第3話「天空(そら)に響く歌声 VS狼人間(ワーウルフ)」(1)
第3話開始です。また公開少し遅れてしまった。
この3話までで序章となる感じなので、いろいろ整理してたら時間が掛かってしまいました。
(1)はまた日が戻り由維サイドの進行です。
今回は溜め部分なのでちょっと情報は盛り込まれてるけどあまり進んでない感じ。
ですが楽しんで頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
(1)
「入って。」
リカーラは扉を開けて由維だけを部屋の中に入らせて、
「ここは職員が休憩や雑務で使用する部屋なの。
授業が終わるまでここで休んでいて。
終わったらお昼の休憩になるから食事しながら話しましょう。」
と声を掛けた。
「おおきに。ほんま助かります。」
そんな由維の返答に、
「そんなに気にしないで。大変なのはあなたなのだから。」
リカーラは優しく微笑みながら返し、
「そうそう、お手洗いは右の奥にあるわ。
扉はこのパネルに触れると開閉するから。
それじゃ後で。」
説明しながら指差しで方向を示し、扉の(取っ手がある位置に付いている)パネルを指し示した。
そして外側のパネルに触れ扉を閉めた。
スーーーッ。
静かに閉じゆく扉の向こうを少し慌ただしく足音が遠ざかって行った。
そして扉が閉じると室内は静寂に包まれれた。
室内を見渡すと左側に窓が設えられており、その下に机と椅子が。
反対側の壁際にはベッドが置かれているだけだった。
とりあえず疲れた体を癒そうと思い、綺麗に整えられたベッドに寝転がった。
相変わらず頭の中は白い靄に覆われている。
「うちは何者なんやろ。
何か凄く大変な目にあってた気がするんやけど。。」
小さく呟くも疲れから直ぐに眠ってしまった。
そして夢を見た。
何かを見て叫んでいる?
それは2つの黒い影のようになっていて何かは判らなかった。
けれどそれが重要な出来事であろう事がなんとなく理解出来た。
その時、すべてが闇に覆い尽くされ、、、
はっ!
として目が覚めた。
少し呼吸が荒くなり、額にびっしり汗をかいていた。
ゆっくり上半身を起こすとポケットからハンカチを取り出し額の汗を拭った。
「はぁ。。」
小さく溜め息が漏れた。
今、何かとても重要な事を夢で見ていた気がするが内容を思い出す事が出来なかった。
何かが記憶を戻さないようにしているのでは?
そんな気がした。
気持ちを切り替えようとベッドを抜け出し窓に近付いた。
両開きになる窓を押し開くと木々の匂いが穏やかな風に運ばれて来て鼻孔をくすぐった。
見上げた空はちらほらと雲があるものの晴れ渡り、日差しが初春のような緩やかな暖かさを感じさせた。
下に目を向けると森が、その向こうに街が見えた。
「あぁ、なんか長閑かで良い感じの所やなぁ。」
そんな長閑かさに少し気持ちが和らいだのか、
フンフン、フフフ、フフフン♪
鼻歌を歌っていた。
歌を歌っていると少し楽しい気分になっていた。
その時、机に付いて支えていた右手の指輪が陽光に反射して、光った。
その光に気付き右手を上げると指輪を見つめた。
「こんな指輪してたやろか?」
指輪が何故か妙に気になった。
じっくり観察しようと左手で指輪に触れようとした時、
コンコンコン!
扉をノックする音が聞こえた。
(2)
リカーラは休憩室を出た後、教室ではなく学長室に赴いていた。
コンコン!
重厚な作りの扉をノックすると、
「お入りなさい。」
入手を促す声が聞こえた。
パネルに触れて扉を開くと、
「失礼します。」
と言いながら会釈し、部屋に入った。
部屋の奥の豪奢な作りの執務机の椅子に上品な服装の女性が座っていた。
その女性はこの学園の学長のディブラ。
この都市「バアルス」を統べる三柱の1人でもある。
リカーラは執務机に近づくともう一度会釈してから話し掛けた。
「お待たせして申し訳ありません。
あの少女の事、ですね。」
少女を保護した事は学長にも伝わるようにしていたので呼び出しの理由は察しがついていた。
「その子は記憶喪失と聞いているけど間違いはないの?」
ディブラは突然現れた少女の事を訝しんでいた。
この都市は厳重な結界に守られていて正式な手段以外で入る事は不可能。
そんな不可侵領域たるこの都市に侵入した不審な少女。
もし結界に干渉し侵入して来たのであれば由々しき問題になると考えていた。
「言動からは判断しかねます。
ただ、服装や言葉遣いから界渡りではないかと。」
リカーラの返答にディブラの表情が険しくなった。
「界渡り、ですか。
その判断が正しいのなら何が起こるか判らないわね。
私は市長にこの事を伝え、対策を検討してくるわ。
あなたは少女の監視と、可能ならば情報を引き出しておいて。」
「承知しました。」
ディブラの指示を了承したリカーラは会釈し部屋を辞した。
リカーラの退室を見届けたディブラは引き出しから紙を取り出すと経緯を記した。
同じ物を2枚用意すると4つ折りにして机に付けられている2つの挿入口それぞれに1枚づつ挿入した。
挿入口から入れられた紙は中に描かれた転送陣により三柱の市長と区長に転送された。
事を終えたディブラは椅子から立ち上がり出掛ける準備を整えると、扉の外枠の施錠用パネルに触れた。
扉が施錠されたのを確認すると再び椅子に座り、右の肘当ての先端の蓋になっている部分を開いた。
その中にあるパネルに触れると床が開き、椅子が地下まで下がっていった。
地下には学長専用の駅があり、そこには1両編成の魔動列車が停留していた。
運転席に座ったディブラが市長室行きのパネルに触れると列車は静かに発車し、市長室ルートに進んで行った。
(3)
学長室を後にしたリカーラは教室に行くと、授業を行った。
そして昼休み。
コンコンコン!
