仲間が増えるとイベントが多くなるのかもしれない②
放課後。俺は図書館へ足を運んでいた。天美は鍵をもう受け取ったのだろうか。図書館行く前に職員室寄った方が良いのか悩んでいると後ろから騒がしい足音が聞こえてきた。
「みっついつの間に教室出てたの?全然気づかなかった!」
「俺は存在感消すアビリティ持ってるからな。そんじゃそこらのやつじゃ俺の存在を把握するのは難しいぞ。」
内田は不服そうな顔をしながら「普通同じ部活で同じ場所に行くんだから一緒に行くもんでしょ!」とバックで背中を叩いてきた。
「まあ、気が向いたら一緒に行く。」と言うと内田は屈託のない笑顔で「次からね!」と言いながら俺の隣を何やら嬉しそうに歩いていた。
数分歩くと図書館に着いた。図書館に入ると天美はいつもの場所で紅茶を飲みながら読書をしていた。
「お待たせ!もも!」
「こんにちは。内田さん。あと三ツ島君。」
「うっす。」
俺は軽く挨拶をするといつもの席に座った。あと三ツ島君って言ってたな。めちゃくちゃついでに挨拶されたな。
「ももきいて!せっかく今日放課後みっつと一緒に図書館行こうと思ってたのに、みっつ1人でさっさと行っちゃったんだよ!」
昨日はももちゃんって呼ばれてたのに今日いきなりももって呼び方になってることに驚きを隠せない天美は、もも、、と何度か呟いていた。おい、あいつ絶対友達いないだろ。友達付き合いは浅く広くより狭く深くとか言ってたけど、あいつ狭く浅くタイプだろ。
天美は「そうなのね、もも、、」とロボットのように相槌を打っていた。
そして、俺は朝に気になっていたことを思い出し内田に話しかけた。
「そういえばさ。気になってたんだけど内田入学したばかりの頃何回か俺のこと睨んでたよね?あれなんで睨んでたんだ?」
それを聞くと内田が気まずそうに「えーとね、それはね、、」と濁し始めた。あれ、これそんなに聞いちゃいけない感じのやつ?
すると横から天美が「三ツ島君。女の子を困らせるのはいい加減にしなさい?少年法が守ってくれるからと言って犯罪は犯罪よ?」といつもの口調で横やりを入れてきた。
「なんで俺が疑問に思ったこと聞いただけで犯罪になってんだよ。セクハラでもパワハラでもなんでもないだろ。」
「あなた、内田さんのこの反応見てわからないの?あなたにデメリットしかない情報なの。内田さんの優しさを気付けない罰ね。あなた今日から毎日内田さんの荷物持ちをしなさい。」
会話を聞いてた内田はなんだか焦ったように「いや、なんか大変なことになりそうだから言うけど、、、今は全然そんな風に思ってないからね?」と保険をかけてきた。この流れは嫌な予感がする。
「いやみっつさ、朝毎回イヤホンつけてなんか見てるじゃん、、?毎回笑い声結構聞こえててさ、、」
あー、あれてっきり自分の中だけで笑えてると思ってたし、まあ肩が震えてるくらいだろ、とか思っていたけど全然笑い声聞こえてたんだ。俺は何だか体の内側から熱くなるのを感じた。
「いや、今は全然気にならないんだけどね?そのときはなんだろう、不思議な人だなあって思って。」
「内田さん。もはやここで優しさを入れると三ツ島君は更に女の子に気を遣わせてしまったと、更に反省を重ねることになるからしっかり伝えた方が良いわ。スマホ見ながらニヤニヤしてて気持ち悪かった。だから睨んでいたと。」
「みっつ私はそこまで思ってないよ!?ただ不気味だっただけ!」
天美はくすっと笑いながら「らしいわよ。三ツ島君?」と言いながら何だか満足したような顔をしている。こいつ本当に人を辱めるのが好きなんだな。
「以後気をつけます。」
俺はそう言うとさっき買ったばかりの冷たいお茶を流し込んだ。
それから30分ほど経ったが図書館には人っ子一人来ていない。そろそろ帰る雰囲気が出始めていたとき「入るぞー」と言いながら篠崎先生が教室に入ってきた。
「おー、やってるな。感心感心」と言いながら俺の隣に腰掛けると、ちょっと頼まれごとをして欲しいと言ってきた。
「来月から始まる球技大会のことなんだがな、、私が球技大会の責任者ということもあって例年図書委員会に実行委員を手伝ってもらっていた。」
この流れは、、
「しかし、ご覧の通り図書委員は君達だけになってしまってる。ということは、どういうことかわかるな?三ツ島。」
「例年より篠崎先生の業務量が増えると言うことですね。」
「よくわかってるな!毎年8人ほど手伝ってもらっていたんだが、今年は3人のみだ。」
「おい。もうそれ頼み事って言うか決定事項を伝えにきただけだろ。」
篠崎先生は三ツ島は話が早くて助かると言いながら椅子から立ち上がり、「詳細はそこの紙に書いてある通りだ。天美、リーダーとして頑張ってくれよ?内田と三ツ島を上手く使うように。」と言い残し図書館を後にした。
天美は、はぁとため息をつきながら「仕方がないわね。」と呟きながら篠崎先生の置いていった紙をペラペラとめくっていった。
紙を一通り読み終えると天美は、「球技大会は今から丁度1ヶ月後のようね。主な業務は細かい決め事はあるにしても、その部分は去年と同様といった形を取ると紙には記載されているわ。私たちの仕事は練習場所のタイムスケジュール、クラス同士の練習試合の日程、大会当日の運営になっているわ。」と俺たちにわかりやすいように簡潔にまとめてくれた。
内田も、「なんか大変かと思ったけどももがいればなんとかなりそう!」と言っているし、実際のところ俺も同意見だ。
「あとは、会議が早速明日の放課後から始まるみたいね。体育委員と連携するみたいだけれど、この紙によると球技大会の実行委員の委員長を私が担当で副委員長を内田さん、三ツ島君は書記と会計と雑務の指示と当日のタイムキーパー担当と書いてあるわ。」
「おい、俺だけなんかおかしくないか?どう考えても業務量の差があるような、、」
「あら、良かったじゃない。あなたが生まれて初めて人から頼られているのよ?私のサポートをよろしくね?雑務島君。」
「なんだその島。変なあだ名つけんな。」
そんな俺と天美との会話を聞いていた内田はけらけらと笑いながら、「みっつ一緒に頑張ろ?」と微笑んできた。内田もこうして見ると愛嬌はあるし外見も整っている。不覚にも可愛いと思ってしまい、すぐに目を逸らしながら適当に「よろしく。」とだけ言っておいた。
そのとき天美がむすっとしていたような気がするが、内田と話していて機嫌が悪くなる理由もわからないし、そもそも俺と一緒の時点で機嫌はもう損なわれているのかもしれないと思い、俺はそっとしておくことにした。
天美が「ではそろそろ帰りましょう。」と言い席を立った。それに続くように俺と内田も帰り支度を済ませて図書館を後にした。図書館を出ると天美は職員室に鍵を返しに行くからまた明日と言ってきたため、俺もまた明日なと言って帰ろうとすると、内田が「みんな同じ駅行くんだから一緒に帰るでしょ?」と俺と天美の考えに無いようなことを言ってきた。天美は「まあ、私はどちらでも。」と言い俺も「どっちでもいいぞ。」と言うと、内田は「じゃあみんなで帰ろ!」と何だか上機嫌な様子だった。夕陽に照らされた、昼間の騒がしさが嘘のように静かになった廊下を三人で歩き始めたのだった。




