第一章33.秘める結末
2017年12月25日
「今っ日っはー楽っしっいくーりーすーまーす!」
「「ヘイっ!」」
「皆さん元気ですね……でもクリスマスパーティってイヴにやるものでは?」
「イヴは流石に家族サービスの日だからな」
「私も昨日は残業だった」
「そのお陰で私はボッチクルシミマスでした。シングルヘール……」
「ご愁傷さまです。それで一日遅れで集まったと。でもなんでうちなんですかね……?」
クリスマス当日、春瀬の家に彼のネットゲーム上の仲間の3人が来ていた。
だがその予定を春瀬は知らず先ほど唐突に「宴だ!」とかいって大荷物を抱え突撃してきたのだ。
「そりゃ春瀬さんが家から出れないからでしょう? この犯罪者さんめ」
「その気遣いはありがたいんですけど……状況が状況なんで自分抜きでやってくれてもよかったんですよ?」
「いや、春瀬はついでだぞ?」
「え?」
「本来日本でのクリスマスは大人が騒ぐ口実じゃなくて子供がサンタを迎え入れる日の意味合いが大きい。つまりこの部屋に集まったのは春瀬くんのためではなく、つぼみちゃんのため」
「つぼみちゃんを幸せにして私たちも可愛いロリに触れて幸せ。正にWin-Winですね!」
「おお……正に犯罪者予備軍の思考……」
自分のためではないということに落胆した方がいいのかこの奇言に呆れた方がいいのか分からなくなる。
しかし理由はなんであれ彼らがやろうとしていることに対しては感謝すべきだろう。
「でもありがとうございます。自分だけでは大したことできなさそうだったので」
「折角の楽しいイベントなんだから楽しまないとですよ。ね、つぼみちゃん」
「……その、私なんかのためにありがとうございます」
「謙虚だねえ。一緒に居すぎて誰かさんに似ちゃったかな」
春瀬の後ろに隠れ控えめに答えるつぼみ。
まだ大人に囲まれるのは少し怖いのかもしれない。
「さて、飾り付けも終わったしあとは買い出しだけだな」
「誰が行きます?」
「あの、白さん」
「ん? なんですかつぼみさん」
「私行きたいです」
つぼみが小さく手をあげ、久々のわがままを言った。
いや、このメンバーの前では初めてかもしれない。
しかしそのメンバーたちは難色を示す。
「あー……それはちょっと難しいような……」
「いいですよ」
「いいんですか春瀬さん!?」
軽く返事をすると良い反応を見せてくれる清水。
すると茶和田も怪訝な顔で質問してきた。
「……いや真面目に大丈夫なのか?」
「捜索打ち切りのニュースもやってましたしそれほど警戒はされてませんよ。ニット帽とマフラーでもつけておけば問題ないと思います」
「なるほど」
「やった」
「ただそうなると自分は流石に一緒には行けませんね……」
「となると三人のうちの誰かが付き添いか」
「ふむ、つまりロリと合法的にデートと」
「合法かは微妙ですね。つぼみさんがここにいる時点で違法なんで」
「じゃあもう一人はつぼみちゃんの指名かな。誰がいい? 私とか選んでくれると嬉しいなぁ」
「じゃあ……青葉さんで」
「なん……だと……」
「一番の除外候補だと思ってたのに……なぜそんな変態を……」
「ふふっ。その変態に負けちゃったね、可哀そうに。さあ行こうかつぼみちゃん。お姉さんが何でも買ってあげるから付いておいで」
「あの人が一番の誘拐犯っぽいですよね」
つぼみと青葉の二人が出掛けてると残された二人はやるせなさそうな様子だった。
「あー私も行きたかったなぁ」
「にしても暇だな。やることも全部終わってるし」
「……それじゃ少し相談にのって貰っても良いですか?」
「ほう、失恋マスターと呼ばれた私に相談とはお目が高い」
「そこは普通恋愛マスターでは? 恋愛関係じゃないんで別に良いですけど」
「何度か告白されて付き合うことはあったんですけど数日経つと思ってたのと違ったって言われちゃうんですよね」
「ああ、納得ですね」
「誰もシミパン好きの変態女子って知ってたら告らんだろうしな」
「でも李里ちゃんとは随分長いですよ? もうすぐ2年くらい」
「シンパシーですかね」
