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精神弱者のメサイア~誘拐犯に恋した少女の話~  作者: 独身ラルゴ
一章 : 誘拐犯に恋した少女の話
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第一章19.一緒にいるために

2017年12月12日


 朝のニュースに心臓が跳び跳ねた。

 ニュース内容は一軒家全焼、40歳男性の焼死体発見と、その娘である11歳の少女が行方不明というニュースだ。

 いつか起こりうることと分かってはいたが……。


「白さん……もしかして……」


 ニュースを目にして青ざめる少女。

 おそらくとある可能性を考えたのだろう。


 彼ら3人と接触し、事情を説明して間もなく報道された。

 つまり3人のうちの誰かが通報したと考えてしまったのだ。


 だがそれを否定する材料はある。


「違いますよ。彼らにその気があったらすでに警察がここまで駆けつけているはずです」


「そう……ですよね。すみません」


「いえ、謝るのは僕の方です。伝えてなくてすみませんが、このタイミングでのニュースは予定していました」


「えっと……どういうことですか」


「元々、あなたの父親の死体処理について依頼していましたから」


「依頼、ですか?」


「はい、前にも言っていた心壊症患者の援助をしてくれる組織に依頼しました。おそらくあなたのお父さんを事故死に見せるために家を全焼させたのかと」


「そうですか……家、燃やしたんですね」


「……それもすみません。つぼみさんに相談なく事を進めてしまって」


「……大丈夫です。あの家にあるのは辛い思い出ばかりなので、もう思い出さなくて済みます」


 少女は憂いを残しながら苦笑する。

 それが何に対する憂いか分からない以上はあまり触れない方がいいだろう。


「……そうですね。過去を振り返る必要はありません。今僕たちがすべきなのはこの報道に対する対応ですから」


 そう、大切なのは未来を見据えること、つまりこの先の対応だ。

 まだ捕まるわけにはいかない。

 せめて少女の容態がよくなるまでは。


 少女の体調は約10日間でずいぶんよくなった。

 怪我のは深い裂傷や骨折などはまだ残っているがもう一週間もあれば心配いらないだろう。


 けれど心配なのは精神面だ。

 自分がいる間は心のケアも可能だが離れればどうなるかは分からない。

 心壊症はどれだけ良好な状態でも状況次第で簡単に最悪へと覆る厄介な病気だ。


 安定が約束されるまでは側に居てあげたい。

 そのためにも必要な対応として一番大切なのは周りの目への配慮だ。

 こうなっては外へ出るのにも警戒しなくてはならない。


「というわけでつぼみさん、僕は買い物に行きますが今日はお留守番です」


「え? 嫌です。着いていきます」


「駄目です。自分の立場は分かってますよね? 行方不明、つまり捜索されているんです。誰の目にも触れてはいけません」


「じゃあ白さんも家から出ないでください。その方が安全ですよね」


「買い物はどうするんですか?」


「通販でいいじゃないですか。ネットスーパーとかいろいろあるんですよね」


「宅配は駄目です。どこで情報が漏れるか分からないので目に見えない危険は潰しておきたいんです」


「じゃあさっき言ってた組織に頼んで……」


「流石にそんな駒使いみたいなことはしてくれませんよ」


「むう……でも一緒って……」


 我ながら厄介な約束をしてしまったものだと少し反省する。

 しかし常に一緒に行動なんて難しいだろう。

 元は赤の他人、少しも離れないなんて意味で約束なんてできないことは彼女も分かるはずだ。


「つぼみさん、たった一時間離れるだけです。これから一緒にいるためにも少し離れる必要があるだけです。どこか遠くへいくわけでもありません。…………信じてもらえませんか?」


「…………」


 まだ不満そうに頷いてはくれない。いや、不満というより不安なのか。

 思えば彼女は心壊症という病気であると知ってからは一度も一人になっていない。


 よく分からない病気で、何が原因で悪化するか、一人になるとどうなるか分からない。

 その不安が心を削っていると思えば余計に不安になる。不安が連鎖しているのだろう。


 ならばどうするべきか。

 一緒にはいられないが一緒にいる方法、か。


「ではこうしましょう」

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