お店が好きだから、ここしか居場所がないから
『しばらくお店はお休みかあ、、、』
姉御が死んだ。
死体を目の前にして、私は冷静だった。
店長にチャットをして警察を呼んでもらい、
第一発見者として立ちあった。
姉御・・・。
寂しさが募る。告別式ではひとしきり泣いた。
店長にいたっては、半狂乱状態。警察の調べが入るというのもあったが、、それより店長が再起不能だった。
お店を見に行っても、ずっと姉御の遺影を眺めながらお酒を飲んで泣いている。たぶんもうだめだろう。
姉御が死んだのも悲しいが働き口がなくなるのは痛手だ。
私はあのお店が好きだ。
耳が聴こえなくとも、話せなくとも、お客様と触れ合うことができて、なんら区別なく働かせてくれる。耳が聴こえなくても働ける場所はあるだろう。ただ、あのお店以上に自分を出せた場所はなかった。
店長を持ち上げないといけない。お客様との交流も続けないといけない。
『よし!』
私は立ち上がった。
リアル店舗で関われないなら、オンラインだろう。今流行りのVRゲームに目をつけた。
『narrow world monologue』
かなり没入感があり、普通にリアルで話ができるようなゲーム。実際に、企業のマーケティングツールとして使っているようなケースもあるようだ。
『店長。』
『ヒクッ!なんだあ、リュウ。お前も、姉御とお、、酒を飲みたいかあ?』
『店長、姉御と私の3人で作ったお店ですよ。このままでいいんですか?』
『うるへえ!じゃあお前がよお、店長でもなんでもやればいいだろう、、、うう、あねごぉ。』
『まだお店は開けないんですかね?』
『バイトの子もよぉ、こう1ヶ月も閉めちゃあ辞めちまったよ。もうアタシ1人さあ。』
『店長。』
パシン!!
頬を叩いた。
『姉御が泣いてますよ。こんなんじゃあ。』
『いてぇな・・・。てめっ!』
私の襟首を掴みかかる。
『殴って気が済むならどうぞ。殴ってお店開ける気ならどうぞ。さあっ!さあっ!』
『ちっ、、、しらけちまったよ。』
襟首を離し、グラスに手をかける。
グラスを取り上げる。
『私は・・・私は・・・お客様も新しいメイドの子も全部引っ張ってきますから。店長がお店を開けざるを得なくしてやりますから!』
店長と今、議論してもだめだろう。
実力行使だ。お客様もメイドもたくさん連れてきて、やらざるを得ない状況を作る!
今、私がやれることをやろう。