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コロと手袋

作者: 七星銀河



今日はお小遣いの日です。


仔犬のコロはしっぽを振って大喜び。ママの側から離れません。




でもママは心配。


お小遣いのたびに買っていた宝物箱のビー玉が、最近増えていないからです。



『ビー玉は飽きたのかな。なら何に使ってるのかしら?』



ママは不思議そうに首をかしげました。




そんなママの隣で、コロは小さな体をソワソワさせていました。


ママが猫のおばさんのお店にある綺麗な模様の手袋をじっと見ていたのを覚えていたのです。


まもなく寒い冬が来ます。その手袋を買ってあげたいのに、お金がまだまだ足りません。



『ママはあの手袋がすごく欲しいんだ。買ってあげたいなあ』



コロの思いは外の寒さが日々増すごとに、どんどん強まりました。





今日はとくべつ寒い日になりました。お外でママの吐く息も真っ白。お家で水仕事をする手も冷たそうです。



『ママ、寒そうだな』



コロはあることを決めました。急いで自分のお部屋に向かいます。



そして、ためていたお金と宝物箱に入れていたビー玉を袋につめて、すぐにお買物に出発しました。





『お金とビー玉をあげる。手袋をください』



かわいい仔犬のお客さまの発言に、お店の上品な毛なみをした白猫おばさんは目をぱちくり。


先客のインコのおじいさんもぱちくり。



でもビー玉の入った袋を受け取って、中身を机の上に広げます。



『ごめんね、あとほんの少し足りないみたい』



もちろんビー玉で手袋が買えるはずがありません。


それでも優しく白猫おばさんは言って、お金とビー玉を返してあげました。



しかしコロの顔は耳もお髭もしょぼんと落ちて泣きそうです。


『みゃあ』と白猫おばさんはひと鳴き。インコのおじいさんも歌をうたってコロを慰めました。



『コロ、どうしたの?ここで何をしているの?』



ママの声です。


コロは後ろを向いて半泣きの顔を見せました。




コロから話を聞いたママは聞き終えると優しくコロの頭を撫でて言いました。



『ありがとう、コロ。ママはとっても嬉しいわ。でもね、ママはあの手袋をあなたに買ってあげたかったの』



お互いがお互いのために同じものを買おうとしていたのです。



コロとママは顔を見あわせて大笑いしました。




ママは自分のカバンからお財布を取り出します。


でもあの綺麗な模様の手袋がありません。他のお客さんが買ってしまった後でした。



『また今度ね』



コロは大きく頷いて、猫おばさんとインコおじいさんにバイバイをし、ママとふたりでお店を出ました。





帰り道、コロはビー玉のように大きな飴玉を買ってもらいました。


すぐに頬はふくらみ、あまりの美味しさにしっぽを振り回して上機嫌。



手袋はなくてもママもコロもあたたかい気持ちでいっぱい。寒さも気になりません。


繋いだ手の温もりも感じながら、パパへの土産話を胸にふたりは仲良くお家に帰りました。





おしまい。


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