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こんな青春でいいわけがない  作者: エルキングダム
19/23

球技大会が始動したのかもしれない⑥

 いよいよ天美と出かける日曜日になっていた。

昨日全然寝れずにYouTubeを使って『デート成功の秘訣』『女子と会話を弾ませる方法』などの動画を視聴していた。そして、少しシミュレーションを重ねどうやっても失敗している未来を想像してはため息をつく作業を繰り返していたのだ。

俺はクローゼットの中から数少ない服を引っ張りだしベッドの上に並べては組み合わせを考えていた。

駄目だ。全然わからん。あまりに私服を持っていない俺を気遣ってか妹がこの間の誕生日に白いシャツと黒のジャケットをプレゼントしてくれたが着てみるとカフェなどでビジネス勧誘している奴にしか見えない、、、。今にも「人脈って一番大事で~」とか「成功の秘訣は行動力」とか云々かんぬん言い出しそうだ。

俺は中学の時から着ている暗めのジーンズと黒の長袖のシャツを着ていこうと決意し他の洋服をクローゼットにしまっていると部屋の扉が勢いよく開いた。

「お兄ちゃんー!困ってる~?」

妹が思い切り部屋の扉を開いてなぜかハイテンションで俺の部屋のベッドに飛び乗ってきた。

そしてベッドの上から俺を見下ろし一つため息をついた。

「なんで私があげたやつ着てないの?」

「いや、着たけど似合ってないと思って、、、」

妹は更にため息をつくとクローゼットの中にしまったばかりの服をすべて出し服を組み合わせ始めた。

「あのー、友里さん?俺これでいいんだけど、、」

「お兄ちゃんが良くても隣歩く天美さんの気にもなってよね!それに、、、」

「それに?」

「天美さんなら褒めてくれるよ!」

友里は一体天美のどこを見てそう思ったのだろう、、。

普段の俺に対する接し方を見せてやりたい。もしかして、塾では相当猫をかぶっているのか、、?

そうこうしているうちに今日の俺の服が決まったらしく妹は自信満々に部屋から出ていった。

俺の今日の服装はパンツが紺のスラックス、白のシャツに黒のジャケットになった。

 俺は時間に余裕をもって待ち合わせの15分前に集合場所に着いた。

集合場所に着くと一足先に天美が到着しているようだった。

「ごめん!待たせた?」

声をかけると天美は一瞬びくっと肩を震わせて俺を見るなりショルダーバックのひもを握りしめ天美は俯いた。

「、、、別に待ってない。だ、第一まだ集合時間になっていないのだから謝る必要はないわよ。」

いつも堂々としている天美からは想像できないくらい何やらそわそわしている様子で目線もあちらこちらに泳いでいる。

えっと、確か友里が女の子と遊ぶときはまずは服装を褒めろとか言ってたな、、。

俺は女の子と遊んだ経験など無い為とりあえず友里の指示に従っておくことにした。

「いつも制服姿しか見たことないから天美の私服姿新鮮だな~。そ、そのワンピース天美に似合っていて、、と、とても奇麗だと思う。」

俺はあまりの恥ずかしさに天美を直視できなかったが何とかコメントを残すことができた。

肝心な天美は何やら一瞬固まったがその後、熱でもあるのかと思わせるぐらい顔を赤くし小さな声でありがとうとつぶやくと、バッグで顔を隠していた。

天美は元々顔も整っているしスタイルも細身で肌も透き通るように白い。

そして今日の服装は白のワンピースにベージュのカーディガンを羽織っていて天美の整った容姿を更にひき立たせている。

「さ、早速行こうか!」

「そ、そうね、、」

俺はいてもたってもいられず映画館に向かうことにした。

 映画館に到着するとチケットを買うためにチケットカウンターに並んだ。

天美の見たい映画に行こうと提案したがどうやら感動系の恋愛映画になったようだ。

最近やたらとCMで流れているがこんな機会が無ければ俺は一生縁がないような映画だ。

「お次のお客様どうぞ~!」

店員に声をかけられ映画の名前と時間を告げるとモニターに空いている席が表示された。

「光っている部分が空いているシートです。空いているシートは、、、」

俺はモニターを見るなり目を疑った。どうやら映画は相当な話題作だったらしく二つ連続で空いている席がカップルシートのみだったのだ。

「ちなみに次の時間帯ってどんな感じですか?」

「次はもう完売してますよ~。」

こんなに人気作と知っていればネットで席を買っておいたが、、。

俺は余裕ぶっこいてゲームをしていた昨日の自分を恨んだが、今はそんなことしている場合でもないためとりあえず天美に相談しようと天美を見ると天美はカップルシートのモニターをタッチしていた。

「、、、わ、私は構わない、、けど、、」

俺は男がうろたえているのも見栄えが悪いと思ったためとりあえず余裕がある風に返事をし、店員にお金を渡した。

「じゃあ、8番スクリーンです。ごゆっくりどうぞ~。」

俺はチケットを受け取り天美と8番スクリーンに向かった。

 「み、三ツ島君。私お手洗い行ってくるから先に席に行ってていいわよ。」

「わかった。じゃあ先座ってる。」

俺は天美に言われた通り先に席に向かうと館内は真っ暗になっていてスクリーンには広告が流されていた。

俺は自分の席に到着するとまず席のフォルムに驚いた。

ピンクのハート形ソファーって今からこれに座って映画見なくちゃならないのか。

そして、以外にも席自体が小さめに作られていることにも驚いた。

これ、誰でもこんなの意識するだろ、、、。

俺は腰を落ち着かせられずにいるとポケットのスマホが鳴った。

『三ツ島君。どの辺かしら?』

どうやら天美が自分の席を見つけられずにいるらしい。

俺は席から入り口の方を見るときょろきょろしている天美を見つけた。

これ、俺が迎えに行った方が早いな。

天美を迎えに行くと天美はほっとしたような表情を浮かべて俺の方へ歩き始めたが目の前にある段差に躓いた。

俺は咄嗟の出来事だったため、天美の肩を支え何とか転倒することは防いだ。

転倒することは防げたのだが、半分抱きつくような形になってしまい慌てて天美との距離を取った。

「ご、ごめん。距離感がつかめなくて、、、」

「、、、ありがとう」

俺はまた躓かれても困るので天美に手を差し出した。

「、、ここ。つかまってくれ。」

「え、ええ。ありがとう。」

手を握ると天美の手は温かく、常日ごろからハンドクリームなどで保湿しているからかすべすべで俺は余計に気を遣いながら席まで案内した。

 席に到着すると天美も席に驚いた様子だったが、映画もあと少しで始まるためおとなしく席についていた。

俺も天美の隣に座ったがクッションの素材がふかふかだったためソファが沈み込み俺の肩と天美の肩が触れる距離にまで近づいていた。

「ご、ごめ」

「始まるから静かに。」

天美の方を見ると天美は真剣なまなざしでスクリーンを凝視していて特に気にしていない様子だった。

こんなことに動揺していたのは俺だけだったか~。最近の下田さんといい今の状況といい何だか距離感がバグっている気がする。なんだか、ばっちり壁際によけたはずが当たり判定されてキルされたときの感覚だなこれ。

俺も映画に集中するために背もたれによっかかると更にクッションは沈み天美との距離は肩のみならず腰あたりも触れていたが俺はなるべく気にしないようにした。

俺だけ意識してるのも恥ずかしいしゆっくり見るか。

ふと、天美の方を見ると天美は先ほどと同じ真剣な表情でスクリーンを見ていた。

そのまなざしは俺が良く知っている天美桃音だった。

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