プロローグ
告白から始まる
伝えれば始まるはずだった
それはそれはゆっくりとした
二人だけの
終わるまでのものがたり
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新入社員として入社した会社で、こんな出会い方をするとは思ってもいなかった。
むしろ、こんな人がいたことに気が付かなかったなんて。
偶然とタイミングが重なって、私はあの人を見つけた。
そして、必然的に恋に落ちてしまった。
新入社員というからこそ23歳。
もちろん独身の島津真理こと私は、慣れ親しんできた土地で就職することが出来た喜びと、これから始まっていく社会人というカテゴリーにまだ緊張していた。
入社した会社は商社だからこそなのか、社員の気質は体育会系の雰囲気が強い。
私自身、学生時代は陸上部に所属していたので、この空気は温かかった。
「これ、やっといてもらえる?」
「あ、はい。これなら前に先輩に伺ったことあるものですから。」
配属されたのは営業所。そこには営業員、事務員を含め13名の社員が働いている。
少しずつ仕事、というものを理解しはじめ、先輩社員との話の中にも軽い冗談が使えるようになってきたのは半年が過ぎた頃。
人見知りが激しい自分なので、馴染めるかどうかが不安だったのだが、少人数制の営業所配属になれたことと主任が勢いのある方だったので、みんなで過ごすことが必然的に多くなっていたので、とても助かっていた。
「よし、ここから数ある営業所の中でもトップとして軌道に乗っていくために団結が必要だ!ということで、キャンプをする。」
「は?」
いきなり主任が言い出した言葉に、社員全員がキョトンと目を瞬かせていた。
脈絡が全くない。
呼びかけではなく、強制的な口調ではあったが嫌な気持ちにはならなかった。
「いいですね、みんなで行きましょう!」
「ちょ、ちょっと、新婚なんですから一泊は勘弁してくださいよ~」
「羨ましいことを理由にして、ずるいな~、はい!俺参加します!」
口々に参加の有無を聞いているとふと背後に気配を感じた。
私が顔を向けると、何度か話したことのある先輩が私と同じようにみんなの様子を静観していた。
「行きますか?」
「おれ?うん・・・ちょっと金ないし、ね。行く?」
「一応、参加しておこうかとは思います。行きましょうよ?」
「・・・前向きに検討させて頂きます。」
恐らくしっかりと会話したのは、これが初めてだったのではないだろうか。
これが、すべての始まりだった。