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精神弱者のメサイア~誘拐犯に恋した少女の話~  作者: 独身ラルゴ
一章 : 誘拐犯に恋した少女の話
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第一章2.決意から一転

 2017年12月1日。


 私は学校を休んだ。

 休んだのは準備が必要だったため。

 準備といっても家にあるもので一つ持っていくものがあるだけだ。


 現在の時間は15時、そろそろみんなが下校する時間だ。

 私もそろそろ家を出る時間。


 ずっと考えていた。終わらせるならこの日がいいなって。


 今日はわたしの誕生日。

 しばらく祝ってもらってないけど、自分で自分にプレゼントだ。

 私が今一番に望むものを自分で用意する。

 少しだけ協力してもらう必要はあるけれど。

 今まで私を使わせてあげたんだから、今日は私があなたを使わせてもらうよ。


 私は台所で随分使われず放置されていた包丁を一本、ランドセルにいれて家を出た。




 彼女の下校ルートはすでに把握済み。彼女が取り巻きと別れ一人になる地点も把握済み。

 だからあとはそのときが来るまで後ろから付いていくだけ。

 ランドセルを背負えば私はただの下校中の小学生、学校に行っていなくてもそう見られる。


 一人、また一人と彼女の周りからいなくなり、最後の解散地点を越える。

 ほら、これであなたを守るものはもういない。

 周りに誰かいたとしてもあなたを守るとは思わないけどね。


 あとは家につくまでに実行するだけ。

 気づかれないように距離をつめて、ランドセルの中にある包丁で突き刺すだけでいい。


 どこを刺そうか。


 確実に殺すなら頭か胸だ。けれど私の力では難しいだろう。

 頭蓋は貫けないし胸も骨に当たれば深くは刺さらない。


 人体のどこが硬いかなんてよく知っている。

 殴られ、蹴られ、叩きつけられ、何度も身をもって知る機会があったから。


 だから狙うのは腹部だ。私の力でも容易に貫ける。

 少し力をいれて引き裂けば血は止まらなくなる。


 別に殺せなくたっていい。

 ただ痛い目を見てもらって、それを私がやったという事実が欲しいだけ。


 警察には捕まるだろうけどそれでいい。

 こんな地獄のような日常よりかはよっぽど良い待遇だろう。


 取り調べで全てを話してやろう。

 テレビでニュースに取り上げられるかもしれない。

 『小5女児殺害事件、容疑者の同年齢女児の裏側』なんて見出しをつけて。

 そうすれば学校も父親も全て終わりだ。何もかも私の手で終わらせてやる。


 よし……やろう。

 準備はできた、決心もできた。


 立ち止まりランドセルに手をかける。

 この包丁に手をつけた瞬間、私はもう戻れなくなる。

 けれど迷いなんてあるはずがない。

 罪悪感? それを持ってないのはお互い様だ。


 私はこれで解放されるんだ。

 そう念じ、中の包丁に手をつけた――――その瞬間だった。


「…………えっ」


 突如背後から車が来て、私の真横で停止した。

 一瞬思考を停止しそうになるがすぐに気づく。

 この車、明らかに私を意識して停めた。


 彼女のボディーガードか何かが私が何をしようとしてるか気づいたのか?

 いやいくらなんでもそれはない、反応するにしても早すぎる。いくら不審だったとしても普通の小学生にそこまで警戒しないだろうし、第一私はまだ包丁を出してすらいない。


 学校の担任、もしくは他の教師か?

 ないわけではないが目的はなんだ?

 前と同じように轢くつもりならわざわざ停めないだろう。

 無断で休んだから私を追いかけた?


 ……分からないことを考えても無駄だ。

 今考えるべきは、このまま無視して実行するのか、すぐに逃げるのか。

 相手が分からないことには行動も取りにくい……。


 そこまで考えたところで車の主はドアを開いた。

 出てきたのは見知らぬ若い男性だった。

 見たことがないということは教師という可能性は減った。

 しかし男の着る黒いコートが怪しさを一層増した。


 この男性はなんなのだろう。

 警戒しながらも一旦ランドセルから手を引っ込める。


 すると男性は近づいてきたと思えば私を背と足の2点でグッと持ち上げた。所謂お姫様抱っこだ。


「きゃっ」


 突然のことで目を丸くして男の顔を凝視していると聞いてきた。


「どっ、どこか痛みましたか……?」


 おどけるする男性に首を振り否定する。


「よかった……じゃあ行きましょうか」


 ……行くってどこに?

 分からないままじっとしてると男は私を助手席に乗せシートベルトをつけさせる。

 自分も乗ってドアを閉めシートベルトを閉めると車を発進させた。


 何がなんだか分からず混乱しながらも一つの仮定が頭をよぎった。

 ひょっとして……私は今誘拐されているのか?


「ぇぇ…………」


 見知らぬ男に車に乗せられ連れられている。

 紳士的すぎて気づくのに遅れたが状況だけ見れば誘拐だ。

 あまりに突然すぎて混乱が止まない。


 ただ一つだけ明確に思っていることがある。

 私の先程の本気の覚悟はいったい、どこに持っていけばいいのだろう……。


 行き場の失くなった気持ちが余計に頭を揺さぶる。

 そんなことに気づくはずもない男は無言で車を走らせた。

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