第2話「一撃必中、燃えろ竜撃! VSキングメタルスライム」(1)
新年、大分過ぎてしまってますね。
予定より少し遅れましたが新年1回目の更新です。
第2話始まりました。
今回は由維と智佳の異世界到着時の様子です。
サブキャラも増えてきてます。
楽しんで頂けますように。
(1)
ピピピ、ピピッ、ピピピ。
チチッ、チチチ、チチッ。
鳥の囀りが聞こえてくる青々と木々が生い茂った森の中。
木々の隙間からやわらかに降り注ぐ光に顔を照らされ由維が目を覚ました。
そしてゆっくり上半身を起こすと周りを見渡した。
「ここ、どこやろ?」
見慣れない風景に戸惑いつつ現状を把握しようと思考を巡らせると、
「てゆうか、うち誰なん?」
記憶が喪失している事に気付いた。
頭の中は靄が掛かったように不鮮明で名前すらも思い出せない。
途方に暮れ掛けていた時、複数の足音が近づいてきた。
「せんせぇ、こっちこっちぃ。」
「はやく、はやくぅ。」
急かす様な女の子の声が聞こえてくる。
近付いて来たのは2人の女の子に手を引かれた1人の女性だった。
どうやら教師とその生徒とゆう関係のようだ。
女性は傍らにしゃがみ話し掛けてきた。
「大丈夫ですか?
お怪我はありませんか?」
そんな問いかけに由維は、
「初めまして、やと思うんですけど。
なんかうち記憶喪失、らしいんですよ。
まったく何も思い出せんくて。」
と苦笑を浮かべながら答えた。
「・くて?
変わった言葉遣いですね。
ここは都市全体に結界が張られていて正規の方法でないと入る事が出来ないんです。
いったいどうやって迷い込まれたのでしょう?」
そう言いながら由維がここに居る事を訝しんでいた。
どうやら転移後、ここの結界に触れ無理に通り抜けてしまった時の衝撃が影響し記憶障害を起こしたようだ。
ここに居る事が問題視されているとゆう言葉に、
「え、そうなんですか?」
と答えつつも、
「さて、どうしたもんやろ。
多分一時的なもんやろから時間が経ったら記憶も戻るやろ。
けどこのままここに、って訳にもいかんやろし。」
と状況を考察しぶつぶつ呟いてる由維に、
「ここで長話も何ですから中でゆっくり話しませんか?」
とゆう提案に、
「おおきに。助かります。
状況を把握したいので色々聞かせてもらえますか?」
「これから授業がありますのでその後で良ければ。」
答えながら立ち上がる女性に、
「もちろん、それで良いです。」
と由維が答えると、
「そういえば自己紹介がまだでしたね。
私はリカーラ。そこの学校で教師をしているの。
後ろの2人があなたを見つけたフィルナとニモーニよ。
では案内しますね。」
そう言うと先導して歩き出した。
するとリカーラの後ろから様子を窺っていた二人が由維の両側から手を取り並んで歩きだした。
「おねえちゃん、おなまえわからないの?」
「おうちもわからないの?」
と言葉を掛けてくる子供達に、
「そうなんよ。
ほんま困りもんやわ。」
などと答えながら学校へと連れられて行った。
(2)
都市「ストファム」。
街の中心地に大きな闘技場を有する武闘家達の聖地になっている中型都市である。
ここでは年4回大規模な武闘大会が催されている。
そのひとつが開催中の街は大いに賑わっていた。
そんな街の喧騒が届く街道沿いの川縁で少女が大の字になって眠っていた。
「はら、あそこ。
ちょっと前に見かけた時からずっと寝てんだよ。」
そう言いながら男が仲間2人を少女の側に連れて来た。
3人の男達は少女を囲むように周りに立ち品定めでもするように見下ろした。
「おお、結構可愛いな。」
「何でこんな所でひとりで寝てんだろ。」
「しばらく見てたけど誰も来なかったんよ。
どうよ。遊んじゃう?」
その言葉で3人に卑しい表情が表れた。
うっすらと黒い影も見えている。
どうやら”悪意の種”に侵され内にあった悪意が増幅されているようだ。
その様子を遠巻きに見ている少女が居た。
少女は3人に囲まれ危険な状況になっている少女を助けなければと思うものの、非力な自分ではどうする事もできずただおろおろするだけだった。
その時、頭の所に立っていた男が少女の肩を掴んだ。
瞬間。
少女がその腕を両手でしっかりと掴んだ。
そして腕に絡み付くように体を丸めるとそのまま男の腕毎横に転がった。
その勢いに巻き込まれた男は横に立っていた男を巻き込んで派手に吹っ飛ばされた。
智佳は立ち上がると戦闘態勢で身構えた。
ところでようやく目を覚ました。
どうやら防衛本能が働いての攻撃だったようだ。
智佳が辺りを見回すと男が1人呆然とした表情で立っており、2人の男が絡み合って倒れていた。
「これは、何すか?」
状況が飲み込めずにいると気を取り直した男が、
「ガキがいい気になってんじゃねぇぞ!」
と怒気を含んだ声で叫びながら襲い掛かってきた。
その言葉と行動で状況をなんとなく理解した智佳は男をあっさりと倒れている2人の上に投げ落とした。
パンパン!
