球技大会が始動したのかもしれない②
「あれ、どういう意味だったんだろうな。」
朝起きると昨日の帰り道に天美に言われたことが頭を駆け巡っていた。
あれ、遠回しにお昼ご飯一緒に食べようって誘ってたのかな。わざわざ天美のクラスから一番遠い場所にある図書室にお昼ご飯食べに来るっておかしいもんな。
俺はあれこれ考えながら体を起こし顔を洗いに洗面台に向かった。ぼーっとしながら水で顔を洗うと頭が冴えてきてやはり天美が俺とお昼ご飯を食べるメリットが無さすぎることに気が付いて昨日の話は何かの間違いだったという結論にたどり着いた。
「お兄ちゃんおはよー。」
「おぉ、友里か。おはよ。」
「お兄ちゃんいつにもまして顔がぼーっとしてるよ?どした?」
「別に何でもねーよ~。友里も遅刻しないようにな。」
「あぁ。うん。お兄ちゃんお弁当いつもの所においてあるからね!」
「ありがと。」
俺は妹の友里に言われた通りいつも弁当が置いてあるキッチンのカウンターに目を向けるとなぜか弁当の容器が3つあることに気が付いた。
「お兄ちゃんー?それ今日2つだからねー?」
洗面台で友里から指示を受け俺は疑問に思ったがとりあえず容器を2つバックに入れた。
「じゃあ、行ってくるぞー。」
「はい!行ってらっしゃいお兄ちゃん!」
今日も可愛い妹から満面の笑みでお見送りされ俺は家を出た。
あいつなんであんなに今日ニコニコしてたんだ。
俺はいつも通り少し早めに学校に着くとイヤホンを付けてラノベを読み始めた。読み始めて数分すると教室の扉が開いた音がした。まぁ俺に声をかけてくる奴なんて内田か下田さんぐらいなものだから、俺は見向きもせずに気にせずラノベを読み続けていた。
「みーつしーま君!」
俺は背後からいきなり大きい声で名前を呼ばれ思い切り両肩を叩かれてよくわからない声がでた。
「わぁ!すごい驚いてくれてお姉さん嬉しいな?」
後ろを向くととても笑顔な下田さんが立っていた。俺は驚きすぎたからか、少し癖のある前髪の間から見える奇麗な瞳やくしゃっと笑った顔があまりにも奇麗だったからか、はたまたその両方からか俺の心臓は朝から大忙しだった。
俺の心臓、こんなブラックな現場でごめんな。どうかストライキとか起こさないでくれよ、、。
「下田さんか。人間びっくりしすぎたらあんな声出るんだな。」
「三ツ島君喜んでくれたみたいでよかったよー!」
「俺も下田さんが喜んでくれたみたいでよかったよ。」
下田さんは自分の席ではない場所に腰を掛けた。
「三ツ島君は朝早いね!」
「あんまり混んでる電車とか好きじゃないんでな。下田さんこそどうした?」
「私はなんでこんなに早いと思う~?」
「えっと、部活とか委員会とか?」
下田さんはまたくすっと笑うと、はずれーと言って席を立った。
そして俺との距離を近づけるとそのまま顔を近づけてきた。俺は距離を取ろうとそのまま背もたれに背中を付けたが下田さんはお構いなしに更に顔を近づけてきた。
そのまま俺の耳もとまで顔を近づけると
「ないしょ。」
と言って離れていった。
俺は何が起きたかよくわからずフリーズしていると下田さんはそのまま教室の扉の方に歩いて行った。
教室の扉を開けるとそのままこちらを見ずに
「答え合わせはいつでもどーぞ!」
と言いそのまま廊下を歩いて行ってしまった。
教室には下田さんのローズベリーのような甘酸っぱい香りだけが残っていた。
俺は読みかけのラノベを見始めることはなくただ何をするわけでもなく窓の外を眺め続けていた。
10分もすると教室も人が増え騒がしくなっていた。
「みっつおは!」
「おぉ内田か。おはよ。」
「昨日はもも怒らせちゃったねー。今日は挽回しなくては!」
「そだな。」
「ってみっつなんかあった?あの後そんなにももに怒られた?」
「いや、全然。別になんもないよ。」
「そー?ならいいけど。スローガンはばっちりだから!」
そう言いながらバックからくしゃくしゃになった紙を俺の机の上に出した。
えーっとスローガンは、、
【PASSION・PRIDE・POWER!燃えよ桐英学園!!】
ほーん、なるほど。お兄さん3つPが並んでるのよくないと思うなぁ。
内田はそわそわしながら感想を待っているようだった。
