成果
『灯、今日はどうだった?』
『き、今日はね。なんとか、我慢できた。』
『よくやった。』
蓮が頭を撫でてくれる。嬉しい。
確かに営みで得られるものは大きいけど、
し終わったあとの無力感、虚無感がまたオトコへと駆り立てるから際限ない。
我慢して蓮に頭を撫でてもらえる。それだけで今まで得られることのなかった幸福感に包まれる。
『えへへ。』
思わず笑みが出るのが自分でもわかる。
その日は、蓮と深夜の喫茶店でコーヒーを飲みながらゆったり過ごす。
『今日はね、ずっと看病してたの。』
『ああ。』
『何回も何回も、したくなった。でも、蓮を裏切りたくないからとどまったの。』
『そうか。』
『だからね、今はとても苦しいけど。』
『ああ辛いよな。』
『でも、蓮のために・・・・。』
♦︎♦︎♦︎
俺の為に。
屈託のない笑顔を向けてくる。
悪い気はしない。灯は殺人を犯しているし、
世間一般で見たら怖い存在だろう。
彼女に群がる男達はあくまで彼女の性依存症という抱えている課題を利用しているだけで、彼女を支えたいという男はいない。
だから、そういう性的な下心がない俺を信頼してくれてるのだろう。それが、他の人とは違うから、恋愛対象として、気になっているだけなのだろう。
つまり、それは彼女にとっては性的なアプローチによる承認欲求ではないという、ただそれだけだった。
彼女は他者からの承認がないとまた道を踏み違える。
今はそれで良いのだ。
だから、心をいくらでも砕いてやる。
それが、俺のミッションだから。
『そろそろ帰るか?』
『うん。』
『1人で大丈夫か?』
『だ、大丈夫。』
『無理なら着いていくが。』
『だ、大丈夫。』
『わかった。また明日な。』
会計を済ませて喫茶店を出る。
彼女の闘いは始まったばかりだが、今日は特段頑張った。
『また明日な。』
目線の高さを合わせるように膝を曲げて、頭を撫でる。
『う、うん。おやすみなさい、蓮。』
恥ずかしそうに顔を紅くして目線を伏せる。
こういうリアクションも増えていくといいな。
そんな願いを込めて二手に分かれた。
『またねー!蓮。』
大きく体を揺するように手を振る。
俺は軽く手を振り返した。
こんな日を積み重ねていけば、
灯はきっと・・・・。




