っちゃうな~。防御力下がりまくるし、あとちょっとで死んじゃう。「別に何もない。」「嘘でしょ。この間の昼休み陸人とあんた不思議なくらい同じタイミングで教室に入ってきたし。あの後陸人に話しかけられてるの私見てたんだから!」こういう時に、今まで人とコミュニケーションをとった経験がない俺はどう答えたらいいのかわからない。きっと、普通なら適当なこと言って、受け流せるのだろうけど俺にはそんな技術はない。「あなた、内田真弓さんね。うちの部員が何かした?もし痴漢とか体育着を取られたとか、教室で話しかけられていやな気分にさせてしまったとかだったら、すぐに謝罪させるわ。」「痴漢もしてないし体育着も取ってない。あと、俺はクラスの中では空気に徹しているから話しかけるなんてことは絶対にありえない。」「何はともあれ、あなたの姿を見て気分を害している方がいるのだから、謝罪しておいた方がいいわ。内田さんと私にね。」「なんでお前にも謝らなくちゃなんねーんだ。そんなに気分を害してたのね。ごめんなさい。」気づいたら謝っちゃってるじゃん俺。「あの、私の話、、」内田真弓が何か言いたそうな顔でこちらを見ている。「ごめんなさいね。で、なんの要件だったのかしら。」「三ツ島がこの間の昼休み陸人に何かあったのか知ってるのかと思って。あの昼休み以降、陸人なんか違う気がして。」「あの昼休み、、?ああ、村上君が女子生徒と二人きりで図書館に来た日のことね。」「え、、、」やってしまった。普通この感じで聞いてきたらもう、そういうことだろう。「ちょい、これ一応村上からあの図書館での出来事は内田には言わないでくれって言われてたんだけど。」「あら、ごめんなさい。でももう言ってしまったわ。」「やっぱり、陸人、そういうことだったんだ。なんでその場に三ツ島は居合わせていたの?」やっぱりそこは気になりますよね。言えない。教室に居づらくて図書館のベランダで一人でご飯を食べていたなんて。「この人は、毎日昼休みはあのベランダで何やらぶつぶつとひとり言を言っているの。」「あ、そうだったんだ。三ツ島、変なこと聞いてごめんね。」なんか謝られてしまった。「陸人はやっぱりモテるからな~。今度のクリーンシップの自由時間一緒に遊ぼって言おうとしたんだけど、この様子だと他に何人に誘われてるかわからないな。」クリーンシップ、、。新入生の中を深めるための行事で、午前は遊園地のごみ拾いやら清掃をして、午後は自由時間でその遊園地内を遊べるとかなんとかだった気がする。「でも、クリーンシップの話題出すと最近陸人素っ気なくなったり、話変えたりしてたから、もう自由時間過ごす人決めてるってことだよね。どのみち、私が誘っても無理だったか。」内田はそういうと少し寂しそうに笑った。なんて甘酸っぱいお話なんでしょう。心に染みます。「内田さんは村上君のこと誘ったの?」「え、、誘ってないけど、、」「あのね、一つ言っておいてあげる。何事もやる前から諦めていては可能性は0%なの。諦めるなら、やることすべてやって、できること全部して、それでもだめだった時に泣き言は言うものなの。やる前から諦めている人に泣き言すら言う資格なんてないわ。」なんて厳しい一言なんでしょう。こ、心に染みます。「、、つだって」「え、何て?」「私がクリーンシップ陸人と一緒にいられるように手伝って!」「そんなこと言われてもね~。」「三ツ島君、ここはボランティア部よ。生徒が手伝ってというなら、ボランティア部としての活動の範疇だと思うわ。」え、うそでしょう。まさか。「内田さん。いいでしょう。ボランティア部としてお手伝いするわ。」しっかり昨日の寝る前のフラグ回収してしまった。