休憩室の扉をノックした。
程無く、
「どうぞ。」
とゆう声が聞こえたのでパネルに触れ扉を開いた。
由維は窓の側に立っていた。
窓が開いているのに気付き、
「外の景色はどうだった?」
と尋ねた。
「長閑でええ感じですね。
木々の匂いに癒されました。」
そんな由維の返答に、
「気に入って貰えて良かったわ。」
優しく微笑みながら返すと、
「それじゃ食堂に行きましょうか。」
と促した。
「はいっ。」
返事をし部屋を出て来た由維と連れ立ってリカーラは食堂へ向かった。
「どう?何か思い出せた。」
食堂へ向かう道すがらリカーラが切り出した。
「さっぱりです。頭ん中もやっとしたまんまで。」
落胆した声で答える由維に、
「焦らなくていいわよ。こうゆうのは時間が掛かると思うの。
ここなら生活するのに不自由はないと思うから、気楽にしてて。」
リカーラが優しく声を掛けた。
「いろいろお世話になってしもて申し訳ないです。
ほんま助かります。」
そんな話をしている内に食堂に到着した。
入り口を抜けて中に入るとかなりの広さの空間になっていた。
奥の方では子供達が楽しそうに食事をしているのが見えた。
「あそこで食事してんはるんがここの生徒さんですか?」
との由維の問い掛けに、
「そうよ。今は全部で50人居るわ。
ここはちょっと専門的な事を教えてて、才能を認められた子供しか在籍出来ないの。
だからいつもこれくらいの人数なのよ。」
リカーラは丁寧に答えると、
「それじゃ、あそこの窓際の席に座ってて。
食べられない物、とかは判らないわよね。
飲み物は熱いのと冷たいのどっちらがいい?」
と尋ねてきた。
「冷たいのをお願いします。
食べられない物、は判らないみたいです。」
由維の苦笑混じりの申し訳なさげな返答に、
「いいのよ。
それじゃ取りに行ってくるから待ってて。」
そう言うとリカーラは受け取りカウンターに食事を取りに行った。
由維は指示された窓際の席に座り外の景色を眺めた。
森の木々が風で小さく揺らいでいるのが見えた。
「ほんま長閑やわぁ。」
ゆったりした気分で眺めていると、
「お待たせ。」
リカーラが昼食を持ってきた。
テーブルにトレイを置くと由維の対面の席に座った。
トレイにはパンのような物で具材を挟んだサンドイッチのような物、果物のような物、飲み物が載っていた。
「おおきに。」
由維の謝辞に微笑みで返したリカーラは、
「食べましょう。」
そう言って食事を始めた。
しばらく食べ物の感想等を挟みつつ食事を楽しみ、飲み物のお代わりを取りに行っていたリカーラが戻った所で、
「それじゃ少しここの事を話しましょうか。」
話を切り出した。
「ここは”バアルス”と言う名の空に浮かんでいる都市です。」
「空に、浮いてるんですか?」
衝撃的な内容に由維が驚きの表情で聞き返した。
「ええ。この都市はちょっと特殊な役割があって地上の都市よりも魔法の技術が発達しているの。
その技術が使われて空に浮かび移動している。
そして魔法の才能に長けた子供達の才能を伸ばす為の教育を施しているの。」
「それじゃあの子供達はみんな魔法が使えるんですか?」
「そうね。みんな熱心に勉強してくれるから教え甲斐があるわ。」
「それじゃリカーラさんも魔法が使えるんですか?」
「ええ、魔法教師とゆう肩書きになっているわ。」
そんな話をしていた時、緊急放送が流れた。
「魔法教師各位、至急制御室に参集願います。」
この放送を聞いたリカーラは立ち上がると、
「ごめんなさい。呼ばれているので行きますね。
あなたはゆっくりしてて。
休憩時間が終わるまでに戻らなかったらさっきの部屋に戻ってて。」
慌て気味にそう告げるとリカーラは2人分の食器を片付け、食堂を出て行った。
天空都市バアルスが今回の舞台になります。
今話も5分割になるかと思います。
次回は火曜には公開したいな、と思ってます。
よろしくお願い致します。




