第2話「一撃必中、燃えろ竜撃! VSキングメタルスライム」(2)
第2話の2、公開です。
今回は繋ぎ的な内容になってます。
よろしくお願い致します。
(4)
夕方。
都市「ストファム」に程近い地下にある駅に交易都市「プローラ」からの直通列車が到着した。
停車した列車のドアが開くと多くの利用客が流れ出し、改札を抜けると地上への階段に向かって行った。
その時、
「おーい、マンベル!」
と名前を呼ぶ声が響いた。
呼ばれた事に気付いた男が声のした方に目を向けると男が手を振っていた。
「兄さん、出迎えありがとう。」
男は声を掛けながら兄に近付いて行った。
ストファムで雑貨店を営んでいる兄・チェダは、
「プローラはどうだった。
掘り出し物はあったか?」
と交易都市「プローラ」での仕入れから戻った弟・マンベルに尋ねた。
「ああ、いろいろ仕入れて来たよ。
荷物は明日届くよう配送を手配してある。」
「助かるよ。いつもの事ながら武闘大会の期間は客が増えるからさ。」
成果に上機嫌の様子のチェダに興奮気味にマンベルが話し出した。
「それより、兄さん聞いてくれよ。
プローラですごい事があったんだ。」
マンベルの勢いにただ事ではなさそうな気配を感じたチェダは、
「何があったんだ?」
と食い付いた。
そんなチェダの反応に気を良くし嬉々として話し始めた。
「まだこっちには知られてないみたいだね。
実はプローラで大事件があったんだ。
今までに見た事がない巨大なゴーレムが街近くの森に現れて。」
「巨大なゴーレムだって?
あれは体格の良い人間より少し大きいくらいじゃなかったか?」
話の内容が疑わしくなりチェダの興味は少し薄れてきていた。
そんなチェダに構わず、
「そう。普通ならそれくらいだよ。
でも展望台から見えたゴーレムは森の木々から頭が突き出してたんだ。」
と変わらず興奮気味に言葉を継いだ。
「いやいや、そんなゴーレム居るわけないじゃないか。
ははん、判ったぞ。移動中に見た夢の話だろ。」
あまりの突拍子のなさにチェダはその話が信じられなかった。
「本当だって。
そのゴーレムがどんどん近付いて来て街は大パニックさ。
その時そのゴーレムと同じくらいの大きさの巨人が現れて。」
マンベルは勿体ぶるように言葉を区切った。
「現れてどうなったんだ?」
ほとんど興味をなくしてはいたがチェダは先を促した。
「なんとそのゴーレムを倒したんだよ。」
と大仰に手振りを加えながら盛り上げた。
が、
「いったいどんな状況だよ、それ。
やっぱり夢の話だろ。もういいよ。」
チェダは夢物語と思い完全に興味を失くしてしまった。
それでもマンベルは諦めず、
「本当なんだって。
周りの話を聞いてみろよ。
プローラから来た奴等は皆その話をしてるぜ。」
そう言われチェダは周りの会話に耳を傾けると、マンベルのように興奮気味な話し声がそこかしこから聞こえてきた。
ようやく少し信じる気になったチェダは、
「わかったわかった、信じるよ。
その話もっと詳しく聞こうじゃないか。」
と促した。
そんなチェダの反応に、
「それがさぁ。。」
マンベルが嬉々として話始め、2人は大いに盛り上がりながら駅を後にした。
そんな巨人の話がストファム中に拡散するのに大した時間は掛からなかった。
(5)
「それまで!
勝者、智佳!」
審判が勝利者の名前を高らかに宣言した。
これで智佳のこの日の対戦が終わった。
対戦した10戦全てを1分以内で終わらせその強さを知らしめた。
歓声で沸く観客席に手を降りながら競技場を降りる智佳にセラミネが近付いて来て声を掛けた。
「すごいよ、智佳!
強すぎだよ!」
かなり興奮しているセラミネの耳に、
「ダメっす。全然ダメっす!」
とゆう智佳の落胆の叫びが聞こえてきた。
「え、どうしたの?
何がダメだったの?」
セラミネは目を瞬かせながら尋ねた。
「ああもう、全然物足りないっす!」
「へ?」
智佳の答えが予想外だったらしくセラミネは変な声を出してしまった。
「全然暴れ足りないっすよ。
今日の対戦ってこれで終わりっすよね?」
「そうね。続きは明日だよ。」
智佳の質問にセラミネが答えた。
「でも智佳のおかげでいっぱい儲かっちゃった。
はい、これは智佳の分。」
そう言いながらセラミネはかなり多目のお金を差し出した。
どうやらこういった大会には賭けが付き物のようでセラミネは無名の智佳に賭けて大儲けしていた。
「うお、そんなにっすか!?」
驚きの表情で答えたもののお金を押し返すと、
「そのお金はセラミネが持っててくれればいいっす。
必要な時に出してくれればいいっすから。」
と伝えた。
セラミネはちょっと悩んでから、
「わかった。
じゃ大会が終わるまで預かっておくね。」
と答えるてお金を仕舞った。
「それじゃ私が泊まってるホテルで休も。
2人部屋しか空いてなくてもて余してたんだ。
智佳が一緒だと安心だし。」
「寝るとことか全然考えてなかったっす。
ほんと助かるっすよ。」
そんな事を話していると、
ぐぅぅぅぅぅっ。。
と智佳のお腹がなった。
「動いたんでお腹すいたっす。
先に食事しないっすか?」
「そうね。
じゃあホテルのレストランに行こうか。」
「いいっすねぇ。早くいくっすよ。」
嬉々として歩き出した智佳を追い掛け並んで歩き出すセラミネ。
そんな2人の耳に周りの話が聞こえてきた。
「聞いたか?プローラの巨人の話。」
「聞いた聞いた。
巨大なゴーレムと巨人が戦ったってやつだろ。」
「そうそう、それそれ。
プローラから来た奴等は皆その話してるらしいぜ。」
「それ本当だと思うか?
巨大ゴーレムとか巨人とか。」
「どうだろ?何か現実感ないよな。」
その話に智佳が食い付いた。
「巨人?何すかそれ?
セラミネは知ってるっすか?」
尋ねられたセラミネは頭を振り、
「私も初耳だよ。
ゴーレムって大柄な男性より少し大きいくらいだよね。
巨大ってどれくらい大きいんだろ?」
セラミネも不思議そうに疑問を口にした。
もっと興味を引かれるかと思った智佳は、
ぐぐぅぅっ!
空腹には耐えられず、
「気になるけど後にするっすよ。
まずは食事っす。」
と言いながらセラミネを促しホテルの方へと消えていった。
(6)
うわぁ!
上がった悲鳴は覆い被さって来た影に掻き消された。
その影は装備品や骨を排出し人の形に姿を変えると、
「たっぷり吸収してやったぜ。
ほんと人間の絶望と燻った悪意は最高だな。」
満足気に独りごちた。
人間に姿を変えた影は不定形生命体のメタルスライム。
このスライムは人を捕食、吸収した事で知能レベルが上がっていた。
そして良質のエネルギーである悪意を求めて武闘大会の会場となっているストファムに入り込んでいたのだ。
「かなり漲ってきたな。
そろそろ本番と行くか。」
そう言いながらニヤリと微笑んだ。
そして夜の闇に溶け込んでいった。
今回の部分で智佳回が3人の時間と重なりました。
次回は3人が動き出し、ついに智佳の本気が炸裂します。
バトル成分多目な次回はまた1週間後くらいに公開予定です。
よろしくお願い致します。