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なぜ借金があるのか?

『愛様、ちょっと今日の訓練終了後に相談があります。』


アイツからそうメモを渡された。

退勤後、1時間はかかるある駅の喫茶店で落ちあった。


『愛様、すみませんねえ。お忙しいところ。』


『べ、別に忙しいわけではないですから、、』

こんなクソ野郎に敬語を使わなくてはならない。

機嫌を損ねると何をしでかすかわからないから、にこやかに対応する。


『そうか。そうだよねえ。彼、もういないんだっけ。寝取られちゃったんだよね。』


ヒッヒッと声をあげて笑う光武。

あくまでにこやかに。

『わ、忘れてしまいましたよ。そんな昔の話。』


『そうかい。そうかい。てっきり寂しくて死んじゃうんじゃないかと思ったよお。』


『それで、今日は何か?』


光武はこちらを見ながらコーヒーをすする。

私の表情の変化を捉えるように、いつなんどきでも油断できないように。


『連れないなあ。愛様。もう少しお話したいけど、まあいいや。最近ね、灯、面白くないんだよ。』


『そ、そうなんですかあ。』


『気にならないの?未だに加藤の家には毎晩行ってるあのオンナを。』


毎晩。まだ関係は続いているということか。


『加藤はさ、発情してんだけど、灯は拒んでいて最近こんな写真が撮れないのよ。』


光武が指先で摘むように持って、見せてきたのは私と加藤が写っているある夜の写真。


こんなクソ野郎に抱かれていたと思うと吐きそうだ。


『うぷっ・・・。』


『あらあら、えづくよねー。あんな真面目そうなさ、新人がただの便器を漁る、勃起マシーンなんだから。』


ケラケラ笑う光武。

この男は、非常に人の感情を逆撫でするのに長けているようだ。にこやかに対応しないと。


『あれれー?顔がちょっと引き攣ってるかな?何?ムカついてんの?』


光武の顔から表情が失われた。

まずい。

にこやかに。にこやかに。


『あ、すみません。加藤のこと思い出すと、、』


『そっか、そっか。仕方ないよねえ。』


ケタケタ笑う光武。


『それでね、なんか面白くないからさ、灯をさ、愛様の副業に誘ってやって欲しいのよ。』


『私の・・・。』


『うん、愛様の副業。』


『で、でもどうやって??』


『灯ってさあ、おつむ弱いからさあ、ちょっと細工すればいけると思うんだよね。』


『細工?』


『偽の借金の存在を作る。灯が連帯保証人ってことでさ。』


『で、でも、そんなの灯があいつに相談したら、、、』


『大丈夫だよ。あいつと会わない日に郵便受けに投函すれば。それに、あいつと灯は今、順調なんだ。灯だって水をさすような事はしないさ。』


『・・・・。』


『それに愛さんなら大丈夫だろ?あいつに万が一相談されてもさ、手紙の送付元をさ適当な消費者金融にしておけばさ、詐欺に引っ掛からなくて良かったね、くらいで済むよ。』


確かに、詐欺っぽい手紙だったりメールが横行している昨今ならそんなもの1つで喚く人間なんていない。


『愛様の副業の手伝いをしてくれれば、お小遣いだって入るし、僕だって何もない灯より副業をしている灯を盗撮した方が楽しいからさ。』


この光武という男もまた、盗撮をやめられない性依存なのだ。ただ私は、この男に副業という弱みを握られている。やつの盗撮によって。


『いやあ、訓練所の職員っていうのはどんなやつなのか盗撮してみたらとんでもなかったね、愛様?』


『・・・。』


『同僚との性行為の写真くらいなら、まあただの被害者で終わるけど、、愛様、アンタの副業は訓練所の職員、しかも時期後継者としてはだいぶまずいケースだよ?』


わかっている。だから、私はこんなクソ野郎に従う。だから、今回もあんな話もしたくない、ビッチの手助けをするようなフリをしなくてはならないのだ。

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