球技大会が始動したのかもしれない⑨
放課後になり今日も実行委員の仕事に向かうべく多目的室に集合していた。
やっぱり天美ちょっとだけ不機嫌な気がするな~。嫌だなあ。
内田と楽しそうに話している合間に俺と目を合わせると鋭い視線を向けてくる。
「そういえばももはなんの競技に出るの?」
「私はバスケに出場するわ。内田さんは?」
「私もバスケに出場しまーす!ももと当たったら負けないからね~?」
2人が和気あいあいと球技大会の話をしていると多目的室の扉が勢いよく開いた。
「山瀬だ!入るぞ!」
俺の太ももと同じくらいの太さの腕で勢いよく扉を開くと体育委員長の山瀬が立っていた。
「山瀬さん。どうぞ。」
天美は山瀬の姿を見ると一瞬肩を震わせたがいつもの堂々としている天美にすぐさま戻っていた。
「今日は天美に話が合ってだな!」
「話ですか?なんでしょう?」
「この間映画に誘ったと思うんだが、やっぱりもう一回考え直してほしくて。」
天美は眉をひそめて小さくため息をついた。
「すみません。この間お話しした通り、、、」
「いや!こちらもタダで行こうとは言わない!」
山瀬は勢いよく息を吸うと天美に一歩近づいた。
「俺はサッカーに出るんだがそこで優勝したら一緒に行ってほしい!」
山瀬の強引だが必死さや誠実さがひしひしと伝わってくる。
天美もこの状況でさらに断るには気が引けるのか言葉に詰まっていると横で静かに状況を見つめていた内田が勢いよく手を叩いた。
「いいこと思いついた!」
この場にいる全員が内田を見つめると内田はにこにこしながら山瀬と天美の間に立った。
「確か、みっつもサッカー出るよね?」
「あ、ああ。気づいたら人数合わせでサッカーに入っていたが。」
「じゃあさ、順位が高かった方がももと遊びに行けるってことにしようよ!」
俺は内田の言っている意味が理解できずに固まっていると山瀬が大きな声で笑いだした。
「面白い!いいじゃないか!男なら正々堂々と決着付けよう!」
「えーと。悪いが俺あまり試合に絡めない気がするんだが、、」
「そこはクラスのみんなにわたしから言っとくからだいじょーぶ!」
内田はぐっと親指を上げるとじゃあそんな感じで!と山瀬に伝え山瀬は来た時よりもすごい勢いで帰っていった。
「ふうー。上手くいったね!」
「いやどこがだよ!」
こいつ厄介なことにしやがって。ってかなんで俺も天美と遊びに行きたいみたいになってんだよ。
「ってかよく俺がサッカー出るって知ってたな。」
「え!?そ、そんなのクラス一緒だから知ってるにきまってんじゃん!」
内田は何やら焦った様子で俺の肩をパシッと叩いてきた。
「み、三ツ島君。」
内田とじゃれていると今まで何やら俯いて考え事をしていた天美が口を開いた。
「、、、、頼んだわよ。」
天美はそのまま俺をじっと見つめると内田に視線を変えた。
「あなたはそれでいいの?」
「ん?どゆこと?」
天美は真剣なまなざしで内田を見るとそのまま続けた。
「私は後悔しないようにしている。あなたはそれでいいの?」
「私はへーき。」
内田はそのままへらへらしている表情を崩さないまま小さく呟いた。
天美はじっと見つめていたがすっと自分の席に座りおもむろにパソコンを開いた。
「これが各競技のトーナメント表よ。」
そう言うと俺と内田にパソコンの画面を見せてきた。
「三ツ島君は順調にいくと3回戦で山瀬さんのクラスと当たるわね。」
「おいおい。まずそこまで勝ち抜けるかわかんねーぞ。」
「勝ってもらわないと困るわ。」
俺はどんだけ山瀬さんと出かけたくないんだと思いつつもやれるだけやってみると言っておいた。
「さあ。今日は帰りましょうか。」
「うん!帰ろー!」
俺も2人に続きバッグを持ち多目的室を後にした。
まずは帰ったらサッカー漫画を読みなおさなくては。俺が唯一読んだサッカー漫画は確か、、、丘の上からボール蹴って挑戦状叩きつけてたな。あとは、アニメで見たのだとタイヤを気に吊るしてタイヤを体で止めていた気がする。サッカーしようぜ!!!
