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ヲタッカーズ5 洗濯女の肖像

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!


聖都の危機にアキバのCharlie's angels

"ヲタッカーズ"が立ち上がる!

オトナのジュブナイル第5話です。


今回は、秋葉原発のメジャーアイドル"でんき組.com"に横領疑惑?ところが、真犯人は別にいてハメられた?


マネーロンダラーとして真犯人に迫る"ヲタッカーズ"の前に政商シンジケートの女ボスが現れて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 でんき組.com


御屋敷(ミユリさんのバー)に顔を出すと、今宵も"ヲタッカーズ"がガールズトークにハナを咲かせてイル。


「マタハ、新しいマウンテンバイクを買ったのね?」

「中古ょ」

「彼とヲソロだった前のバイクは捨てて、なけなしのバイト代を叩いてやっと買いました。でも、やっぱり別れは辛いわ」

「笑って、マタハ!笑うのょ!で、テリィたんの方は、例のデートどうだったの?」

「デートじゃナイょ。エリズの防衛組織から仕事でお呼び出しだ。どうしても"ヲタッカーズ"に何か仕事を付与したいらしい。エリズ司令官の口振りからして、かなーりヤバそうだ」

「タマには"やりたくねぇ!"って断ってみたら?テリィたんって江戸っ子ナンでしょ?」

「ソレじゃいつもと同じだ。僕の気が変わるまで誰かが脅されるwで、誰でも良いンだけど泊まり込みでミユリさんの継母(ママ)を護衛をしてくれないかな?」

「え?ウチの継母(ママ)ですか?もう、アキバに足を踏み入れない約束だったのに」

「政権が変わって、色々デカい取引が始まるみたいで何日か滞在スルみたい。で、エリズはピリピリしてる」


あ、ミユリさんの継母(ママ)って、国際的な政商シンジケートを仕切ってる女ボスなんだ。


「じゃ、マタハ。よろしくね?」

「えっ?私?失恋直後ですが、即実戦配備ですか?マジ?」

「マジょ。お願い」

「いくらマジでもビールぐらい飲ませて!コレだけは後で飲むワケに…あ、ミユリ姉様のお母様!」


マタハが差し出されたスマホに最敬礼する。


「御無沙汰してます!…えぇまぁなんとか。実は彼氏と別れてから姉様の御屋敷でクダ巻いてたら鬱陶しがられちゃって、そちらに泊めて頂けないかなって。何かアキバにおられるとか…はぁ元気が出るまで2日ほどかな?そりゃ良かった!助かりました。ハイ。姉様と変わります」

「そぉなのママ。鬱陶しいのょ…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


で、マタハがアキバで最高級のタワーホテル"24"のプレミアムスイートへと出向くと…


「あら?貴女、何してるの?」

「わ!待って!何で銃を向けるの?」

「襲撃の下見?盗聴器の仕込み?アンタ、何処のスパイ?」


怪しい女が大画面液晶テレビの裏で、色とりどりのコードに埋もれてるw

しかも…ヘソ見えの短い丈のトップスにフンワリ広がるパニエスカート!


ふわふわキュートな…アイドルかょ?!


