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精神弱者のメサイア~誘拐犯に恋した少女の話~  作者: 独身ラルゴ
一章 : 誘拐犯に恋した少女の話
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第一章17.危険な人たち……?

「えーつまりこの子が離れたくないって言うから外に出れなかったと」


「さっきの話し声は直前になって俺達が帰るまで隠れるか隠れないかで一悶着あって」


「結局押しきられたと」


「大筋はそんな感じですね」


「……甘やかしすぎでは?」


「親バカ通り越して爺バカ並みに」


「それも初孫並みに」


「とは言ってもですねぇ……」


 反論に困っているところでちゃぶ台を囲んで座っている4人に台所から小さな給仕が寄ってくる。


「お茶です」


「ありがとー」


「どうも」


「嬉しみ」


「ありがとうございます」


 お茶を配り終えた後お盆を端に避けて自分の背にぴったりとくっついて座った。


「これに甘えられて断れます?」


「無理」


「断ったらぶん殴る」


「いくら払えば甘えてくれる?」


「ですよね。あとうちにそういうサービスはないです」


「残念」


 満場一致で甘やかすのが普通という結論に。

 ギルド名からしてそういう人間の集まりとも言えるがここでは賛成100%なのでそれが普通なのだ


「さて、自己紹介できますか?」


「灰咲つぼみです。11歳です」


「かわいー、でその子があっちでも話してた姪っ子?」


 あっちというのはネトゲ上でのチャットのことだろう。

 確かに姪っ子ということにして相談はしたが、


「いえ?」


「じゃあどこの子?」


「迷い子ですかね?」


「拾っちゃったの?」

「拾っちゃいましたね」


「おーけー分かったちょっと電話してくるから待ってて」


「ちょっと待って通報する前に話だけ聞いてくださいお願いします」


「いつかやると思ってたんです」


「そこ、捕まったあとのインタビューの練習をしない。気が早いですよ」


「彼が抗えないほど強い誘惑だったと……。やはり小学生は最高だぜって名言だったんですね」


「そんな返答引かれるどころか通報されますよ、犯罪者予備軍として。いいから話を聞いてください」


「ううん……でも話し聞いたら共犯になっちゃいそうな……」


「あの……私からもお願いします」


「任せて! 例えどんな危険な話でも最後まで聞くよ!」


 鶴ならぬ少女の一声は、数年積み上げてきた信頼を軽く上回った。

 悲しんだところで話は進まないので事情を説明することにした。

 10日ほど前に連れてきたこととその経緯を、心壊症についてはもちろん、彼女が包丁を持っていたことなども省きながら説明した。


「虐めと虐待か……」


「他の解決法……も親がそんなじゃ難しいか」


「……事情は分かった」 


 予想通り暗い雰囲気にしてしまった。

 本当ならオフ会を楽しむために集まったはずなのにこんな話に付き合わせて申し訳ない。

 すると黙って聞いていた女性が立ち上がった。


「それで、なんて小学校?」


「え?」


「ちょっと訴えてくる」


「行動力の化身……無関係の人がいきなり告発ですか……」


「覚悟の準備をしておいてください!」


「はいそこ、暗いからってすぐネタに走らないでください」


「まあ話は分かった。とりあえずこっちも自己紹介するか」


「そうですね。あ、今日の集まりがギルドのオフ会ってことは話してあります」


「じゃあ私から! 清水芽吹です、ユーザーネームは『シミパンマン』!」


「初っぱなからユーザーネームのインパクトが強すぎて引きますから。由来も込みでお願いします」


「家がパン屋だからだっけか?」


「あ、清水でパン屋だから……」


「えーでもシミパンも好きだよ?」


「自己紹介を性癖暴露の場と間違えてません?」


「次は私、青葉李里。ユーザーネーム『白百合の騎士』。由来はご想像にお任せする」


「そういえば言えないような由来でしたね。懸命な判断です」


「逃げたなチキンめ」


「むぅ、言ってもいいなら言うけど?」


「無駄な煽りは禁止でお願いします」


「で俺がギルマス、リーダーみたいなもんだな。茶和田人吉だ。ユーザーネームは『ロンリーコング』」


「略してロリコン」


「もちろんそれも意識した名前だ」


「皆さん自虐癖でもあるんですか?」


「あと最初はソロプレイのつもりでロンリーなんてつけたが今じゃ集団の長。とても恥ずかしい名前となってしまった。何より恥ずかしいのは唯一性を狙った名前でいざゲーム始めたら同じ名前の人が20人くらいいたことだな」


「事故紹介の場でもありませんが……。最後に一応僕もしときますかね。春瀬白です。ユーザーネームは『フェイスレス』です」


「中二病とロリコンを併せ持つやべーやつ」


「精神病患者筆頭」


「これで医大生とかいう厄介な犯罪者予備軍」


「もう予備軍じゃなくない?」


「ほんとだ。やっぱりこいつ早急に検挙すべきでは?」


「言いたい放題のボッコボコですね」


「あ、あの」


「ん?」


 聞くばかりであまり声が上がらなかった方向から聞こえ、全員の視線が集まる。


「その、白さんは悪い人じゃないです。いつも優しくて、私のこと助けてくれたし、その……危なくないので警察には……」


「……春瀬さん」


「……はい」


「どんな催眠術使ったらこんなこと言わせられるんですか?」


「すっごい失礼なこと言いますね」


「だっていくら家と学校が酷かったからって誘拐犯ですよ!」


「誘拐じゃないです保護です」


「それ犯罪者の言い分です」


「それでどんな手口? 確実な方法があるなら是非教えてほしい」


「教えたら犯罪者が増えそうだから詳しくは言わなくていいぞ」


「いやだから催眠とか洗脳とかそんな危ないことしませんて。一言で言えば人徳ですよ」


「つまんな」


「そういうの求めてない。手口はよ」


「人徳あるやつから人徳なんて言葉は出ないな」


「白さん、それはちょっと無理があると思います」


「つぼみさんまで!?」


 信じていた一人にすら否定されると流石に自分を振り替えるべきかと凹んだ。

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