「ところであなた運動神経は良いの?」
「良くも悪くも無い。」
「悪いって言わないだけ良かったわ。」
駅で内田と別れると天美は俺の中学時代の部活動だったりサッカーの経験を聞いてきた。
ちなみに俺は小学生の頃に3年間地域の少年団でサッカーをしていた過去があるが天美には黙っておいた。
何か俺がサッカーやってたって言って変な期待を持たせるわけにもいかないし、まずまずサッカー辞めてからもう何年もたってるから素人も同然だ。
「天美はなんでバスケを?」
「私も中学時代にバスケをしていたからよ。」
「へ―。知らなかった。なんで続けなかったんだ?」
天美はその問いには答えたくないようで濁されて終わった。
何はともあれそれなりに成績を残したものの高校では続けない選択をしたみたいだ。
電車を降りるといつも別れる道についた。
「じゃあまた明日な。」
「待って。三ツ島君。」
天美に背を向けて別れようとすると天美は俺のバッグを掴んだ。
「今日は、、、その、、お昼のとき、、ごめんなさい。」
「あ、ああ。全然大丈夫。こっちこそ気を悪くさせたみたいで悪い。」
「その、次は、、」
天美は言いかけたが途中で辞めさらに俺のバッグを強く握りしめた。
「次は、、水族館、、行きたい。」
「、、おお。良いな。」
「そ、それじゃまた明日!」
天美は言い終えると足早に去っていった。
俺は家に帰るといつかもう一度サッカーを始めるかもしれないと思い買っておいて一度も使っていないスパイクとボールを抱え近くの公園に向かったのであった。
「いてて、、」
朝起きると体のあちこちに衝撃が走った。
久しぶりに全力で運動したからか体中筋肉痛だった。
しっかりストレッチや準備運動をしたつもりだったがまさかこんなことになるなんて、、、。
俺は動くたびにズキズキする体を引きずり朝の支度を済ませて家を出た。
学校に着くとどのクラスも朝の練習をしているようでさらに人気が多かった。
ちなみに俺たちのクラスはサッカー経験者が多いのと早起きが苦手なやつが多いらしく、朝練習は無しで体育の時間と放課後に練習をしている。
ちなみに俺は放課後は委員の仕事があるため参加できず3~4回の体育の授業でしかクラスの人たちとサッカーをしたことが無い。
そして俺は安定に誰からも声をかけられず、俺から声をかけることもできないためグラウンドの端でボールを蹴るのみだったため実質クラスの人たちとはサッカーをしたことが無いのである。
試合に1分も出てないけど勝ったらどうなるんだ?一応チームの勝利だから水族館だよな?だってチーム競技でまったく試合出てない人でも表彰式のときに等しくメダル貰ってるもんな?
あーでもないこーでもないと考えていると教室につき俺は考えることを辞めて教室に入った。
「あ。今日はちゃんと早くこれたね!えらいえらい!」
今日もしっかりと自分の席ではない俺の隣の席に座って待機していた下田さんは俺の椅子を叩いてここに座れと指示を出してきた。
それやらなくてもそこ俺の席だから座るんだよなぁ。
俺は自分の席に着くと何やら隣と距離が近いことに気づいた。
「近いでしょ?」
「なんで勝手に椅子近づけてんだ、、」
下田さんは俺が座ると満足そうに笑った。
「三ツ島君。どっか痛いとことでもあるの?」
「なんでだ?」
「だって座るときちょっと顔歪めてたし、あと若干湿布のにおいするもん。」
俺は筋肉痛があることを見抜かれて驚いたのと湿布のにおいがしたことに恥ずかしさを覚えて思わず筋肉痛があることを否定した。
しかし、これが間違いであったとすぐ思い知らされることになった。
「じゃあさ。ちょっとだけ足突っついていい?」
下田さんはにやにやしながら俺の太ももに指圧を加えた。
「っぐ、、、」
俺はあまりの痛みに悶絶し体からはびくっと逃避反応が出た。
「あはは!やっぱ三ツ島君筋肉痛あるんじゃん!」
下田さんは俺の反応を見ると更に楽しそうにもう一度俺の太ももを突っついてきた。
「っつ、、分かったから!ありますあります!筋肉痛めちゃくちゃあります!」
正直に白状すると下田さんは笑いながらも手を止めて俺の手を握ってきた。
「お姉さんに嘘ついちゃだめだぞー?」
下田さんの手は天美と同じくすべすべしていたが天美よりは骨ばっておらず温かみのある手だった。
「さあ!私も練習行ってこよ!」
下田さんは勢いよく立ち上がると体育館シューズを手に取った。
「私バスケ出るからさ、優勝したらご褒美ちょうだいよ!」
「えっと、遊び行くってことで良い、、」
「それはご褒美じゃなくて決まってることだから。」
下田さんは少し考えたあと決めた!と言い俺の肩を叩いた。
「じゃあ私が優勝したらなんでも言うこと一回聞いて貰おっかな!」
俺が呆気に取られていると下田さんは約束だよー!と言いながら廊下を走って行ってしまった。
何でもって何でもだよな、、、。あの下田さんから何を命じられるのだろう、、。
俺はまたとんでもない約束をさせられたのではないかと考えたが、考えても仕方のないことと腹をくくり読みかけの小説を開いたのだった。