「アキバから世界のヲタクに電気をお届け!私達"でんき組.com"でぇーす!」

「え?1人なのに私"達"って…」

「突っ込むトコロ、ソコ?とにかく!私は幼馴染のミユリに会いに来ただけょ」

「ふうん。そーなの?とにかく、立って…」


拳銃を構えたママ、マタハは室内に大勢いる黒服の護衛に目配せスルが誰も反応しナイw


「ダイニングでデッキを見つけたわ。まだ動くから、コンシェルジュを呼ばなくても…」


マタハが慌てて拳銃を隠すw


「あはは。ミユリ姉様のお母様!お邪魔してます」

「あら、マタハ。いらっしゃい。こちらメメメょ。おや?もうお話ししてるのね?」

「えぇオバさま。マタハさんって実に楽しい方なのょ(拳銃持ってるしw)」

「そうでしょう?でも、メメメのお姉様とはミユリはソリが合わなくてねぇ。喧嘩ばかり」

「そうでしたね」

「今2人で、このスイートにホームシアターを作ってたトコロょ。なんとかなりそう?」

「うーん。やはりコンシェルジュを呼びましょう」

「ホント?イケると思ったのに」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


早くも、こりゃダメだと直感したマタハからSOSが飛び、結局ミユリさんが駆けつける。


「どしたの、マタハ。何か用?」

「あ!ミユリ姉様。お母様のトコロにお客様なのです」

「ミユリ、覚えてる?メメメょ」


スイート内外に黒服の護衛が大勢いて防備を固めてるがミユリさんは完全にフリーパスw


「メメメ?!」

「久しぶり。元気そうね」

「ミミミはどーしてる?」

「姉貴は、25の時からズッとムショょ」←

「そりゃ残念ね」


継母(ママ)とマタハが立ち上がる。


「ね?メメメが貴女とユックリ世間話でもしたいって。私達はお買い物ょ。さ、マタハ。行きましょ」

「そうでした。ビデオデッキを買わなきゃ」

「え?え?継母(ママ)は逝っちゃうの?」

「姉様、私達は買い物があるの」


継母(ママ)が目を細める。


「2人共仲良くね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


2人だけ…と逝っても周囲は護衛だらけナンだけど、ミユリさんがオズオズと話し出す。


「何してるの?ってアイドルか。一目瞭然ねw」

「きっと聞いたら驚くわ。騒ぎを起こしてばかりのズベ公だった私がね…地下アイドルからガラスの天井を破り、メジャーへ飛び出したの!昨夜も"葡萄館"を満席にしてライブしてたのょ!コロナで定員は半分だけど」


"葡萄館"は"武道館"と違ってせいぜい20人も入れば満杯の小さな箱デス。念のためw


「へぇえ」

「"でんき組.com"知ってるわょね?」

「…カーラジオが壊れててw」

「まぁとにかくメジャーなワケょ。で、昨夜"葡萄館"の後でセンターのマリンから呼ばれてチャリティー口座から2億円が消えてると言われたの。間違いだろうと調べてみたけどホントにない。記録には私の名前。ハメられたわ!」

「犯人に心当たりは?」

ジャーマネ(マネジャー)のバディ。他に口座をイジれる人はいないわ。デビュー前からマリンを支えて今じゃ彼女の右腕、唯一信頼されてる女ょ。下手に彼女を疑えば、スケ番上がりのマリンに殺されちゃう」

「殺されるって…ソレってリアルな話?」

「マリンは、元ストリートギャングょ。犯人が私だと知ったら、15分後には消されてるw」

「うーん。法廷会計士とか入れた方が良さそうね?」

「必要なのは帳簿なの。ソレさえあれば身の潔白が証明出来る。で、その帳簿は、会社のオフィスにアルわ」

「え?もしや…私に忍び込んで盗んで来いって話?まさかね?」

「お願いょ。当座の活動費として100万円アル」

「…わかったわ。頼んでみる、テリィ様に」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


青天の霹靂だw


「えっ?僕が忍び込むの?何で?」

「だって、テリィ様は"でんき組.com"を御存知ナイから、面も割れてナイし…」

「そーゆーミユリさんは御存知なの?」

「モチロンです!"でんき組.com"は、服のブランドも持っててイケてるランジェリーとかもあるンですょ…今夜、御披露出来ちゃうカモ」


そ、そうか…じゃあヤルか←


「で、今回のギャラは?」

「あら?今、ホットドッグをおごってますけど?」

「え、コレ?しまったベーコントッピングにしとくンだったw」


ココは"マチガイダサンドウィッチズ"だ。僕達のアキバの居場所(アドレス)でチリドッグが最強!


