第3話「天空(そら)に響く歌声 VS狼人間(ワーウルフ)」(2)
第3話の2を公開しました。
今回はだいぶ巻き上げられました。
都市バアルスでの出来事の続き、やっと巨人と絡んできました。
そして今後に関連する情報や新キャラが。
一気に8人出したら名付けが大変でした。
ちょっと重要めな今話。
楽しんで頂けると嬉しいです。
よろしくお願い致します。
(4)
都市”バアルス”は2つの区域に分かれている。
約1/3がディブラ学長が統べる学区。
残り約2/3がグレイア区長が統べる住居や店舗等が占める居住区。
そして中央にジリンダ市長が都市全体の管理を担っている管理棟がある。
ただし市長が全権を掌握しているのではなく、市長・区長・学長の3人が三柱として都市の統括を行っており、現在はティーカ三姉妹が務めている。
その三柱が管理棟の最上階にある市長室に集まっていた。
「経緯は先に送った通り、界渡りが迷い込んだようなの。」
ディブラが切り出した。
「界渡り。前に現れたのは10年程前だったかしら?」
ジリンダが記憶を探りながら呟いた。
「正確には12年前よ。
その時は魔動力を使った技術に多大な影響が出たわね。」
グレイアが補足するように言葉を継いだ。
その言葉に納得したように頷いたジリンダは、
「ディブラ、その少女が界渡りだとゆう確証はあるの?」
と尋ねた。
「私は会ってはいないのだけれど、保護したリカーラがそう判断したのよ。
それに学区の森に突然現れた、とゆう事からして間違いないと思うわ。」
ディブラの返答に、
「界渡りの血筋のリカーラがそう判断したのなら何か感じるものがあったのでしょう。
ではその少女が界渡りだと判断して今後の方針を考える、と言うことで話を進めましょうか。」
そうジリンダが告げた時、
コンコンコン!
扉をノックする音が聞こえた。
(5)
監視室の扉が開きリカーラが、
「何があったのですか。」
と言いながら入ってきた。
室内には監視を担当している3人のオペレータと既に参集していた4人の魔法教師、ロネッテ、レフェア、ラヴュナ、ルゥパニが居た。
リカーラの到着を待っていたように、
「これで全員ですね。まずはこれを見てください。」
主任オペーレータが机の上の複数枚の写真を指差した。
そこには見慣れない服装の人?とゴーレムが白黒で写っていた。
「これは少し前に”プローラ”を通過した時に写したものです。」
その中の1枚を取り上げじっくり観察したリカーラは、
「この写真から察するに、かなりの大きさのようね。」
他の写真を見ていた4人も、
「(ロネッテ)そんな感じだな。周りの木々より大きいのか。」
「(レフェア)こんな大きさのゴーレムなんて初めてですわ。」
「(ラヴュナ)私はこの人間?みたいなのが気になりますね。」
「(ルゥパニ)そもそもぉ、人間なのぉ?」
口々に意見を述べた。
「それでこの巨人とゴーレムはどうなったの?」
リカーラの問いに、
「消失しました。」
主任オペーレータが答えた。
「(リカーラ)消えた?」
「(ロネッテ)どうゆう事だ?」
「(レフェア)両方、ですの?」
「(ラヴュナ)ありえないですね。」
「(ルゥパニ)ちゃんとぉ確認したのぉ。」
そんな5人の反応に、
「正確にはゴーレムが巨人にコアを破壊され土塊に戻りました。
その後、巨人が文字通り消えてしまったんです。
3人で注視していたので間違いないです。」
主任オペレータが力説した。
その言葉にリカーラが、
「これは界渡りと関係があると考えるべきね。」
意見を述べた。
「(レフェア)界渡り、だって。」
「(ロネッテ)どうゆう事ですの?」
「(ラヴュナ)そんな話聞いていないですが。」
「(ルゥパニ)リカーラぁ、どうゆう事なのぉ?」
4人がリカーラの言葉に反応し、問い掛けた。
「その件で招集を掛けようと思っていたの。
学長には報告済みで既に三柱が動いてるわ。
今、界渡りと思しき少女を保護しています。
その巨人が界渡りとどう関係しているかは判らないけど”大事になる”と覚悟しておいて。」
リカーラの説明に4人の表情が険しくなった。
界渡りが現れると”何か”が起きる。
前回は技術革新であったが今回は既に不穏さが感じられていた。
だが魔法教師達はここ”バアルス”で学園を揺るがす大事件が起こる事に気付く由もなかった。
「次のポイントは”ストファム”の近くね。
下に降りるので準備しておいて。
私は学長に報告して降りる許可を取ってきます。
あなた達は子供達への説明をお願いするわ。」
リカーラの指示に4人は頷くと監視室を出て行った。
必要な資料を纏めると、
「主任、監視を強化しておいて。必要なら増員を。
しばらく気を抜けないと思うから、気を引き締めて対処するように。」
リカーラはオペレータ達に指示を出した。