「変態同士はひかれあうって訳だな」
「これほど嫌な類友世界中探してもそう見つかりませんね」
「色々失礼ですよね……まあほぼ事実なので気にしません! それで相談って言うのは?」
話を戻してくれたおかげでようやく本題に入れる。
まあ話を逸らさせたのも彼女ではあるのだが。
「そのですね……動画配信ってやり方ご存知ですか?」
「動画配信? ってあれか、Yourtubeとかで動画をあげるってことか?」
「そういうことになりますね。近々やりたいとは思っているのですがなにぶん知らない世界ですので」
「あ、私動画配信したことありますよ。ゲーム実況ですけど」
「ほんとですか?」
「ざっくり言うとカメラとマイクとPCがあれば誰でもできます。ライブ配信なら動画編集も必要ありませんし」
「なるほど……たぶんそのライブ配信でやることになりそうですね」
「それで何を配信するつもりなんだ?」
「まあ……青年の主張的なことですかね」
「…………今回の誘拐絡みの話か」
「ご名答です。それと不躾なお願いかもしれませんが皆さんにもSNSなどで拡散していただきたいんです。できるだけ多くの人に見てもらいたいので」
「私は良いですよ。女子大生垢ゲーム垢諸々のアカウント全部で広げて見せようじゃないですか」
自信満々に答える清水。
その傍らで茶和田がニヤリと笑った。
「…………春瀬、そういうことならもっと良い方法があるぞ。それは…………」
茶和田はその「良い方法」とやらの内容を言った。
それは予想外の答えながらも、春瀬の求めているものでもあった。
「……そんなことできるんですか?」
「可能だ。けど当然責任問題も生じるからな。あくまでやり方を教えるだけ、俺はそれ以上関与しないからやるかやらないかはお前の自由だ」
「…………今さら尻込みする気はありません。それで多くの人に自分の声を届けられるのなら」
「決まりだな、詳細はまた明日にでも送る」
「ありがとうございます」
茶和田のおかげで作戦の目処がたった。
自分にはあとがないのだからもう引く理由などないと逃げ道を自分で失くすように考えていると、隣で浮かない顔をしている清水が口を開いた。
「……春瀬さん、聞いても良いですか?」
「なんでしょうか」
「春瀬さんは……この事件の結末をどうするつもりなんですか?」
「おいっ、清水それは…………」
茶和田が清水を止めようとする。
自分の気を使って何か取り決めをしていたのかもしれない。
けれど聞かれてしまえば自分は答えないわけにもいかない。
「いいんです茶和田さん、……まあ気にもなりますよね」
「このまま逃げ続けるつもりなんですか? それとも……」
「自首するつもりですよ」
「そう……ですよね。春瀬さんならそうしますよね……」
「元々はつぼみさんの傷が癒えたらすぐに終わるつもりでした。彼女はもう大丈夫でしょうから、最後に一仕事終えたらこの誘拐事件も終わりです」
「春瀬…………」
なんとも言えない表情になる二人。
それはそうだろう、目の前にいるのが犯罪者であると再認識させているようなものだ。
念を押すように自分は言う。
「でもできればこのことはまだつぼみさんには言わないでもらえると……彼女には折を見て話します」
「……それっていつですか?」
「それは……」
「決めれませんよね。春瀬さんだってつぼみちゃんがそれを聞けば傷つくことくらい分かってますよね」
「つぼみさんには思った以上に懐かれてしまったので……」
「……そう言うとは思っていました。けど残念ですがもう遅いです」
すると合図をしたかのようにタイミングよく外から扉が開かれる。
この家にノックもなしに入ってくるのは誰かなんてもう分かりきっている。
「……おかえりなさい。つぼみさん、青葉さん」
二人に挨拶をするとつぼみは手に持っていたものを見えるように差し出してきて言う。
「全部聞いてました。やっぱり、そのつもりだったんですね」
「すみません春瀬さん」
そう言ってつぼみに続いて清水も携帯画面を差し出す。
その画面には同様に通話中の3文字が書かれていた。