「オフィス正面の暗証番号は、メメメに聞けばワカるからドアは開きます。でも、中が防犯カメラだらけで」

「どんなカメラなのかな」

「無線式です。でも!まぁソコは何とかしますから!」

「でも、戦術(タクティクス)βはチリドッグ1本じゃ済まないゼ?」

「え?まだ召し上がルンですか?」

「育ち盛りナンだ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「立ち止まらないで!進んでください!」


銀行の前で、万世橋(アキバポリス)の制服警官が叫んで、建物の中からは、人々がゾロゾロと出て来る。


ビルから人を追い出すのに、火災報知器って実は結構使えない。

ホントに焰を上げ萌えてなきゃ、人って案外気にしないモンだ。


でも、銀行への爆破予告となれば話は別だ。

みんな目の色変えて我先に飛び出して来る。


「ヤルなー。ミユリさん、何て逝ったの?」

「ヲタクの接客は最悪で、頭に来たからトイレにリモコン爆弾仕掛けたって。良い感じで避難命令が出てますね。爆発物処理班は来てますか?」

「うん。今、アンテナ立ててる」


爆発物処理班は、だいたい強力な電波妨害装置を装備してイル。

広範囲で電波を遮断し、遠隔操作による起爆を阻止するためだ。


その結果、あらゆる無線通信が遮断されるから、使えなくなるモノがある。

例えば携帯電話。例えば…ワイヤレスの防犯カメラ。全部"死んでる"ょw


僕は、正面から避難する人の波に(あがら)いながら楽々とオフィスに侵入スル。

後は社員のコピー用紙盗難を防げる程度の鍵をいくつか開けたら終わり。


目指すキャビネットにたどり着いたらカンヌキを開けて、ファイルを探し、写メを撮る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「おい!お前ら!何でココにいる?」

「爆弾が仕掛けられたとかで、警察が我々も避難しろとw」

「バカ者!中性子爆弾が落ちても逃げるな!お前らガードマンだろ?高い給料払ってルンだ。持ち場に戻れ!早く!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


拳銃を抜き戻って来る元ギャングのセキュリティ達の足音が近づく。

スパイ映画で使われる通風口の幅は約45センチで幼児でも通れない。


となると、イケそうなのは天井からトイレか物置に抜ける手だが、あいにく懸垂が苦手w


「コンコン」


外から窓をノックするのは"ヲタッカーズ"のエアリ。彼女は妖精で"飛んでる"。

僕は、意外に巨乳な彼女の胸の谷間に顔を埋めて木枯らし吹く空からマンマと逃走。


第2章 マネーロンダラーズ


翌日の昼下がり。夕方まで誰も来ない御屋敷でメメメに得意満面、ファイルを見せる僕。


ところが…


「あぁコレじゃどーしよーもない。ファイルに何も載ってナイなんて!ソレとも…テリィたん、ホントに隅々まで探したの?」

「ええっ?!探したょ?」

「ああっ!マリンに何て説明すれば良いの?これ以上、引き延ばすのは無理だわ」

「バディのファイルには、日焼けサロンの事業案内と目論見書が入ってた。他にビキニカーウォッシュの店のもある。何れも、金を洗濯するのに使う気だ」

「金を洗濯?あのマネーロンダリングって奴?」

「うん。バディはウマいコト、メメメが金を盗んだように見せかけたけど、普通は突然口座に2億円振り込まれれば…」

「そりゃ怪しまれるょ」

「だから、オモテの架空商売を探してる。リアルで稼いだように見せかける、架空事業を物色中ナンだ」

「ふーん。でも、ソレって私と何か関係アルの?2億円を取り戻すコトと、どう結びつくワケ?」

「金の洗濯を焦るバディに付け込む隙が生まれる。僕がバディに接近し金を洗うなら任せろと持ちかけよう。渡りに船と飛びつくバディをマリンに見せルンだ」

「なるほど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「セリナ!元気?この前の貸し、返してもらって良いかな?」