「うん、とてもいい感じがする。」
それを聞いた内田は不安そうな表情から一転、満面な笑みになりルンルンで自分の席に戻っていった。
俺は何とも言えないこの気持ちを静めるためにまたラノベを読み進めることにした。
午前中の授業が終わり昼休みになった。いつも通り俺は図書室のベランダでお昼を食べるべく妹が作ってくれたお弁当を持ち教室をでた。
昨日の帰りの出来事が脳裏によぎり、俺はいないとは思いつつもいつもより早足で図書室に向かっていた。深呼吸して図書室の扉を開けると、いつも通り静かで人は一人もおらず静かな時間が流れていた。
やっぱり聞き間違いだったよな。ゆっくりお昼を食べるか。
俺はそのまま図書室に入りベランダへ出るとそこにはいつもの見慣れた凛々しい佇いで座っている女子生徒がいた。
「遅いわ。こんなに可愛い女性を待たせるなんていい度胸ね。時代が違えば島流しになっているわよ。」
「遅刻しただけで島流しってちと厳しすぎませんかね。」
「でもあなたならその島でいろんなものを駆使して生き延びそうね。生命力だけは凄そうだもの。」
その生命体、なんか黒くてカサカサ動きそうだな。島の名前はみっつ島にしよう。そこで畑とか家とか作って生活しよう!あれ、なんか5人組アイドルが開拓しに来そうだな。今は3人だっけ。
俺が島づくりに思いをはせていると天美が自分の隣の椅子をトントンと叩いた。
「いつまでそこに立っているのかしら。こっちにいらっしゃい。」
「あ、あぁ。ありがと。」
俺は促されるままに座るととりあえず弁当をテーブルの上に置いた。
妹が用意してくれた弁当を開くとメモ用紙が挟まっていた。メモ用紙には「お兄ちゃん!弁当多めに作っておいたよ!友里えらいでしょ!(*´σー`)エヘヘ」と書いてあった。
「わざわざ友里さん多めにお昼用意してくれていたのね。あとでお礼を言っとかなくてはね。」
「あ、うん。そうだな。ん?え。友里さん?」
「あなた妹の名前まで忘れたの?」
「いや、違くてだな。あれ、俺妹の名前言ったことあったっけ?」
「言うも何も私のお手伝いしているクラスの生徒さんだもの。」
俺は朝に引き続きまたまたフリーズしてしまっていた。
「私の家、塾やっているの。私たまに手伝っているのだけれどその生徒さんよ。」
「え。えぇ!聞いたことなかった。」
「ええ。言ったことないもの。と言うか友里さんから聞いているものだと思っていたわ。」
俺が驚いている横で天美はせっせと自分が持ってきたお昼の準備をしていた。
「さあ。食べましょう。」
天美は自分のお弁当を開けると中には様々な種類のサンドイッチが入っていた。
「うわ、美味そう」
俺はとりあえず考えることを辞めて天美とのお昼を楽しむこととした。
「めちゃくちゃ美味しかった、、、」
「そう言ってくれて何よりだわ。友里さんのご飯もとても美味しかった。」
天美はお昼の片づけを終えると紅茶を淹れてくれた。
「天美は何でもできるんだな~。本当に美味しかった。ありがと!」
「大げさよ。サンドイッチなんて簡単にできるわ。」
「天美には簡単にできるかもしれないが俺にはできる自信が無い。」
「できない事に対してすごく自信満々ね。見ていて清々しいわ。」
「とにかく本当に美味しかった。他の料理も食べたくなるな。」
俺は天美が淹れてくれた紅茶を飲みながらサンドイッチの余韻に浸っていると隣に座っている天美が何かをつぶやいた。
「ん?何か言ったか?」
「、、、だから。」
さっきまでの堂々とした天美とは一転して紅茶の入ったカップで顔を隠して顔は赤色に染まっていた。
「昨日言ったでしょ。お昼、、食べるって、、。」
恥ずかしがり、瞳を潤ませながら話す天美を見て俺も天美を直視することは出来なかった。
「お、おお。やった。ありがと。」
俺は残っていた紅茶を一気飲みすると弁当箱を手に持った。
「よ、よし!昼休みも終わるからそろそろ戻ろう、、!」
「え、ええ。そうね。」
俺と天美は図書館を足早に出た。
「じゃ、じゃあまた放課後!」
「そうね、ではまた。」
何なんだあいつは。あんなの半側だろ。
俺は来た時よりも更に早い足取りで教室に戻った。
昼休みが終わるまで10分もあった。