「はい!」
オペレータ達の力強い返事を受け頷くと三柱が会議をしている市長室へと出向いていった。
(6)
由維がお茶を飲みながらぼんやり窓の外を眺めていると子供達が森に入っていくのが見えた。
食事を終えた子供達は食後のレクリエーションで外で遊ぶのが日課になっていた。
※気象操作されているのでこの時間に雨が降る事はない。
そんな子供達を見ていると由維に気付いて手を振る子供が見えた。
森で見つけてくれたフィルナとニモーニだった。
小さく手を振り返すと満面の笑顔でぶんぶんと手を振り返し、傍に居たもう1人の女の子と3人で連れ立って森の方に走って行った。
「子供は可愛いなぁ。」
呟きお茶を啜る。
はぁっ。
自然とため息が漏れた。
「このままのんびりここで過ごさせて貰うんもええかも、なんて思ってまうわ。」
そんな言葉がこぼれる程この長閑さが心地好かった。
その時、右手の指輪が陽の光でキラっと光った。
指輪が気になっていた事を思い出し、右手を顔の前に上げて左手でそっと触れてみた。
外してよく見ようと思ったが指輪は外れなかった。
なので左手で指輪の宝石の部分を触ってみた。
その時、周りが闇に閉ざされた。
そしてたくさんの記憶の断片が現れては消え、を繰り返していた。
圧倒的な情報量に脳が悲鳴を上げ掛けた時、目の前にひと際大きな断片が現れた。
マイクを握りアイドルように躍りながら歌っている由維が。。
そして意識を失った。
(7)
「あまり遠くに行かない事。
怪我したら直ぐに言いに来る事。
高い所まで登らない事。」
監視の教員がいつもの注意事項を述べている間、集まった年少組20人の子供達は早く遊びたくてうずうずしていた。
「それじゃ、行ってこ~い!」
教員の許しが出るや、一斉に森に向かって動き出した。
走り出す子、のんびり歩きながらの子。
そして、
「じゃ、いこっか。」
フィルナが声を掛けて仲良しのニモーニとセシリネと手を繋ごうとした時、食堂の窓からこちらを見ている由維に気付いた。
「ねぇねぇ、あれってさっきのおねえちゃんじゃない?」
フィルナがニモーニに声を掛けた。
「ほんとだ。おねえちゃんこっちみてるね。」
「て、ふってみようよ。」
「うん。おねえちゃんきがつくかなぁ?」
そう言いながら2人は大きめに手を振った。
すると由維が小さく手を振っているのが見えて嬉しくなり、さらに大きくぶんぶん振った。
ちょっと疲れた。。
「おねえちゃんもふってくれたね。」
「やったね。」
喜び合っているフィルナとニモーニに蚊帳の外になっていたセシリネが、
「はやくいこうよ、きゅうけいおわっちゃうよ。」
と声を掛けると、
「そだった。」
「いこいこ。」
2人は答え、3人手を繋いで仲良く森の中に駆けていった。
しばらくはしゃいで遊んでいたがセシリネが何かに気付いた。
「ねぇ、あそこ。なにかひかってない?」
セシリネが指差した先が確かにキラっと光っていた。
「(ニモーニ)なんだろね?」
「(セシリネ)そだね。」
「(フィルナ)みにいく?」
フィルナの提案に2人が、
「「うん。」」
と頷いたので恐る恐る近付いて行った。
近付いて行くと草の陰で陽の光を反射させてキラっと光る”棒”のような物を見つけた。
それは子供の拳3つ分くらいの長さの銀色の棒だった。
これまで見た事のない不思議な棒に興味を引かれニモーニが取り上げた。
持ってみると意外に軽く、片側の先端だけ小さな穴が複数開いている黒いカバーに覆われていた。
「これなんだろ?」
「みたことないね。」
ニモーニとセシリネが話していると、
「ねぇねぇニモーニ、ここっておねえちゃんがいたとこのちかくじゃない?」
フィルナがニモーニに問い掛けた。
周りを見回したニモーニが、
「そうだよ。おねえちゃんがいたのあっちのきのとこじゃなかった?」
と答えて指差した。
「だよね。じゃあこれおねえちゃんのかも。」
そんなフィルナの考えに、
「きっとそうだよ。」
ニモーニが同意した。
「あとでおねえちゃんのとこもっていこ。」
「さんせー!」
楽しそうな2人を少し不機嫌気味に見ていたセシリネの胸の奥の方がモヤっとした。
けれど本人は自覚していなかった。
そして、
「あそぼ~よ~。」
不満げな声を上げるセシリネに、
「「ごめんね。。」」
2人は素直に謝ると、
「じゃ、あっちのひろばにいこ。」
フィルナが提案した。
「うん。」
「いこいこ。」
2人も同意し、ニモーニは慌てて棒を背負っていたリュックに突っ込むと3人仲良く広場に駆けていった。
次回、舞台はストファムへ。
いよいよ他のメンバーが絡んできます。
色々調整中なのでまた更新少し遅れるかも、です。
なんとか火曜には更新出来ればと思ってます。
次回もよろしくお願い致します。