神田川沿いのファミレス。


うららかな昼下がり、穏やかな川面を見下ろす席にセリナはいる。

その席は彼女が援交シンジケートをやってた頃からのお気に入り。


今や彼女はアキバ屈指のマネーロンダラーw

そして、僕は彼女に大変大きな貸しがアル←


「あら。テリィたん独り?ミユリさんは?」

「誰かに紹介してくれるだけで良いンだ。一両日中にバディって女がセリナの同業者に声をかける。その同業者に僕のコト、売り込んどいて欲しいンだけど」

「ホント、テリィたんと関わると面倒なコトばっかりね?どうせまた大騒ぎになるンでしょ?私の信用はどーなるの?引き合わせた私が責められるのょ?」

「大丈夫!今回は(もw)別人だから。アキバの外から流れて来た友達の友達ってコトにスル。絶対に迷惑はnothingだ。男の約束」

「ダメダメ。もーダマされないから!」

「で?」

「あぁ。間に何人か挟んで紹介…かな?」

「で?」

「…わかった。でも、高いわょ」

「で?」

「仲介人を探してターゲットに遭わせて50万。ソイツに何も起きナイなら30万でも良いけど」

契約成立(マイン)。じゃ50で」

「…うーん何か起きるのね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


おお。マタハがエプロン姿でお出迎え。

萌え萌えだ…裸エプロンじゃナイけど←


「あ、テリィたん。ちょうど良いわ。味見して。はい、フゥフゥあーん」

「え?何コレ?メイドカフェの新サービス?」

「マドラスカレーょん。どうょ?1口だけ。美味しいっしょ。姉様のお母様と料理番組を見てたらハマっちゃって。可愛い奥さんになれるかな?」

「…ソレより護衛の方はどうなってンだ?」

「余り出番なし。中も外も護衛だらけだし。スナイパーチェックは1時間おき。元カレのコトを1人で考えたいと言ったら速攻で信じてもらってる」


ココで継母(ママ)さん登場。


「なぁに。内緒話?イチャイチャしてマタハのエプロン姿に萌えてるの?」


鋭いょ継母。ミユリさんと血は繋がってないハズだが…


「あはは。そんなンじゃナイです」

「アラそう」

「あぁまたミユリさんに変なコト、吹き込まないでくださいね」


ココからは小声で。


「マタハ。頼んどいた偽造IDは?」

「出来てるわょ。如何にも胡散臭いお金転がし系の不動産デベロッパーでしょ?もうオデッサ機関の総力あげちゃったから。ベルリンのギャングとの繋がりも匂わせておきました。で、コレはテリィたんの御名刺。コレで準備万端?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ポールに半裸ムキムキの執事が絡む。

裏アキバにある執事ストリップバー。


ターゲットへの接近は、読みが全てだ。何で動く人か、人生に強気か弱気か。

事前に調べてわかるコトも多いが、大抵は最初の数秒で得られるコトが多い。


今回のアプローチの決め手は…何だ?


「アンタがバディ?」

「ロメル?」

「そうだぜ。会えて嬉しいな。アイドル業界だって?羨ましいな。儲かって笑いが止まらナイだろ?最近のヲタクは金を持ってるからな」

「経営管理なの。でも、今宵は仕事の話はしないで」

「モチロンさ。この世界じゃ良くある話だ。じゃ飲もうか。あ、お兄ちゃん。ジョニ"青"をオンザロックで」

「かしこまりました。お館様」

「ひゃあ。こりゃベルリンとは随分違うねぇ」

「ソレでアンタ、不動産業界じゃ1番のやり手って聞いてルンだけど」

「まぁ建設屋ナンてモロ景気に左右される商売だからな。ところで、アンタ、金を洗浄したいそうだね?」

「さぁね。どうでしょう」

「お?慎重だな。まぁ乾杯。で、投資した金が綺麗になって戻るのは半年後。追跡不能で利益は3から4割増になって戻ると言ったら?その中には、俺の取り分も入ってるが、どうだ?」

「絶対裏があるわょね」

「ねぇよ。週末までに2億を用意するだけだ」

「2億を今週中に?ウソでしょ?」

「おいおい。随分と普通な人間のリアクションだな。俺は千万単位のケチな仕事はしねぇンだ。そんな小さな額で勝負しても見返りは小さいし、そもそもヤル気が起きねぇ。アンタもモノホンのビジネスを俺とヤル気になったら来い。今宵は帰る。ココは奢ってやるょ」


文字通り席を蹴って立ち上がる。

大体ココで落ちる。今回もそう。


「あ、待って!待ってょ!額じゃないのょ!落ち着いて。座って?問題は時間なの」

「そんなコト逝われても、不動産投資はタイミングが命だ。だから、マジでカラダ張って仕事してンじゃねぇか!」

「だったら物件、見せてよっ!知らないモノに投資なんて出来ないし!」

「おぅモチロン見せるとも」


乾杯。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


半年も売れ残ってるマンションなら簡単に空き部屋に入れる。

ピッキングの必要もない。電話イッポンで鍵を借して貰える。


「アキバの不動産市場は金のなる木だ。今、狙い目なのがこの物件でねぇ。相場の1割ちょっとで買い叩けるハズだ」

「まるで空き家じゃない?何もナイわ」

「そこだっ!いいか?バディ。俺はアンタから受け取った現金で、無駄に高い御影石のカウンターや家電やカーペットを買う。で、所有権を売って転売すれば、領収証は無いし記録も残らないのに、金だけが全部真っさらになって戻って来るって算段だ」

