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精神弱者のメサイア~誘拐犯に恋した少女の話~  作者: 独身ラルゴ
第二章:パパ活少女と妹の話
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第二章22.守るべき居場所

「というわけで、獅子郷さんつぼみちゃんの二人と私一人の二手に別れます」


「ええ……」


「ごめんねつぼみちゃん。すごーく嫌だと思うけどちょっとだけ我慢して欲しい」


「俺が隣にいることを許すと言うのに何が不服か……そこまで言うならお前達二人で動けば良いだろう」


 不機嫌そうに唸る大柄な男。

 それに対し青葉さんは首を横に振った。


「今回の目的は宇花ちゃんをつぼみちゃんに説得してもらうこと。近づく以上は魅了対策で獅子郷さんは必須アイテム」


「流石に物扱いは無礼が過ぎるぞ同士青葉……」


「そですねー。あと二手に別れるのは私の能力は一人の方が使い勝手いいから」


「青葉さんの能力って?」


「んー……秘密」


「? 獅子郷さんは知ってるんですよね?」


「あー……知らない方が幸福なこともあるぞ小娘」


「ええ……?」


 普段辛辣な相手でさえ優しくしてくるような能力……逆に気になるが我慢すべきなのか……?


「とにかく、この組分けは確定事項。最後に作戦内容の確認」


「目的は姉妹の救出。問題となるのは姉の魅了能力と国家組織の監視だったな」


「国家組織の方は私に任せていい。けど残る驚異は宇花ちゃんだけじゃない」


「何だと?」


「白さんが一つの可能性として、情報を残していきました」


 これは白さんのメモに書かれていた情報。

 実際に宇花さんの能力を受けたことで気づいたらしい。

 宇花さんから聞いていた能力と整合性が取れない部分があると。


「あの新入りか……その可能性とやらの精度は?」


「話を聞いた限りではほぼ確定です。初めから違和感を感じていた部分の辻褄が合ってしまったので」


「違和感? ……なるほど妹か」


「そう、赤佐凪も心壊症患者だと思っていい。そしてその能力は――――」











 これは私が春瀬さんの家を去った後のこと。

 凪に気づかれないよう急いで出たため、行く宛などもない。

 だから一度、あるべき形に戻そうと思う。


「実家に帰るか……行きたくないけど」


 本来私は未成年で、親達には私を育てる義務がある。

 最悪警察に駆け込めばなんとかなるだろう。

 和解して家に住まわせて貰うか、親を犯罪者にして孤児として保護して貰うか。


 とにかくなんとかなるだろう。

 気持ちの整理がついた今ならあの人たちに何を言われても何も思わない。

 恨むなら私みたいな女を産んだ自分を恨め。


「ただいま……」


 何食わぬ顔で家に入る。

 リビングに居たママは面食らったように私を見た。 


「えっと……家間違えてません?」


「間違えるわけないと思うんだけど?」


「じゃあ警察……」


「? いや私はいいけど……呼んでも捕まるのあなた達だし」


「どういうことなの……?」


「……言われなきゃ分かんないの?」


 私は心底あきれた。

 自分に一切非がないと思っているのか。

 会話するだけで想像以上のストレスだ。

 けど先のことを見据えて耐えるつもりだった。

 次の言葉を聞くまでは。


「何も分からないわ……そもそもあなた誰なの?」


「…………は?」


 まるで知らない人間が家に来たような反応。

 知らないフリで誤魔化そうということか?

 すると今度は後ろから声が聞こえる。


「ただい……ま?」


「あ……パ……」


「母さん? 友達にしては若いけど……どこの子だ?」


「私も分からないのよ……いきなり家に入ってきて……」


「……」


 分からないのはこっちだ。

 演技にしたって出来すぎている。

 だが本気で私のことを覚えていないなんて、そんなことありえない……。


 そう思いたかったのに、否定しきれなくなった。

 私はこの現象に酷く既視感を覚えたから。

 春瀬さんと出会う前、私が能力を使った相手はみんな次に会うと……。


「……失礼、しました」


 混乱しきった私の頭では、逃げる以外の選択肢が見つからなかった。






 こうして歩いていると、追い出された日のことを思い出す。

 思考を放棄したいから、目的もなくただ歩く。

 人間の習性というのは単純で、考えずに動くと辿り着く先はいつも同じ。

 また同じ公園に来てしまう。

 でも前とは違う点が一つだけ。

 前とは来る順番が逆になった。


「凪……なんでここに……」


「わたしも、いえでした」


「私が来ると思ってここに?」


「うん」


 私が公園に着くとそこには凪が待っていた。

 思えば一日たりとも離れたことのない存在。

 その顔を見るだけで安心して腰が抜けてしまう。


「はー……そっかー」


「だいじょうぶ?」


「うん……なんか疲れちゃったみたい。親は勝手だし、春瀬さんは私の思う通りに動いてくれないし」


「そう、なの?」


「そうなの。だからもう……凪が居てくれればそれでいいや」


 凪を守ることが私の生きる目的だった。

 けどいつの間にか私の居場所になっていたらしい。

 ずっと一緒にいたから、隣にいてくれるだけで安心する。


「もう、おいてかないで、くれる?」


「うん。ずっと一緒。もう他の人と生きるのも辛いし」


「つらい? じゃあ……わすれたい?」


「そうだねー……忘れられたら楽なのかもね」


「そう、なんだ。じゃあ……()()()?」


「……え?」





 







『宇花さんの能力を受けて、違和感を覚えたんです』


『なんで()()()()()()って。宇花さんの話では僕達の家に来る前、能力を使用した相手はみんな宇花さんを覚えていないと言っていたのに』


『そうなると記憶の欠落は宇花さんの能力とは別の要因があると考えるのが妥当です』


『つまり……凪さんが「記憶消去」の心壊症能力を持っている可能性が高い』


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