幕間之中:恐縛
僕は後悔した。彼女を助けられなかったことを。
彼女は僕を助けてくれた。
自分の身を犠牲にして助けてくれた。
なのに僕は助けられなかった。
僕には助けるための力がないから助けられないんだ。
恐怖が体を雁字搦めにして、助けたいと思っても動けない。
恐怖を感じるのも僕に力がないからだ。
僕は自分を憎んだ。
力のない自分を何度も呪った。
けれど間違いに気づいた。
彼女に気づかされた。
恐怖に勝てないのは力が弱いからじゃない、心が弱いからだ。
だってそうでなくちゃおかしい。
またも捕まり痛めつけられる自分を助けてくれた彼女を、怖いと思ってしまうなんて。
事実だけを見れば自分を囲う恐怖を薙ぎ倒して助けてくれたヒーロー。
けれど目に写ったのは恐怖を叩き潰す、より強大な恐怖。
震えが止まらなかった。
逃げ出したくなった。
けれど一歩も動けない。
それが彼女に恐怖を感じている何よりの証拠だった。
その後、取り巻きの男子が複数人の教師を呼んで彼女は取り押さえられた。
顔面の骨が砕けるほどに殴られた女の子はしばらく入院していた。
僕を助けてくれた少女は事情も考慮され停学1週間、学校側も不祥事を隠すため警察沙汰にはしなかった。
そして僕は彼女の顔が見れなくなった。
後ろ姿を見るだけで思い出される、今までで一番の恐怖。
頭で分かっていても心に刻まれた恐怖は払拭できない。
彼女も僕の態度に気づいたからか距離を置くようになった。
それから少し経ち、入院していた女の子が学校に来た。
顔にはアザと湿布、そして少女を見て浮かべる怒りの青筋。
すると何やら連れの男子達を集めてこそこそと話し始めた。
そしてその日のうちに悲劇が起きた。
彼らは二度と目を覚まさなくなった。
彼らは資料室で全員が眠っているところを教師に見つけられた。
全員が倒れ伏し、うなされている状況を見て教師は救急車を呼んだ。
病院で彼らはどれだけ時間が経っても目を覚まさずうなされていた。
何故資料室なんかで眠っていたのか、そこで何があったのかなどは誰も知らない。
けれど僕は見ていた。
彼らが例の少女を資料室へと誘う瞬間を。
結局それすらも恐怖に思い誰にも伝えられなかった。
知っていることがバレれば、今度目を覚まさなくなるのは自分かもしれないという恐怖があったから。
つまりは僕が弱いからだ。