「…わかったわ。考えてみる」

「おいおい。眠たいコト逝うな。考えてる暇ナンかねぇよ?他にも2人検討中の旦那方がいるンだ。乗るか?逃すか?どうするンだ?今、決めろょ!」


都合よくスマホが鳴る。


「急用よっ。また連絡するわ」

「バディ!何もかも流しちまうぞ」

「待って。必ズ連絡スルから…」


僕を指差し現場を去るバディ。

僕は肩をスボめてみせ見送る。


バディが消えたらメメメに電話だ。


「メメメ。何が起きた?」

「10分後に緊急会議ょ。マリンが激怒してるわ」

「バディも向かった。何だろう」

「わからないわ。ねぇ私はどうしたら良いの?」

「ソレはメメメが決めろ。でも今、逃げたら一生逃亡生活だぞ」

「残るわ」

「電話は切るな。僕達も話を聞く」

援護(エスコート)してくれるの?」

「いや。最善は尽くすケド…ヤバいと思ったら自分の責任で逃げろ」←


第3章 洗濯女達の闘い


アキバドリームだw


裏通りの路地から次の路地まで届きそうな長いリムジン。

真ん中辺りのドアが開き、ワラワラとファミリーが出る。


お子ちゃまではないょ。ボディガードにマネージャー、セクレタリー、メーク、付き人。

そして、独りだけ純白のスーツにゴールドの腕時計、ド派手なネクタイにワニ柄の靴は…


マリンだw


決してメジャーでない御屋敷(メイドカフェ)の卒業、売れない地下アイドルやって確か同棲もしてたしwソレが今じゃロングリムジンを降りるや、颯爽と肩で風を切りオフィスへと消えて逝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「忠誠心。リスペクト。それにプライド。この3つが私がこのレーベルを築くのに使ったレンガの名ょ。お陰で今、プラチナディスクが並ぶこの壁があるわ。何をビクビクしてるの?ビクつく理由のある人はいる?ふん。白状するなら今ょ?どうしたの?がっかりだわ。驚きはしないけど。マカス。何かわかる?アフターバーナーのデビューアルバムょ。ダブルプラチナ。Mは誰のロゴかしら?」

「マリンちゃん」

「私ね。給料を支払うのは?」

「もちろん、マリンちゃんょ」

「その通りね。じゃあ説明して。どうして、ストラテジーレコードに自分を入れればアフターバーナーを渡すナンテ言ったの?」

「ストラテジーレコード?一体何のことだか私には…マリンちゃん!」

「交渉してるトコロをバディが見たの。アーティストと私のお金を盗んだも同然よ。バディ、盗っ人はどーなるの?」

「罰を与えられるわ」

「そーね。罰ね。メメメ、どう思う?」

「マリンちゃん。ココは大勢の目のある会議室ょ」

「なるほど。今のは利口な意見だわ。じゃ、マカス。サッサと出て行って!」


逃げ出すように、ソソクサと立つマカス。

その頭にプラチナディスクを振り下ろす!


