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精神弱者のメサイア~誘拐犯に恋した少女の話~  作者: 独身ラルゴ
第二章:パパ活少女と妹の話
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第二章21.昨敵の協力者

 白銀さんの意識が戻ってから1日が経過した。


「バイタル安定、第三症状は落ち着いて腕の形状も元通り。もう危険はない……と思う」


「よかったぁ……」


 ベッドの横で心底安堵した声を漏らす市松さん。

 永い眠りから覚めた白銀さんも改めて感謝を述べた。


「ありがとう青葉さん。私の命を助けてくれて」


「私は何もしていない。感謝なら市松さんと……春瀬君に、っていうのは難しい?」


「春瀬白……彼は今どこに?」


 自分が悪夢に侵される原因となった男の所在を気にする白銀さん。

 しかしその様子からは怨念のような負の感情は見られない。


「白さんなら今他の子を助けるために頑張ってます」


「あなたは?」


「初めまして。灰咲つぼみと言います」


「灰咲……もしかして春瀬白に誘拐されていた?」


「はい。白さんは私を誘拐してくれました。あの地獄のような環境から赤の他人だった私を助けるために」


「そう……あのとき言っていたことは本当だったのね……」


 過去を思い出し、一層暗い表情になる。

 彼女は立場の違いで衝突した白さんを殺そうとした。

 確かに救うために誘拐したなんて言われても信じられないだろうけど、罪を裁くために殺意まで向けるのは間違っている。

 白銀さんもそれを理解してくれているのだろう。


「……負い目を感じてくれるなら、一つお願いを聞いてもらえませんか?」


「お願い?」


「探して欲しい人がいるんです。白銀さんの能力ならそれができると聞いています」


「そうね……私は指先から探し人へと不可視の糸を繋ぐ能力を持っている。けどこの能力は犯罪者にしか働いたことがないからその人に繋がるかは……」


「なら大丈夫です。彼女も犯罪まがいのことをしているので」


「そうなの? 良かったとは言い難いけど……試してみるから詳しく聞いてもいいかしら」


 私は宇花さんについて話した。

 彼女は心壊症の能力で援助交際に加えて通り魔まがいのこともしていたらしい。

 白銀さんがそれを悪だと判断できれば探せるはず、とも白さんから事前に聞いている。


「……嘘じゃないみたいね。糸が繋がったわ」


「場所は分かりますか?」


「……西南西に24キロ先の位置、それ以上のことは分からないわ」


「ありがとうございます。移動したらまた連絡をお願いします」


「もう行くの?」


「はい。白さんが待ってますから」


「……春瀬白に伝えてもらえないかしら。今度は立場の違いとかなしで、腰を据えて話しましょうって」


 その言葉を聞いて疑念は確信に変わる。

 今の白銀さんは話に聞いていた人物像と違いすぎる。

 それはこの一年で彼女も変わったということなのだろう。

 その原因が悪夢であることから良いとは言えないが、少なくとも私達の思いを理解しようとしてくれるなら、私は嬉しい。

 

「……分かりました。白銀さんもお大事に」


 そう言い残して私は青葉さんと共に病室をあとにした。


「……行きましたね」


「……ねえ市松。罪って何なのかしら」


「哲学ですか? 難しい話は俺にはよく分かりませんよ」


「相変わらず頭を使うのは苦手なのねあなた……でも私も、思考停止で一方的な価値観を押し付けていただけだから同じようなものね」


「先輩……」


「警察官の頃の全てが間違っていたとは思わないわ。でも……人を裁くにはまだまだ未熟だったみたいね」


「……大丈夫、生きていればまたやり直せます。今度こそどこまでもお供しますよ、先輩」


「ええ……ありがとう」


 独り善がりはもうやめる。

 白銀優希はそう決意し、共に歩んでくれる者と足並みが揃うようにゆっくりと一歩を踏みしめていく。






「青葉さん? どこに行くんですか? 宇花さんを探しに行くんじゃ……」


 急ぎ足で次の行動に移る青葉さん。

 しかし向かう先は外へ向かう出口とは反対だった。


「ごめんね。さっき連絡が入って……ちょっと緊急事態」


「? 何があったんですか?」


「全部話してる時間はないから掻い摘んで言うけど……国家組織が動き始めた」


「国家……?」


 足を止めることなく青葉は話し始める。


「秘密結社『シャッター』は独立組織として心壊症患者の救済を目的に活動してるけど、心壊症患者の対応を行っているのはうちだけじゃない。中でも国家組織は……危険分子の撲滅を目的として活動している」


「撲滅って……」


「国家組織は私達みたいな独立組織に向けて組織に属さない心壊症患者のリストを配り、それぞれに危険度のレベルをS、A、B、Cの4段階で割り当てる。それがさっき入った最新情報で……赤佐宇花の名前がAに指定されていた」


「……? Aになるとどうなるんですか?」


「危険度Cは要警戒、危険度Bは要監視、そして危険度Aは……要駆除」


「そんな……じゃあなおさら急いで探しに行かないと!」


「うん、急いで保護する必要がある。けど理由もなしにBからAになることはない。もし宇花ちゃんが第三症状にでもなっていた場合は私達だって危険」


「不用意に近づくなってことですか? でもそんなことを言ってたら……!」


「焦らないで、もちろんすぐに出発する。戦力を整えてからね」


「戦力……?」


 そして青葉は目的地に辿り着いたのか立ち止まり扉を開く。

 室内には人影が二つ見えた。


「お待たせしました海透社長。それから……赤佐姉妹の件でご相談が」


「分かっている。国家側の撹乱は既に行っているが長くは持たないだろう。君に指揮権を与えるよ、青葉」


「ありがとうございます……ということでお願いできますね?」


 室内にいたもう一人の存在に目を向けて青葉は言った。

 その人も、私が以前海透社長と初めて出会った時に遭遇した相手だった。


「能力は魅了、だったな。確かに俺が適任だ。だが俺にモノを請うのだ、後で然るべき見返りを用意するのだぞ? 同士青葉よ」


「ちっ……分かってます。なのでさっさと準備お願いします――――獅子郷さん」


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