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精神弱者のメサイア~誘拐犯に恋した少女の話~  作者: 独身ラルゴ
一章 : 誘拐犯に恋した少女の話
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第一章9.繋がりがあったなら

 夕飯は大鍋の卵粥を二人で食べた。

 まだ私の胃を気にしてくれたらしい。

 胃の調子が悪いのは私だけなのだから何も同じものを食べる必要はないのにと漏らすと、男は「たまに食べると美味しいですよね」とだけ。

 まったくどれだけお人好しなのか。


 夕食が終わった後はまたお風呂の代わりに濡れたタオルで身体を拭き買って貰ったパジャマに着替える。

 時刻は8時前、就寝するにはまだかなり早い時間だ。

 すべきことも思いつかず座り込んでいると男の方から「携帯の使い方教えます」と。

 初期設定はやっておくからと言われ誕生日を聞かれたり、設定したパスワードを教えられたりとよく分からないまま進んでいった。


「これで自由に使えると思います。ゲームもやってくれて構いませんが課金はほどほどにお願いします」


 苦笑混じりに言う男。

 しかし課金は禁止するものではないだろうか……こちらもするつもりはないけれど。


 そういえば今日だけで相当な出費になったと思うがこの男の財源はどうなっているのだろう。

 大学生なのに大型な車を持っているし家が金持ちだったりするのだろうか。

 その割りにアパートは質素だし本当によく分からない。

 結論の出ない思考を繰り返していると男が話を続けた。


「それから連絡先、自分の携帯の番号を登録しておきました。いつでも連絡してください」


 本来の目的とも呼べる連絡手段。

 しかしもうこの家から出る機会もそれほどなさそうだし使われることはあるのだろうか。

 なんて、この生活がいつまで続けられるのかも分からないのだから考えても仕方がないか。


 男は「分からないことがあれば聞いてください」と言ってパソコンを立ち上げまたネットゲームを始めた。

 趣味であり、日課なのだろう。

 そして彼が繋がりと交流する場だ。


〈フェイスレス〉『こんばんわー』


〈ロンリーコング〉『ばんわー』


〈シミパンマン〉『お晩です』


〈フェイスレス〉『あれ? 白百合さんまだ来てないんですね』


〈シミパンマン〉『……そうか、君は知らなかったね。奴は死んだよ。昨日の戦場でね』


〈フェイスレス〉『なんですって……!』


〈シミパンマン〉『前衛が足りなくてね……その穴を埋めようと彼女が張り切ってしまってこのざまさ』


〈ロンリーコング〉『無茶しやがって……』


〈フェイスレス〉『なんてことだ……僕が……僕がいなかったせいで……』


〈シミパンマン〉『惜しい人を失くしたよ……』


『〈白百合の騎士〉さんがログインしました』


〈白百合の騎士〉『ただいまー』


〈シミパンマン〉『…………』


〈ロンリーコング〉『…………』


〈フェイスレス〉『まあ死んでも蘇生できますよね』


〈シミパンマン〉『馬鹿な! 蘇生魔術は禁忌として封じられているはず!』


〈フェイスレス〉『じゃあリヴァイヴ使えるシミパンさんは禁忌犯しちゃってますね』


〈シミパンマン〉『私は存在自体禁忌みたいなものだから大丈夫』


〈ロンリーコング〉『何それカッコいいwww』


〈白百合の騎士〉『ちょっと』


〈フェイスレス〉『あ、すみません白百合さん無視していた訳ではなくて』


〈白百合の騎士〉『そんなことよりログ見たけど、昨日死んだのシミパンマンさんのバフミスのせいなのに何故私が勝手に突っ込んで死んだことになってる?』


〈シミパンマン〉『バレたかwww』


〈ロンリーコング〉『wwwwww』


〈フェイスレス〉『うちのヒーラー禁忌すぎませんw?』


 横目にチャットを見ながら思う。

 あんな繋がりなら素直に羨ましい。

 現実だろうがネット上だろうが気兼ねせず話せる相手というのはなかなかできない。

 それにネット上ならば現実ほどの諍いは起こらなさそうだし。

 本当に楽しそうで……。


「……寝ます」


「あ、今電気消しますね」


「暗い中だと目に悪いです。私はどこでも寝られますので大丈夫です」


「じゃあテーブルランプだけ点けさせてもらいます。おやすみなさい」


「……おやすみなさい」


 横になり布団を頭まで被る。ふて寝のようになってしまったが、嫉妬したわけでもない。

 ただ私には言いたいことを言える友達がいなかった気がする。

 それはあの虐めがあったからではなく、虐めが始まる前から。

 私は本音を隠してばかりで上っ面だけの友達しかいなかった。 


 ……もしも本音を言える相手がいたなら変わっていただろうか。

 悩みを相談して、喧嘩しても仲直りできて。

 そんな相手がいたなら私を助けてくれただろうか。

 ……考えても過去は変わらない。今は助けてくれる人がいる、それだけでいい。

 思考を無理矢理止めて意識を闇の中に沈めた。

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