バリン!血塗れのプラチナの破片が飛ぶw


「忘れ物よっ!欲しかったンでしょ!持って逝けば?!」

「血が!血が出てる!私が悪かったわ」

「誰か破片を片付けて!みんな出て行って!グズグズしないで!…メメメ、貴女は残って。例のお金がどうなったか、わかった?」

「ええ。ああ。銀行のミスらしいわ。ちゃんと処理しておきます」

「2日あげるわ。現金を見せて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


直後にメメメから怯えきった声で電話w


「聞いてたわょね?」

「あぁ聞いてた。バディは、ますますマリンの信頼を得たワケだ」

「お金が戻らなければ、間違いなく私は殺されるわ」

「ソンなコトはさせない。今夜僕達はバディに会うから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


とゆーワケで僕達も必死だが、バディもテンパってる。場所はフザけた執事バーだけどw


「コレはベルリンの数字だが、アキバなら相場が下がってるから、もう少し良いハズだ。デカい決断なのはわかるが、返事は今、欲しい」

「お金を動かす時は、常に私の許可を取ってもらえる?」

「モチロンだょ」

「私にょ?」

「そうだ」


ソコへさっきの半裸執事が僕にヤタラ日傘がテンコ盛りになってるカクテルを差し出す。


「テリィ様に…」

「え?でも頼んでナイょ…あっ」

「最近手を広げ過ぎじゃナイの?ムキムキの執事が教えてくれたけど、今は不動産も扱うンだって?…テリィたんは、タチの悪い詐欺師よっ!常に国税局査察部(マルサ)の目が光ってると思って!あら、貴女は誰?次の投資家?査察部(ナサケ)に張り込まれたくなかったら、テリィたんには近づかない方が良いわ!」


元カノのエリスだ。何てコトをw

バディから書類を突き返される。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「え?それじゃ、バディはもうお金を出さないってコト?」

「マルサが僕を監視してると思ってる」

「マルサ?もう時間がナイの。マリンの言う通り、あと2日で金を元に戻さなきゃ」

「しかし、ココで焦るのは良くないなぁ。ミユリさん、頼む」

「ええ、任せて。メメメ、話があるの。マリンのランジェリー部門って、社員割引とかアルかしら?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


正体がバレそうになったら、攻撃は最大の防御ってコトで。

自分のコトは棚に上げ相手を徹底的に責めまくるしかナイ。


「この腐れ女!その間抜けなツケマ全部抜いて目に突き刺すぞ!よくもやってくれたな!」

「え?一体何の話ょ?」

「アンタと会ってから、マルサがケツに張り付くようになった」

「私は何も…」

「ソイツを俺に聞くか?!奴等オフィスにも取引場所にも来やがった」

「マルサが?私はマルサなんかに…」

「冗談で済む話じゃねぇ。取引は全てヤメだ。投資家にも逃げられた。俺の金を隠さねぇと。マルサに手が出せないよう損失覚悟で海外に移すしかねぇ。面倒かけやがって。俺の評判はどーなる?いいか?1度しか聞かねぇぞ。正直に答えろ。マルサに何を話した?」

「何も言ってないわ。聞かれたコトもないのょ。本当ょ。誓うわ」

「信じよう。幸い海外口座のマネーロンダリングは俺の専門だしな。こうなったからには、お互い協力し合おうぜ。何か見たり聞いたりしたら、全部俺に逝え。チャンと知らせんだぞ!」

「わ、わかったわ」

「おぅ。よろしくな!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「マタハ!頼みがあるンだ。継母(ママ)サンとちょっち遠足に出掛けてくれナイか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