と手のホコリを落とすように打ち合わせ、
「はぁぁぁぁぁっ。」
と盛大に長いため息を漏らした。
「あかん。ぜんぜん足らんっす。
おっさんら雑魚過ぎっすよ。」
あからさまに苦言を吐いていると、
パチパチパチパチ。
と拍手の音が聞こえた。
新手か、と音の方に攻撃しようと動いた時、
「きゃっ。」
と小さな悲鳴が聞こえ、振り上げていた拳を止めた。
そこには智佳と同年代の少女が顔を強張らせて立ち尽くしていた。
「うわぁあ、ごめんっす。
大丈夫っすか?」
大慌てで謝罪する智佳。
その姿に安堵したように少女も、
「こちらこそごめんなさい。
あまりにも格好良くてつい拍手しちゃって。」
と真っ赤になりながらわたわたと謝罪した。
そして、
「男の人に襲われかけてて何とかしないと、って思ったんだけど怖くて何も出来なくて。
そしたらあっとゆう間にやつけちゃって。
すごく格好良かったです。」
と満面の笑みで言葉を継いだ。
「この程度、全然大した事ないっすよ。」
答えながら改めて少女を見た。
左右にお下げ髪を垂らした少女は可愛らしい顔立ちで智佳より少し背が低かった。
そして目がキラキラ輝いているように見えた。
そんな尊敬の眼差しに少し気圧されつつ、
「ボクは智佳。
武闘家っす。
そっちは?」
と名乗り、尋ねた。
「ああ、すいません。
私、セラミネです。
よろしくお願いします。智佳さん。」
「さんはいらないっすよ。」
そんなやり取りをしていると街の方から、
ウォォォォォォォォォ!!!
とゆう雄叫びが聞こえてきた。
その声に何かを感じた智佳が、
「今のって何の声っすか?」
と尋ねた。
「ああ、あれはあそこに見えるストファムで開催されている武闘大会の観客の声ですね。」
そう答えた後、何か考えを巡らせたのか一瞬の間の後、
「やっぱり、興味とかあったりします?」
と尋ね返した。
「そりゃあるっすよ。めっちゃ参加したいっす。
けど、もう予選始まってるんっすよね?
参加が無理やったら見るだけどでもいいんやけど。」
そう言いながら街をじっと見ている。
「まだ参加出来ますよ。
たしか参加申し込みの期限が今日の夕方までのはずなので。」
「まじっすか。」
セラミネの話に智佳の目が輝いた。
「うおぉ、めっちゃ楽しみっす。
って参加資格とかあるっすか?」
とふと気になった事を尋ねた。
「そうゆうのはないですね。
たしか参加費もなかったはずです。
この予選は本予選に出る為の試合なので誰でも参加出来るんです。
たしか千人くらい参加者がいて本予選に出れるのは五十人くらい、だったかな。」
とゆうセラミネの説明に、
「いいっすねぇ。是非とも参加したいっす。
セラミネ、付き合ってもらえないっすか?」
智佳は嬉々として決意表明し同伴を願い出た。
「いいですよ。智佳がどれくらい強いのか見てみたいです。」
セラミネは柔らかな笑顔で快諾した。
「それじゃ、行くっすよ。」
と言うと街に向かって歩き出した。
セラミネは後に続きながら、
「智佳なら私の願いを・・・。」
と呟いた。
それは智佳の耳には届いていなかった。
そして智佳は気付いていなかった。
目覚めてから闘う事に気がいっていてここが異世界だとゆう事、梨深達がいない事を。
ほんと困った闘い好きである。
(3)
「あんのクソガキが。」
「今度会ったらただじゃおかねえぞ。」
「なんか街の方に行ったみたいだしアニキに頼まないか?」
「バカヤロー!
ガキにやられたなんて恥ずかしくて言えるかよ。」
「そうだな。じゃあ、あの手でいくか。」
「おお、いいねぇ。」
等と悪態をつきながら街へ向かう3人は背後から静かに近付いてくる気配に気付いていなかった。
3人のすぐ後ろに迫った影は一気に男達に覆い被さった。
そして衣類や装備品、骨を排出した。
うにょうにょと動き出した影はやがて人へと姿を変えると、
「ふう、やっと擬態出来たぜ。
これで街に入れる。
溢れてる悪意、存分に喰らってやるぜ。
フハハハハ!」
と高笑いしながら街へ向かっていった。
由維と智佳、少し掘り下げられました。
それぞれ出会いから、智佳編に入ります。
不穏な空気が流れ出して智佳とセラミネはどうなるのか?
次回は1週間後くらいに公開予定です。
読んで頂きありがとうございました。
続きも楽しみにしていただけたら嬉しいです。