尾行って、気にし始めると、何でもかんでも尾行に見えて来るから恐ろしい。

黒いサングラスはみんなマルサ。スモークガラスの車はどれも国税局の監視w


被害妄想のお陰でかなり楽が出来る。

実際の車中の会話はこんなモノだが←


「マタハ。あちこち走ってホテルやマンションの外観ばかりカメラで撮ってもしょーがないでしょ?ホントに住むトコロ探す気なら、実際に入ってみなきゃ」

「確かにその通り。でも、そースルと、彼とはもう終わったんだ、と思い知らされそうで辛いンですょ継母サン」

「わかる。前の夫が死んだ時がそうだったわ。でも、悲しくても前に進まなきゃね」

「まだまだ無理っス」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


実際は、ソンな間抜けな会話がされてるにもかかわらず、効果はテキメンだ。お?早速w


「ロメルだ」

「バディょ。今すぐ会える?やっぱりマルサに監視されてる。写真を撮られたわ。アンタ、お金を海外口座に移すの得意とか言ってたわょね?」

「おいおい。マルサのせいで、今は自分の金だけで手一杯だぜ」

「ソコを何とか!お願い!助けて!」


犯罪者は、概して被害妄想ナンだけど、エゴイストでもアル。

だから、とりあえず犯罪者を気取る時はエゴイストになろう。


「助けてやりたいのは山々だが…もうリスクは手一杯背負いこんでる。コレ以上は無理だ」


いくら冷たく断ったって大丈夫だ。なぜなら必死になってる相手は絶対に諦めないから。


「そーなの?じゃあ私がマルサにお金を抑えられたら、マルサと色々話さなきゃね。マルサは、アンタに興味がアルみたいだけど、黙っているのはカナリ難しそうょ?」

「おいおいおい。それじゃ上海はどうだ?アソコの銀行なら顔が効くけど」

「あぁ素敵。心配の種が消えたら、お金を直ぐ動かすわ」

「何だ?他に知ってる奴はいない約束だろう?」

「だから、いなくなるの。すぐにね。今、始末させてるから」

「…ソレならOK。なかなかヤルじゃねぇか。女を上げたなwじゃパーティと逝こう。ムキムキ執事を呼び出して乾杯だ。アンタは新しいボトルを入れろ。楽しもう!」

「そうね。祝杯よっ!」


浮かれたバディはカウンターへ。

急いでミユリさんにメールする。


「バディがメメメに殺し屋を送った。もう自宅に向かってる」

「じゃ私も"変身"して駆けつけます!」

「ダメダメダメ。スーパーヒロインの護衛がバレちゃマズイ。別の手を考えて!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜陰に乗じ、広く散開した殺し屋が数名、東神田のダイナーに忍び寄る。

中には食事中のメメメ…と、ソコへ消火栓にブツけマウンテンバイクがw


「ちょっち!いるんでしょう?出てきなさいょメメメ!それでも女?」


場所と状況で石コロで敵は追い払える。

ミユリさんがダイナーのガラスを割る。


「ヤべぇ女同士の痴話喧嘩だ。襲撃は失敗だ!逃げろ」


殺し屋達は逃げ出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜遅く。とっくに閉店した御屋敷にみんなが集まって、急いで意見交換&作戦会議。


「バディは、マリンを恐れて金を動かしたがってる」

「じゃ疑いを晴らすには、殺されるしかナイってコト?最悪ょ」

「そうか?メメメが邪魔なら手伝ってやれば良い。今日、マリンがオフィスを出る時間、わかる?」

「もちろん」

「マタハ。頼みがある。2時間ほど継母(ママ)さんを何処かに隠しておけるか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


オフィスが入ってるビルの地下駐車場で、僕はバディを待ち伏せる。


「おい。仲間に頼んでお前をマルサに垂れ込んだ奴を見つけた。メメメらしいぞ」

「あのアマ、くそ!」

「金を動かすには、メメメを始末するしかねぇ」

「でしょ?例の心配の種は奴なのょ。人を送って始末しようとしたけど、奴の女が騒ぎを起こしてズラかるしかなかったの」

「そりゃ誰かさんが手を汚すしかなさそうだ」

「え?私?でも、銃が無いわ」

「銃ならある。コカインのディーラーからクスネた銃だ。ソレが凶器ならメメメが薬に手を出して横領したと誰もが思う。アンタ、自由になりたけりゃ思い切れ」

「え、ええ」

「おっと。やっぱりアンタにゃ無理か。ずっとマリンのオコボレで生きて来た女だモンな」

「ねぇ!これがオコボレ?コレは?世界に10個しかない限定watchなのよっ!」

「ははは」

「何がおかしいの?」

「高級車に高級時計。でも、まだちっちゃなコバンザメだ。自分で自分のケツも拭けねぇンだろ?」

「何よっ?」

「おいおいおい。怒ったのか?だったら、またマリンを呼んで殺ってもらえよ。コバンザメちゃんは大人しく後ろに隠れて…」


え、パンチ?ココは平手打ちだろ、女はw


喧嘩でなかなか出来ないのが大袈裟にやられるフリだ。

任務上、負けなきゃいけない喧嘩っていくらでもアル。


でもヘタレ女の猫パンチで吹っ飛ぶフリはなかなかに難しい。

さらに、滅茶苦茶大ぶりパンチを空振ってマウントして頂くw


「わかったわかったわかった。わかったからもうヤメて」

「私が何も出来ナイって言うの?やってやろうじゃナイ!さぁ銃を貸して!」


返さなくて良いょ←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


数時間後の…今度はビルの前の歩道。


ミユリさんがマリンと擦れ違う。

マリンがヲ下品なヤジを飛ばす。


「イエイ。お嬢さん。今度お手合わせ願いたいわ」


僕の出番だ。


「おい。アンタ知ってるぜ。メジャーなラッパーだろ。マロン?いや、マリンか。この国はどうかしてるぜ。あんなモンが音楽って逝えるか?何処が良いんだかな?」

「だったらオッサンあんたは何を聞くの?」

「ジャズ」

「そう来るとギャングスターラップも真っ青だわ。私にはハード過ぎる」

「アンタはメロディーってモンを知らないのか?」

「早くこのバカどけて。とっとと消えて」

「お?お?お前らギャングか?すげえな!コレぞヒップホップだ!」


ミユリさんが"稲妻キネシス"を放つ!

瞬時に黒焦げのボディガードが転がるw


「ボンジュール。じゃドライブね。私と付き合いたいンでしょ?」


立ち(すく)むマリンの耳元でミユリさんが(つぶや)く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ドタバタ騒ぎが続き、人気のないオフィス。

メメメが残務整理?してるとバディが来る。


ややっ?手には拳銃(ベレッタナノ)w


「ココに何しに来たの?ヤメて!」

「黙って部屋に入って鍵閉めて」

「ヤメてょ!ねぇ?バディやめて」

(ひざまず)いて!」

「ねぇバディ落ち着いて。こんなコトをしてどーするの?まだ間に合うわ。お金は、元に戻せば良いのょ」

「はぁ?」

「貴女の横領に、未だ誰も気付いてナイの」

「バカ!私はね。いっそ、知らせたいくらいナノよっ!アンタにゃ逆立ちしたって出来ない芸当でしょ?」

「だったら、私を殺す必要はナイでしょ?何故こんなコトするの?」

「よく言うわメメメ。全部貴女が悪いのょ。どーしてマルサにチクったの?」

「だって、アレは貴女のお金じゃないモノ」

「フザけナイで。あの会社を作ったのは私。最初マリンは、小銭のために地下のステージで歌ってた。物販で私がCDを手売りしてたの!私がマリンをココまで育てたのよっ!」

「だから、その分、貴女はマリンちゃんから信用されてるじゃない?」

「信用されてる?彼女は5億円も稼いでる。私は毎週給料をもらう財務顧問ょ?バディ、車をあげるわ。バディ、貴女の時計ょ…全部オコボレなの!みんなマリンに恵んでもらっただけ。もうウンザリだわ!もう音楽さえ好きになれない。限界ょ…不思議ね。自分でヤルのは気分が良いわ。もっと前に踏み出せば良かった。さよなら、メメメ」


銃声と硝煙。


メメメがユックリ振り向く。

ドアが開きマリンが現れる。


「あぁ嘘でしょ!空砲なの?ソンな!どうして?頼むわ」

「みんな出て」

「マリンちゃん」

「バディは残って」

「ねぇ待って。ねぇ待ってょ。親友でしょ?話せばわかるわ」

「じゃ話して」←

「全部誤解なの。ハメられたの」

「なるほどね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日の御屋敷(ミユリさんのバー)


「で、バディはマリンとヨットで出掛けたキリ、戻って来ない…テリィたんには言葉じゃ足りナイくらい感謝してるわ」


そう逝いながら、アイドル服のメメメは札束を差し出すのだが…

しかし、札束差し出すアイドルって、何だかスんゴい萌えるなw


「あ。そーゆーの必要ないょ。でも"ヲタッカーズ"で靴を欲しがる声がしてたな…ソレと経費だけ良いかな?」

「コレで…足りる?」

「だ・か・ら!こんなに要らない」

「ねぇ。この恩は忘れない。私に出来るコトならどんなコトでも…」

「お姉ちゃんのミミミによろしく言って」


ミユリさんが口を挟み、メメメとハグ。


「ありがとう」

「良いのょ」

「ありがとう"ヲタッカーズ"」



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"マネーロンダリング"を軸に、メイド長の継母で政商シンジケートの女ボス、そのボディガード、失恋のロケット兵、聖地の女マネーロンダラーなどが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ第3波に怯える秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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